概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和5年(不)第66号
大阪府不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
大阪府(府) |
命令年月日 |
令和6年10月18日 |
命令区分 |
却下 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、常勤講師及び非常勤講師等である組合員らの雇止めの撤回及び雇用継続等を要求事項とする団体交渉を組合が申し入れたところ、府が、条例において交渉が禁じられている管理運営事項に該当するとして、一切の回答を拒否したことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、申立ては、労働組合法が適用される者の問題に関するものとはいえず、組合の申立人適格を認めることはできないとして、申立てを却下した。 |
命令主文 |
本件申立てを却下する。 |
判断の要旨 |
(争点)
1 本件において、申立人は申立人適格を有するか。
2 府が、令和5年2月13日付け団体交渉申入書の講師組合員に対して雇止めの撤回・雇用の継続を行うこととの要求事項に対して、管理運営事項に該当し回答できないとしたことは、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為に当たるか。
(判断)
1 本件において、申立人は申立人適格を有するか(争点1)
令和5年2月13日、組合は府に対し、同日付けの「団体交渉申入書」(以下「本件団体交渉申入書」)を提出し、団体交渉を申し入れた(以下「本件団体交渉申入れ」)。
本件団体交渉申入書には、組合員16名の氏名、現任校、次年度の希望校等を記載した対象組合員一覧表があり、そこに記載された組合員は、(i)常勤講師等の臨時的任用職員、(ⅱ)非常勤講師ら、(ⅲ)本件看護師組合員〔注〕であったことが認められる。そうすると、本件団体交渉申入れは、上記(i)から(ⅲ)の組合員についてのものであったと解される。
組合は、「本件団体交渉申入れ時において、上記(ⅱ)の非常勤講師らの会計年度任用職員には地方公務員法が適用されず、上記(ⅲ)の本件看護師組合員には一貫して労働組合法が適用されていたのであるから、本件団体交渉には労働組合法第7条が適用され、また、上記(i)の臨時的任用職員については、団体交渉拒否の不当労働行為には労働組合法が適用あるいは類推適用ないしは準用されると解するべきであることから、組合は本件において申立人適格を有する」旨主張するので、以下検討する。
〔注〕大阪府立支援学校にて児童生徒の医療的ケア等に従事する労働組合法適用者である特別非常勤講師(看護師)3名のこと。
2 まず、(i)常勤講師等の臨時的任用職員及び(ⅱ)非常勤講師らの会計年度任用職員についてみる。
(1)(i)常勤講師等の臨時的任用職員及び(ⅱ)非常勤講師らの会計年度任用職員については、いずれも一般職の地方公務員である。
(2)まず、不当労働行為救済制度の適用についてみる。
組合は、「地方公務員法は、不当労働行為の定義がなく、団体交渉拒否や支配介入の不当労働行為を禁止しておらず、不当労働行為救済制度を定めていないが、『地方公務員法第58条は、一般職の地方公務員が労働組合法第3条の労働者であることを前提として、その従事する職務の特殊性から、労働基本権について合理的な範囲で制限をし、他方で、それに応じた範囲内で労働基本権の保護を規定し、その限りにおける労働組合法の適用排除を規定しているにすぎない』との裁判所の判断に照らせば、一般職地方公務員への不当労働行為には労働組合法が適用あるいは類推適用ないしは準用されると解することができる」と主張する。
しかし、上記の裁判所の判断は、一般職の地方公務員への労働組合法の適用除外を否定したものではなく、地方公務員法第58条が一般職の地方公務員について労働組合法の適用除外を明確に定めている以上、かかる組合の主張は採用できない。
(3)次に、勤務時間外には地方公務員法が適用されないとする組合の主張についてみる。
ア 組合は、「(ⅱ)非常勤講師らの会計年度任用職員については、地方公務員法第38条によっていわゆる兼業が認められているので、任用期間内であっても勤務時間外には地方公務員法が適用されない」として、「勤務時間外には労働組合法が適用される」と主張する。
イ しかし、団体交渉拒否の不当労働行為救済申立て事件において、当該団体交渉の対象者に適用される法規は、団体交渉を拒否した使用者との労使関係を基礎として判断するのであって、勤務時間の内外のいずれであるのかが判断を左右するものではない。したがって、仮に、当該組合員が私学等の民間事業所で勤務している時間帯があったとしても、本件団体交渉申入れの相手方である府との労使関係においては、勤務場所や時間帯に関わりなく地方公務員法が適用されるのであり、この点に係る組合の主張は前提を欠く。
以上のとおり、この点に係る組合の主張は、採用できない。
ウ そして、(i)常勤講師等の臨時的任用職員についても、当然、府との労使関係においては全面的に地方公務員法が適用となるのであって、勤務時間の内外のいずれであるのかによって適用法規が左右されるものではない。
3 次に、(ⅲ)本件看護師組合員についてみる。
本件看護師組合員が、①特別非常勤講師として任用されていたが、平成29年4月1日以降は府に任用されていないこと、②同日以降に任用されなかったことが違法であると主張して地位確認等請求訴訟を提起するなどしていたこと、が認められる。これらのことからすると、本件看護師組合員に係る組合の要求は、本件団体交渉申入れ時において本件看護師組合員は雇用されるべき地位にあったとして雇止めの撤回・雇用の継続を要求したものとみることができる。
しかしながら、令和2年4月1日の本件地方公務員法改正後は、非常勤講師や非常勤看護師は一般職の会計年度任用職員として任用されることになっていたのであるから、「雇止めの撤回・雇用の継続」という以上、令和5年2月13日の本件団体交渉申入れの時点においては、本件看護師組合員に係る組合の要求は、地方公務員法が適用される組合員の問題についての要求とみるのが相当であり、労働組合法適用者の問題について団体交渉を申し入れたものとみることはできない。
4 以上のとおり、本件団体交渉申入書の「講師組合員に対して雇止めの撤回・雇用の継続を行うこと」との要求事項への対応に係る申立ては、労働組合法適用者の問題に関するものとはいえないから、本件において組合の申立人適格を認めることはできず、その余を判断するまでもなく、本件申立ては却下する。 |