労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和6年(不)第7号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y1会社・Y2一般社団法人・Y3特定非営利活動法人 
命令年月日  令和7年1月10日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合が、先行事件に係る大阪府労働委員会での和解を受けて団体交渉を申し入れたのに対し、訪問看護・訪問介護等の在宅ケアサービス等を行うY1会社、障がい者就労支援事業等を行うY2一般社団法人及び高齢者への訪問介護事業等を行うY3特定非営利活動法人(以下併せて「被申立人ら」)が応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、被申立人らに対し、(ⅰ)団体交渉応諾、(ⅱ)文書の手交及び掲示を命じた。 
命令主文  1 Y1会社、Y2一般社団法人及びY3特定非営利活動法人は、組合が令和5年11月28日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。

2 Y1会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートル×横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、Y1会社の正面玄関付近の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
 年 月 日
X1組合
 執行委員長 A様
Y1会社      
代表取締役 B
 当社が、貴組合から令和5年11月28日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

3 Y2一般社団法人は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートル×横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、Y2一般社団法人の正面玄関付近の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
 年 月 日
X1組合
 執行委員長 A様
Y2一般社団法人 
代表理事 B 
 当法人が、貴組合から令和5年11月28日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

4 Y3特定非営利活動法人は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートル×横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、Y3特定非営利活動法人の正面玄関付近の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
 年 月 日
X1組合
 執行委員長 A様
Y3特定非営利活動法人 
代表理事 B 
 当法人が、貴組合から令和5年11月28日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨  ○令和5年11月28日付け団体交渉申入れ(以下「5.11.28団体交渉申入れ」)に対する被申立人らの対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか(争点)

1 令和5年11月28日付け団体交渉申入書の要求事項は、①分会員2名の過去の給与と約束されていた額との差額の支払、②分会長への介護ヘルパー業務に関わる手当の支払など組合員の労働条件に関する事項を含んでおり、これらの要求事項が義務的団体交渉事項に当たることは明らかである。
 また、5.11.28団体交渉申入れ以降、令和6年2月13日の本件申立てまでの間、団体交渉が開催されず、組合が被申立人ら代理人弁護士に複数回督促をしたにもかかわらず、開催する旨の回答も一切なかった。
 そうすると、5.11.28団体交渉申入れに被申立人らが応じなかったことに、正当な理由がなければ、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当することとなるので、この点について、以下検討する。

2 被申立人らは、団体交渉に応じる意向はあるが、①分会長が業務中に他のスタッフや利用者に対し、粗暴な言動を行い、代表Bに対しても暴力をふるおうとするなど、このような者が分会長を務める労働組合と適切な団体交渉が行いうるか、疑問が生じていた旨、②申入書記載の内容と分会員2名が代表Bに対して直接話している内容に相違があり、組合と組合員らとの間で適切なコミュニケーションが取れているのか、不明であった旨、③団体交渉を拒絶する意向はなく、①②の問題点が払拭されるのであれば、いつでも団体交渉に応じる意向であり、団体交渉を拒否していない旨主張する。
 しかし、被申立人らが、上記①②を問題点と認識しているのであれば、その旨を組合に回答するなり、団体交渉の場で主張するなりすれば足りるところ、被申立人らは、5.11.28団体交渉申入れ後、本件申立てまで、そのような意思表示を何ら行なわなかったのであり、そのような内心の「意向」があったことを根拠として、団体交渉を拒否していないとする被申立人らの主張は到底採用できない。
 また、①②のような疑問を被申立人らが抱いていたからといって、それが団体交渉を拒否する正当な理由とは認められないことはいうまでもない。

3 なお、被申立人らは、本件申立て後(の令和6年4月18日、同年9月12日、同年10月22日)に団体交渉を行っており、救済すべき不当労働行為の状態は存在しなくなったために救済命令を発する必要性はない旨を主張する。
 しかし、当該主張は、最終陳述における新たな主張である上、組合は、開催された当該団体交渉が不誠実なものであった旨主張しており、当事者間で正常な団体交渉が開催される状態となり、団体交渉応諾命令を発する必要がなくなったとまでは認められないため、被申立人らの主張は採用できない。

4 以上のとおり、5.11.28団体交渉申入れに対する被申立人らの対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 

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