概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和5年(不)第39号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y会社(会社) |
命令年月日 |
令和7年4月21日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、①別組合を脱退して申立人組合に加入した組合員Dに対し、申立人組合の組合員に適用してきた労働条件を適用しなかったこと、②この点に関する団体交渉において不誠実な交渉態度を取ったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。
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命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件の争点は次の2点である。
① 会社の令和3年11月以降の組合員Dの賃金、勤務手当、退職金、有給休暇の年間日数についての取扱いは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。(争点1)
② 令和4年7月26日及び同年9月20日の団体交渉における会社の対応は、不誠実団交に当たるか。(争点2)
2 争点1について
⑴ 組合は、会社が、別組合らについては、それぞれとの間で定めた賃金テーブルまたは実質的な賃金テーブルを適用している一方で、組合に加入したD組合員に対し、適用されるべき19.4.25確認書、19.4.25覚書、20.5確認書、組合退職金規定及び31.4.23協定書の適用を拒んでいることが不利益取扱いに該当する旨、また、このような会社の対応は、組合活動の努力・結果を無視又は軽視するものであって、ひいては組合の団結力や活動意欲を損なわせ組合を弱体化させる効果を持つ行為であって支配介入に該当する旨主張する。
確かに、D組合員が組合に加入したにもかかわらず、19.4.25確認書、19.4.25覚書、20.5確認書、組合退職金規定及び31.4.23協定書が適用されていない事実に争いはなく、これらがD組合員に当然に適用されるべきものであれば、本来適用される労働条件が適用されないという点においてD組合員に不利益があるといえ、また、会社が労働協約に定められた事項を遵守せず、そのことが、組合の団結権やその存在自体を軽視するものであって、組合を弱体化すると認められる場合には、支配介入に当たるといえるのであるから、当該会社の対応については、不利益取扱い及び支配介入に当たる可能性があるといえる。
⑵ しかしながら、これらは、現場作業印であるE組合員らのみの賃金是正を定めたものであり、組合と会社が、将来組合に所属することとなった現場作業員の賃金等についてまで定めたものであるとはいえず、D組合員にも当然に適用されるべきものであったとみることはできない。
そうすると、D組合員に当然に適用されるべきものであるとはいえないのであるから、D組合員が特段の不利益を受けたとみることはできない。また、会社の対応が組合の団結権やその存在自体を軽視し、組合を弱体化するような対応であるとみることはできず、支配介入に当たるともいえないから、これらの点に係る組合の主張は採用できない。
3 争点2について
⑴ 賃金是正に関する会社の対応についてみる。
会社は、D組合員の賃金是正に関して、会社の立場や認識についての説明やD組合員の待遇改善についての会社提案等を行っているといえ、19.4.25確認書及び19.4.25覚書は、新たに組合に加入する現場作業員に当然に適用されるとはいえないことを併せ考えると、会社は、一定の根拠をもって実質的な協議に応じているといえる。
組合は、会社がD組合員の賃金是正を拒絶したことが不誠実団交に当たる旨主張するが、使用者には団交において組合の要求を受け入れたり、それに対し譲歩をしたりするまでの義務はなく、組合の要求に応じないことのみをもって誠実交渉義務に反するとはいえず、会社は実質的な協議に応じているといえるのであるから、組合の要求を受け入れなかったことをもって、誠実交渉義務に反するとはいえない。
⑵ 次に、組合退職金規定及び31.4.23協定書のD組合員への適用に係る会社の対応についてみる。
組合は、有給休暇も含め、あらゆる条件を組合の条件にするよう求める旨述べたのに対し、会社は、「会社としては、それは適用できません」と述べており、組合退職金規定及び31.4.23協定書についてD組合員への適用に応じていないといえる。
しかし、使用者には団交において組合の要求を受け入れたり、それに対し譲歩をしたりするまでの義務はないのであるから、そのことをもって、誠実交渉義務に反するとはいえない。また、退職金及び有給休暇の取扱いについては、4.7.26団交及び4.9.20団交においては、未だ交渉途中であったといえ、その後、約10回、当該事項に関して組合と会社の間で事務折衝が行われていることからしても、交渉途中の拒否回答をもって、不誠実団交に当たるということはできない。
⑶ 以上のとおりであるから、4.7.26団交及び4.9.20団交における会社の対応は、不誠実団交に当たるとはいえず、この点に係る組合の申立ては棄却する。
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