労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和5年(不)第60号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和6年12月13日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①組合員A2を解雇したこと、②A2及び組合員A3に対して、組合を誹謗中傷するメッセージ等を繰り返し送信し、組合から脱退するよう働きかけたことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、②について労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、文書の速やかな交付を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
 年 月 日
X労働組合
 執行委員長 A1様
Y会社        
代表清算人 B1
 当社が、令和5年10月11日から同月13日頃にかけて、貴組合員A2氏及び同A3氏に対してメッセージ等を送信したことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

2 組合のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社が、令和5年10月10日付けで、組合員A2を解雇したこと(以下「本件解雇」)は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか。(争点1)

(1)①令和5年10月11日、会社はA2に対し解雇通知書を手渡し、本件解雇を行い、②その後、組合執行委員長A1は、会社を訪問し、代表取締役B2に対し、A2及び組合員A3〔注 A2とA3は親子〕は組合員である旨述べるとともに、本件解雇を撤回するよう求めている。
 これらから、本件解雇は、(令和5年10月12日に)組合が会社に対してA2が組合員であることを通知する前に行われたのであるから、組合員であることを理由としたものでないことは明らかである。
 したがって、その余を判断するまでもなく、本件解雇は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たらない。

(2)なお、組合は、組合が代表取締役B2に対し、本件解雇を撤回するよう申し入れた後のB2の対応により、A2は適応障害になったとし、この点は組合員であるが故の不利益である旨主張する。これは、最終陳述において初めて主張されたもので、時機に遅れた主張である上、争点1に関する主張とは認められない。

(3)以上から、この点の組合の申立ては棄却する。

2 令和5年10月11日から13日頃にかけて、代表取締役B2がA2に対して送信したメッセージ(以下「本件メッセージ」)は、組合に対する支配介入に当たるか。(争点2-1)

(1)労働組合法第7条第3号により、労働組合に対する使用者の言論が組合員に対し威嚇的効果を与え、労働組合の組識、運営に影響を及ぼすような場合は支配介入となる。
 この点につき、会社は、「本件メッセージは代表取締役B2が組合についての自己の評価、意見を伝えたものであり、組合に対する違法な支配介入行為ではない」旨、「本件メッセージには、組合を脱退するよう唆す表現は存在せず、会社はA2に組合を脱退させるような働きかけをしていない」旨主張するので、以下検討する。

(2)確かに、本件メッセージには、組合からの脱退を促す直接的な表現は見当たらない。
 しかし、本件メッセージには、「デイサービスのスタッフもA2さんが依頼した先の事見てますよ。皆んなびっくりしてますよ。いいんですか?今まで自分が一生懸命してきた信用とか全部無くなりますよ。皆んな怖いと思ってますよ。」、「デイサービスには絶対来ないで下さい。よくあんな人物介入させてそんな事言えるのがわかりません。皆んな動揺してます」、「A2さん 犯罪歴 反社会的勢力の関係者と疑われる方を介入させた意味が全くわからないみたいですね。私にこんな風に言われたとかのレベルではないんですよ。恐喝ですよ。」との記載があることが認められる。
 ①かかる記載は、A2が組合に加入したことに対する非難や、組合に対する極めて否定的な評価を前提として本件解雇に組合が関与することを非難するものであり、このことに、②本件メッセージが送信されたのが、組合執行委員長A1が代表取締役B2にA2が組合員であることを伝えた直後であること、③B2は会社の代表者という立場にあることも併せ考えると、本件メッセージがA2に与える影響は大きく、A2が組合に所属し続けることについて心理的な圧力を受けることは容易に推認できるから、本件メッセージは、A2に対して威嚇的効果を与え、組合の組織、運営に影響を及ぼすものとみるのが相当である。

(3)これらから、本件メッセージの送信は、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

3 令和5年10月12日から同月13日にかけて、代表取締役B2がA3に対して送信したメール(以下「本件メール」)は、組合に対する支配介入に当たるか。(争点2-2)

 本件メールには、「こういう団体、犯罪歴のある方、反社会の関係者を使って会社に対して要求することはいかがですか 常識的に考えて下さい。A3さんもある程度の企業にお勤めだったと思います。」、「お勤め先の会社の人事部はどう思います。正気ではないです。」、「本当にそんな労働組合に所属していいんですか 名簿出回りますよ。」、「お母さんにも言いましたが、こちらの弁護士に自分が言いたい事、例えば対価でも結構です。こうして欲しいとか伝えて話を聞いて頂いたらどうですか それかA3さんと自分が対面して話し合いをするのも結構です。お母さんからも希望を聞いて摺合せする事もいいです。」、「お母さんは自分がしている事、対応方法をもっと考える必要があります。この問題が終わり冷静に考えれるようになった時自分がとんでもない事をしたとわかると思います。」、「ああいう方たちと関係を持つのはよくないと思います。」、「A3さんしかお母さんに説得できる人は居ません。」、「今ならお互い穏便に対応出来ます。」との記載があることが認められる。
 かかる記載は、A3が組合に加入したことを非難し、組合に所属し続けることについて心理的な圧力を与えた上で、A3に対して、組合を通さず、直接会社と交渉するよう働きかけたものであるから、組合とA2及びA3との間の分断を図るものである。以上から、本件メールは、A3に威嚇的効果を与え、組合の組織、運営に影響を及ぼすものとみるのが相当である。
 したがって、本件メールの送信は、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。 

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