労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神奈川県労委令和5年(不)第6号
柴橋商会不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和7年3月7日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、人材派遣などの事業を行う申立外C会社に雇用され、会社の工場に派遣されていた組合員A1、A2及びA3(以下「A1ら」)の労働問題等を交渉事項とする団体交渉に応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 神奈川県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合が令和5年3月22日付け及び同月29日付け団体交渉申入書において交渉事項として要求した「A1らの雇用終了問題」〔注1〕及び「DによるA1らに対する金銭要求問題」〔注2〕との関係において、会社は労働組合法上の「使用者」に当たるか否か(争点1)

〔注1〕A1が令和5年3月31日付け、A2が令和4年12月31日付け、A3が同年11月30日付けで、それぞれ会社から解雇されたこと。
〔注2〕申立外C会社に雇用され、会社に派遣されていたDが、A1らを含む外国人派遣労働者らに対し、通訳や手続き代行という名目で、1時間あたり100円の金銭支払いを要求していたこと。

(1)A1らはC会社に雇用され、同社から派遣されて会社のS工場で勤務しており、会社はA1らの労働契約上の雇用主には当たらない。
 しかし、労働組合法第7条の趣旨からすると、団体交渉の当事者である労働組合法第7条の「使用者」には、労働契約上の雇用主のみならず、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある者も含むと解すべきである。
 以下、団体交渉事項ごとに検討する。

(2)A1らの雇用終了問題

 組合は、①A1らが会社から作業指示を受けていたこと、②会社がC会社に対し、会社のS工場における派遣労働者の減員を要請したこと及び③C会社の主任EがA1らに対して「(会社の代表取締役)Bが要らないと言っている」、「外国人技能実習生が工場に新しく入る」、「皆さん解雇になる」と説明したことから、会社の都合によりA1らがC会社から解雇されていることを理由として、会社が労働組合法第7条の「使用者」に当たると主張する。
 そこで検討するに、C会社の派遣社員就業規則によれば、登録者からの採用、雇用期間の設定、更新あるいは期間満了による労働契約の終了はC会社の判断もしくはC会社の派遣社員就業規則の基準に基づいて行われ、そこに派遣先が関与する仕組みは認められない。
 本件においても、A1らは、有期雇用スタッフとして会社のS工場に派遣されていたところ、C会社が各組合員との間で締結していた労働契約を更新しなかったことから、それぞれ雇用期間の満了を迎え、C会社との労働契約が終了したものであり、会社がA1らの雇用終了について直接関与していたとは認められない。また、会社のS工場における作業内容は、特に専門知識や技術を要するものではない定型的なものである。そして、A1らのC会社による雇用及び会社のS工場への派遣に関し、会社が人選についてC会社と相談したという事実や、会社が、C会社からA1らの雇用終了に係る連絡を受けていたという事実は認められない。
 以上からすれば、会社はA1らの雇用終了について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとはいえず、A1らの雇用終了問題との関係で、会社は労働組合法第7条の「使用者」には当たらない。

(3)DによるA1らに対する金銭要求問題

 組合は、「会社が、A1らを含む派遣労働者との間でDが金銭要求問題を起こしたことを認識した上で、Dを会社のS工場に派遣するようC会社に指示するなど、S工場におけるDの就労継続を決定することができる地位にある」ことを理由として、会社が労働組合法第7条の「使用者」に当たると主張する。
 しかし、会社がS工場におけるDの就労継続を決定することができる地位にあったことを示す証拠は提出されておらず、これを事実であると認めることはできない。
 また、C会社の従業員であるE主任は、金銭要求問題について、あたかも会社の工場長も関与しているかのような発言をしているが、E主任の発言のみをもって、工場長が金銭要求問題に関与していた事実までは認められない。
 以上からすれば、会社のS工場におけるDの就労継続及び金銭要求問題について、会社は雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとはいえず、DによるA1らに対する金銭要求問題との関係で、会社は労働組合法第7条の「使用者」には当たらない。

2 会社が、A1らとの関係において、労働組合法上の使用者に当たる場合、組合の令和5年3月29日付け団体交渉申入れに対して、会社が団体交渉を欠席したことは、労働組合法第7条第2号に該当する正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か(争点2)

 会社は、A1らの雇用終了問題及びDによるA1らに対する金銭要求問題との関係において、労働組合法上の「使用者」には当たらない。
 したがって、会社が労働組合法上の「使用者」であることを前提とした争点2については、これを判断するまでもなく組合の主張は認められない。

3 以上のとおり、組合の主張はいずれも認められないから、本件申立ては理由のないものとして、棄却を免れない。 

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