概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京都労委令和2年(不)第111号
クリエイトエス・ディー不当労働行為審査事件 |
申立人 |
個人X |
被申立人 |
Y1会社・Y2労働組合(Y2組合)・個人Y3 |
命令年月日 |
令和6年12月17日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、①Y2組合とY1会社が、先行事件(Y1会社が組合員Xらに対し不当利得返還請求訴訟を提起したことが不当労働行為に当たる、としてY2組合が救済申立てを行った事案)について、Y1会社からY2組合への解決金の支払などを内容とする和解協定書を締結したこと、②Y1会社が、Xの所属する店舗を除いて賞罰の告示を再開したことが不当労働行為に当たる(それぞれ労働組合法第7条第3号、同条第3号・第4号に該当)、として、当該協定書の締結後にY2組合を脱退した個人Xから、Y1会社、Y2組合及び同組合の執行委員長である個人Y3を被申立人とする救済申立てがなされた事案である。
東京都労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 Y2組合及びY3は、Xとの関係で、労働組合法上の使用者に当たるか(争点1)
XのY2組合在籍期間中において、XとY2組合又はY3との間で労働契約が締結された事実がなく、Y2組合又はY3がXの雇用主に当たらないことについては、当事者間において争いがない。その他、Y2組合又はY3とXとの間で、労働条件の維持改善を目的とする労働組合又はその執行委員長と組合員との関係を超える関係を認めることはできず、Y2組合又はY3が、Xとの関係でXの基本的労働条件について支配決定できるような使用者としての地位にあるとまでは認めることができない。
2 Y2組合とY1会社とが、令和元年12月24日付けで和解協定書(以下「本件和解協定書」)を締結したことは、Y2組合の組織運営に対する支配介入に当たるか(争点2)
(1)Xは、「Y2組合と会社とが本件和解協定書を締結したことは、Xの労働者としての権利を侵害する行為であり、Y2組合の組織運営に対する支配介入に当たる」旨を主張する。
確かに、本件和解協定書には「Y2組合は、平成29年12月7日付け以降の会社に対する要求を全て取り下げる」旨の条項が含まれているところ、Y2組合のY1会社に対する要求事項には、Y1会社が、①Xに対する社宅費用相当額の請求を放棄することや、②Xの未払賃金の支払などが含まれていたことが認められる。
しかし、Y2組合のY1会社に対する上記①及び②の要求事項は、(Y1会社がX及び身元保証人を被告として提起した)不当利得返還請求訴訟及び(XがY1会社を被告として提起した)未払賃金等請求事件における平成30年12月20日の裁判上の和解によりXとY1会社との間で解決が図られたものと推認できることに加え、a前件申立ては労働組合法第7条第2号及び第3号該当性が争点となっていたものであるところ、本件和解協定書はY2組合及びY1会社の互譲に基づく内容となっていると評価できること、b本件和解協定書の締結に至る経緯においてY2組合の運営の自主性に疑義を生じさせるような不自然な点は認められないこと、cXは本件和解協定書の締結当事者となっておらず、当該協定書の法的効力がXには直接的に及ばないことなどの事情を併せて考慮すれば、Y2組合とY1会社とが本件和解協定書を締結したことは、Xの労働者又は組合員固有の権利を侵害するものとはいえず、このほか、Y2組合とY1会社とが本件和解協定書を締結したことがY2組合の組織運営に対する支配介入に当たると認めるに足りる事情は特にうかがわれない。
(2)Xは、「会社が、本件和解協定書に基づき解決金を支払ったことはY2組合に対する経費援助であり、Y2組合の組織運営に対する支配介入に当たる」旨主張する。
しかし、労働組合法第7条第3号は使用者が「労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること」を経済的な支配介入として禁止しているところ、a本件和解協定書はY2組合及びY1会社の互譲に基づく内容となっていると評価できること、bY1会社がY2組合に対し、本件和解協定書に基づく解決金以外に何らかの経済的出捐を行ったとは認められないことなどの事情を併せて考慮すると、本件和解協定書に基づき解決金を支払うことが、経済的な支配介入に当たると認めることはできない。
3 Y1会社が、元年12月24日以降、Xが所属する店舗を除いて賞罰の告示を再開した事実が認められるか、認められる場合、それが支配介入及び不当労働行為救済申立てを理由とする不利益取扱いに当たるか(争点3)
Y1会社が元年12月24日以降、Xが所属する店舗を除いて賞罰の告示を再開したと認めるに足りる証拠はなく、Xの申立事実が支配介入又は不当労働行為救済申立てを理由とする不利益取扱いに当たると認めることはできない。 |