労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和5年(不)第40号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和7年3月31日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①組合と協議せずに、定年後の再雇用期間が満了した社員を更に再雇用する制度(以下「グランドシニア社員制度」)を創設したこと、②グランドシニア制度の創設について、組合から指摘されるまで組合に通知しなかったこと、③組合の執行委員長D(以下「D委員長」)にグランドシニア社員として雇用しなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申し立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。
 
命令主文  本件申立てをいずれも棄却する。
 
判断の要旨  1 本件の争点は次の3点である。
 ① 会社が、具体的な内容を組合と協議せずに、グランドシニア社員制度を創設したことは、D委員長が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。(争点1)
 ② 会社が、組合に対し、グランドシニア社員制度の創設について、令和5年3月15日に組合から指摘されるまで通知しなかったことは、D委員長が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。(争点2)
 ③ 会社が、D委員長について、グランドシニア社員として雇用しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。(争点3)
2 争点1について
(1)組合員であるが故の不利益取扱いに当たるかについて
 会社は、グランドシニア社員制度の創設に当たって、申立人組合であるか否かを問わず、同制度について協議しないとの対応を取っていたのであるから、D委員長が組合員であるが故になされたものとみることはできない。
 したがって、その余の点を判断するまでもなく、会社が、具体的な内容を組合と協議せずにグランドシニア社員制度を創設したことは、D委員長が組合員であるが故の不利益扱いには当たらない。
(2)組合に対する支配介入に当たるかについて
 グランドシニア社員制度創設にあたって、会社が組合に対し、その内容について説明する義務があったとまではいえず、また、会社において何らかの制度創設の方針を決定した時点で組合と会社は協議を行うとの労使慣行があったとの事情も認められない。さらに、組合と会社内の他の労働組合との間で、差別的な取扱いがあったとの事情も認められない。
 以上のことからすると、会社が、具体的な内容を組合と協議せずに、グランドシニア社員制度を創設したことは、組合に対する支配介入に当たらない。
3 争点2について
(1)組合員であるが故の不利益取扱いに当たるかについて
 春闘ストライキの関係で連絡を取り合っていた時期に、グランドシニア社員制度の創設について通知しなかった会社の対応は問題であったものの、このことをもって、会社が、意図的にグランドシニア社員制度創設を通知しなかったとまでみることはできない。その他、会社が意図的に組合に通知しなかったと認めるに足る事実の疎明はない。
 また、会社担当者は、組合書記長から連絡を受けた後、同日、直ちにグランドシニア社員制度の資料をファクシミリで組合に送信している。
 以上のことからすると、会社が、意図的に、グランドシニア社員制度の創設を組合に通知しなかったとまではいえない。
(2)組合に対する支配介入に当たるかについて
 会社は、ほぼ同時期に並行して、組合を含む社内の労働組合と団交又は文書回答を行うとの対応を取ったといえる。
 また、前記(1)判断のとおり、会社が、グランドシニア社員制度の創設を組合に通知しなかったのは、意図的なものではなかったことが認められる。
 以上のことからすると、会社が、グランドシニア社員制度の創設について、他の社内の労働組合とは差別的に取り扱おうとしたという意図は認められない。したがって、会社が、令和5年3月15日まで、組合にだけ通知しなかったことは、労働組合法第7条第3号の支配介入に該当するとまで認めることはできない。
4 争点3について
(1)組合員であるが故の不利益取扱いに当たるかについて
 会社が、D委員長がグランドシニア社員の採用基準に該当しないと判断したことには、合理的な理由があり、また、組合の組合員以外にも、グランドシニア社員として雇用されなかった社員が一定割合いたことからすると、会社が、D委員長をグランドシニア社員として雇用しなかったのは、同人が組合員であるが故になされたものであるとはいえない。
 したがって、その余の点を判断するまでもなく、会社が、D委員長について、グランドシニア社員として雇用しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たらない。
(2)組合に対する支配介入に当たるかについて
 前記(1)判断のとおり、会社が、D委員長が採用基準に該当しなかったと判断したことは合理的であったといえ、会社が組合を嫌悪し、又はその活動に支障を与えるためにD委員長をグランドシニア社員として雇用しなかったとは認められない。
 したがって、会社が、D委員長について、グランドシニア社員として雇用しなかったことは、組合に対する支配介入に当たらない。
5 以上のとおりであるから、本件は、D委員長が組合員であるが故の不利益取扱いに当たらず、組合に対する支配介入にも当たらず、不当労働行為には該当しない。
 

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