労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和6年(不)第1号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y1会社、Y2会社(会社ら) 
命令年月日  令和7年3月7日 
命令区分  却下、棄却 
重要度   
事件概要   本件は、①Y2会社及びその代表者が組合の抗議宣伝活動について組合員を告訴したこと、②会社らの関係者が組合の集会を撮影するなどしたこと、③団体交渉申入れに対する会社らの対応がそれぞれ不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、①に係る申立てについて法定申立期間経過後の申立てであるとして却下し、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 令和3年6月2日にY2会社及びBが組合の抗議宣伝活動について刑事告訴を行ったことに係る申立てを却下する。

2 その他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(令和3年6月2日にY2会社及びその代表者が組合の抗議宣伝活動について刑事告訴を行ったことに係る申立ては、労働組合法第27条第2項に規定する「行為の日(継続する行為にあつてはその終了した日)から1年を経過した事件に係るもの」に当たるか。当たらない場合は、上記の刑事告訴は、会社らによる、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。)について
ア 労働組合法第27条第2項は、不当労働行為救済申立てが、行為の日(継続する行為にあつてはその終了した日)から1年を経過した事件に係るものであるときは、労働委員会はこれを受けることができない旨規定している。
イ 本件申立日は令和6年1月9日であるところ、本件告訴は令和3年6月2日に行われ、同年12月24日に不起訴処分となった後、不服申立てを経て、令和4年7月14日、大阪第四検察審査会が不起訴不当の議決をしたことが認められる。
 したがって、本件申立ては、本件告訴から1年を経過してなされており、仮に、不起訴処分に対する不服申立てを行った日からみたとしても、1年を経過していることは明らかである。
ウ 組合は、令和4年12月13日に本件被疑事件が再度、不起訴処分となり、これに係る不起訴処分告知書の被告訴人の受領日を挙げて、本件申立てが本件告訴の終了日から1年を経過せず行われている旨主張する。しかし、労働組合法第27条第2項の「行為の日」とは使用者が何らかの行為を行った日であるので、本件告訴の結果を被告訴人が知った日がこれに当たるとはいえない。
エ 以上のとおり、令和3年6月2日にY2会社及びその代表者が組合の抗議宣伝活動について刑事告訴を行ったことに係る申立ては、法定申立期間経過後の申立てであるので、労働組合法第27条第2項及び労働委員会規則第33条第1項第3号の規定により、その余を判断するまでもなく、却下する。

2 争点2(令和5年12月2日に組合が開催した集会(本件集会)に対し、F氏が行った行為は、会社らによる組合に対する支配介入に当たるか。)について
ア 組合は、F氏が本件集会をビデオカメラで撮影し、本件集会を混乱させ、進行を妨害した旨主張する。一方、会社らは、F氏による撮影について、組合の行為等に関し証拠保全をする必要があった旨主張するところ、組合の街頭宣伝活動に関する会社らとB社長による仮処分命令申立事件について申立てが認容されており、本件集会はY1会社に近接する本件公園において、労働組合の旗や幟を立てて、マイクを用いて行われたことが認められるのだから、この主張は首肯できる。
 そうすると、F氏が証拠保全として必要な域を超えて、本件集会の進行を殊更妨害し、組合活動を弱体化させるような行為を行えば、組合の運営に介入したとして支配介入に該当するというべきであるから、以下、F氏がそのような行為を行ったといえるかについて、検討する。
イ F氏は、本件公園の入口付近まで近寄って、ビデオカメラを集会方向に向けて撮影したことが認められる。
ウ これに対し、①本件集会のあいさつをしていたD組合員は、本件公園の入口付近で撮影していたF氏にマイクを持ったまま近づいていったこと、②D組合員はF氏に呼びかけ、「労働組合に対する人権侵害をどう思いますか。」、「挑発行為はやめましょうね。」等と発言したこと、③その間も、F氏は無言であったこと、が認められる。
 また、①D組合員がF氏の傍らから立ち去った後、F氏はビデオカメラを下に向けて、本件公園から立ち去ったこと、②D組合員が話し始めてから、F氏がカメラを下に向けて、本件公園から立ち去るまでは3分程度であったこと、③D組合員は、その後もあいさつを続け、あいさつの時間は合計10分弱であったこと、がそれぞれ認められる。
 そうすると、F氏は本件集会を本件公園の入口付近から短時間撮影したにとどまり、この撮影により、D組合員のあいさつが妨害され、本件集会の進行に支障を来したとみることはできない。
 さらに、D組合員のあいさつの後、組合の支援団体の関係者数名が、それぞれ数分程度話をするなどし、本件公園での集会は40分程度で終了したこと、が認められ、F氏の撮影が、本件集会のその後の進行に影響を及ぼしたとみることもできない。
エ 以上のとおりであるから、F氏が証拠保全として必要な域を超えて、本件集会の進行を妨害し、組合活動を弱体化させるような行為を行ったということはできない。したがって、F氏の行為は組合に対する支配介入に当たるとはいえず、この点に係る申立てを棄却する。

3 争点3(令和5年12月8日付け抗議書による団交申入れに対する会社らの対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか。)について
ア 会社らは、5. 12. 8組合抗議書による本件団交申入れに応じていないことが認められる。
イ このことが労働組合法第7条第2号の団交拒否に該当すると判断されるには、本件団交申入れの議題が義務的団交事項であること、すなわち、(i)組合員の労働条件その他の待遇、(ii)団交や争議行為のルール、便宜供与に係る問題等の当該団体的労使関係の運営に関する事項のいずれかであることを要する。
ウ そこで、5. 12. 8組合抗議書の内容をみると、F氏が本件集会に対する妨害行為を行ったとし、会社らがこれに関与しているとした上で、抗議し、説明や謝罪を求めるものというのが相当である。
エ したがって、本件団交申入れの議題が、(i)組合員の労働条件その他の待遇に当たらないことは明らかである。
オ また、本件集会においては、会社らとの紛争の他に別会社との紛争等も取り上げられており、様々な使用者との紛争についての組合の姿勢を示すものというべきであって、組合自身も、労働争議勝利に向けての決意を示し、当該組合員や支援者のそれぞれが思いを発信していく場であって、会社らに対して抗議宣伝活動を行っているものではないとしているところである。そうすると、本件集会を組合と会社らの間の争議行為に類するものとみることはできず、本件集会に関連する問題を会社らと組合との間における団体的労使関係の運営に関するものということもできない。
 したがって、本件団交申入れの議題が、(ii)団交や争議行為のルール、便宜供与に係る問題等の当該団体的労使関係の運営に関する事項に当たるということはできない。
カ 以上のとおり、本件団交申入れの議題は義務的団交事項に当たらないのであるから、これに応じない会社らの対応を正当な理由のない団交拒否に該当するということはできない。したがって、この点に係る申立てを棄却する。 

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