概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和6年(不)第35号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y法人(法人) |
命令年月日 |
令和7年3月14日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、法人が、組合からの団体交渉申入書にある組合員に対する暴行事件は虚偽であるとし、団体交渉申入れに応じないことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、法人に対し、(ⅰ)団体交渉応諾、(ⅱ)文書の手交及び掲示を命じた。 |
命令主文 |
1 法人は、組合からの令和6年2月26日付け及び同年3月11日付けの団体交渉申入れに応じなければならない。
2 法人は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートル×横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、法人の正面玄関付近の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
記 年 月 日
X組合
執行委員長A 様
Y法人
理事長B
当法人が、貴組合からの令和6年2月26日付け及び同年3月11日付けの団体交渉申入れに応じなかったことは、大阪府労働委員会において労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 |
判断の要旨 |
○法人が、組合からの団体交渉申入れに対し、本部長Cの組合員Dに対する暴行事件は虚偽であるとして応じないことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか(争点)
1 まず、組合の法人に対する、令和6年2月26日付け申入書(以下「2.26申入書」)、3月11日付け申入書(以下「3.11申入書」)、3月13日付け申入書その1、3月13日付け申入書その2、3月15日付け申入書、3月27日付け文書、4月3日付け文書及び4月12日付け申入書による団体交渉申入れ(以下、併せて「本件団体交渉申入れ」)の要求事項が義務的団体交渉事項に当たるか、についてみる。
組合は、2.26申入書により、令和6年2月22日の業務に関連したやり取りにおいて、本部長Cから組合員Dが左手の甲を殴られるという暴行行為(以下「本件暴行行為」)が起こったとして、このことに関して団体交渉を申し入れ、3.11申入書により、本件暴行行為を虚偽であるとする法人に対し抗議するとともに、団体交渉において、法人が行ったとする本件暴行行為に関する調査の詳細についての説明を求めているところ、本件暴行行為に係る問題は、労働環境に関連するものとしてD組合員の労働条件その他の待遇に関するものに当たるというべきである。
また、2.26申入書には要求事項として組合員Dの配置転換理由についても記載されており、このことも組合員Dの労働条件その他の待遇に関するものに当たるというべきである。
なお、令和6年3月13日以降の計6回の申入れについては、既に行った団体交渉申入れに応じるよう重ねて申し入れたものといえる。
以上のとおり、本件団体交渉申入れの要求事項は、組合員Dの労働条件その他の待遇に関するものに当たり、義務的団体交渉事項に該当する。
2 そうすると、法人が本件団体交渉申入れに応じないことについて正当な理由がなければ、法人の対応は団体交渉拒否として労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当すると判断されるのであるから、法人が本件団体交渉申入れに応じない正当な理由の有無について検討する。
この点、法人は、本件暴行行為は虚偽であるとし、ありもしない暴行事件をでっちあげ、団体交渉申入れをし、交渉を有利に進めようとする方法自体が、団体交渉権の濫用に当たり、濫用ではない具体的な根拠が示されない限り、団体交渉を拒否する正当な理由が存在する旨主張する。
しかし、仮に、本件暴行行為について法人が自ら調査を行っていたとしても、法人が本件暴行行為は虚偽であると結論付けたことが団体交渉に応じない正当な理由に当たるとはいえず、かかる法人の主張は採用できない。法人には、団体交渉において、組合からの要求事項について、自らの見解を具体的に説明し協議に応じる義務があることは明らかである。
3 以上のとおりであるから、法人は、本件団体交渉申入れに正当な理由なく応じなかったと判断され、かかる行為は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 |