概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和5年(不)第68号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y会社(会社) |
命令年月日 |
令和7年3月7日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、組合がC組合員に対する解雇予告通知の撤回等を求めて団体交渉を申し入れたところ、会社が、第1回団体交渉開催後に、組合が継続で申し入れた団体交渉を拒否したことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、団体交渉応諾及び文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 会社は、組合が令和5年9月8日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。
2 会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X組合
執行委員長 A 様
Y会社
代表取締役 B
当社が、貴組合から令和5年9月8日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 |
判断の要旨 |
○ 本件継続団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるかについて、以下判断する。
(1) 組合が、令和5年9月8日付けで、会社に対し、本件継続団交申入れをしたことが認められる。そして、会社が、本件継続団交申入れに係る団交に応じていないことについて、当事者間に争いはない。
これについて、組合は,会社の対応が正当な理由のない団交拒否に当たる旨主張し、会社は、誠実交渉義務に反するものではなく、団交に応じないことに正当な理由がある旨主張するので、以下検討する。
(2) まず、本件継続団交申入れの要求事項が義務的団交事項に当たるかについてみる。
本件継続団交申入れの要求事項は、C組合員の引き下げられた賃金の回復、解雇予告通知の撤回、組合加入や組合活動を理由とした不利益取扱いを行わないこと、合意内容の協定書化及びこれらの関連事項であったことが認められる。
そうすると、これらはいずれも組合員の労働条件その他の待遇や団体的労使関係の運営に関する事項であり、義務的団交事項に当たる。
(3) 次に、会社は、団交に応じない正当な理由として、①令和5年7月14日に行われた団交(「7.14団交」)で会社が具体的な説明を行ったこと、②組合の要求内容が不明瞭であり、会社が団交に必要な資料や主張を準備することが不可能であったこと、を挙げるので、この点についてみる。
ア 前記①の理由についてみる。
(ア)会社は、本件継続団交申入書の要求事項について、7.14団交で具体的かつ詳細に回答している旨主張する。
(イ)確かに、会社は、7.14団交において、中心的な議題とみられるC組合員の引き下げられた賃金の回復及び解雇予告通知の撤回について、賃金減額に関しては降格に伴うものであることを回答するとともに降格の理由を具体的に説明し、解雇予告通知に関しても解雇理由証明書を組合に提示して、解雇理由を具体的に説明したことが認められる。
しかし、一方で、7.14団交において組合が会社の主張に対する反論をしなかったことについては当事者間に争いはなく、また、7.14団交の終了前に、組合が、今日聞いた会社の主張を検討し、組合側の主張をまとめる旨述べて団交が終了したこと、会社の作成した議事録にも、組合が次回までに反論を考えることとなった旨が記載されていることが認められる。
そうすると、7.14団交の中心的な議題であるC組合員の引き下げられた賃金の回復及び解雇予告通知の撤回については、組合が次回の団交において主張反論をすることが予定されていたことは組合と会社の了解事項であったとみるべきであるから、7.14団交で具体的な説明がなされているからといって当該議題についての交渉が完了していないことは明らかであり、同じ議題について組合がした本件継続団交申入れに応じないことに正当な理由があるとはいえない。
(ウ)したがって、前記①の理由は、団交に応じない正当な理由とはいえない。
イ 前記②の理由についてみる。
(ア)会社は、団交の諾否を判断するために、要求及び議題について具体的に何を交渉するのかを示すよう組合に要求したが、組合から回答がなされず、このような不明瞭な内容の要求については団交応諾の判断すら不可能であった旨主張する。
(イ)確かに、会社が、組合の本件継続団交申入書及び令和5年9月15日付けで組合が会社に対し送付した書面に対し、同日付けで会社が組合に対し回答書面1及び回答書面2を送付し、団交の諾否を判断するため、要求及び議題について何を交渉するのかを示して申入れをされたい旨回答したことが認められる。
しかしながら、7.14団交において、次回団交に先立って、組合が反論又は議題内容を7.14団交における要求以上に詳しく説明することに双方が合意した事実は認められないし、組合がそれをしなければ団交が開催できない事情があったと認めるに足る事実の疎明もない。
また、本件継続団交申入れは、7.14団交の継続交渉として同じ議題について団交を申し入れているのであるから、次回団交が、C組合員の引き下げられた賃金の回復及び解雇予告通知の撤回(本件継続団交申入れの時点では「解雇の撤回」)を中心的議題とし、7.14団交における会社の主張を前提に行われることは明らかであり、交渉議題が不明瞭であったとはいえない。
仮に、組合の要求事項に不明な点があるとしても、会社は、団交の場で組合に質問することもできるのであって、団交に先立って組合が説明しなければ、団交が行えないというものではない。
以上のことからすると、本件継続団交申入れの要求内容が、会社が団交の準備をすることができないほど不明瞭であったとはいえない。
(ウ)したがって、前記②の理由は、団交に応じない正当な理由とはいえない。
(4) 以上のとおりであるから、本件継続団交申入書に対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 |