概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和5年(不)第71号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y会社(会社) |
命令年月日 |
令和6年9月9日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社の代表取締役から指示を受けた取締役B3が、組合員2名に対して、組合からの脱退勧奨を行ったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、文書交付を命じた。 |
命令主文 |
会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
記 年 月 日
X組合
執行委員長 A1様
Y会社
代表取締役 B1
当社が、令和5年4月6日に貴組合員A2氏に対し、同月11日に同A3氏に対し、貴組合からの脱退を勧奨したことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 |
判断の要旨 |
1 会社は、令和5年4月6日及び同月11日に、組合員2名に対し、組合からの脱退を勧奨することによって、組合に対して支配介入したといえるかについて、以下判断する。
(1)取締役B3は、組合員A2ら2名に対し、それぞれ組合からの脱退を勧奨したことが認められ、本件脱退勧奨が行われたことについて、当事者間に争いはない。
(2)会社は、本件脱退勧奨は、A2ら2名を刑事事件に巻きこまれる等の危険から遠ざけるためであり、組合活動の妨害や弱体化を図ろうとする支配介入意思はない旨主張する。
しかし、使用者による組合員に対する脱退勧奨は、それ自体が組合の弱体化に繋がり、組合活動への妨害的な性質を持つ行為であるとして、支配介入に当たるとされているのであるから、会社主張は採用できない。
2 次に、会社は、〔Ⅰ〕既に謝罪していること、〔Ⅱ〕D協勧告依頼書〔注〕が既に撤回されたことをもって、再発の可能性もないことから、仮に不当労働行為に当たるとしても救済の必要性はない旨主張するが、以下のとおり、いずれもその根拠とはならず、救済の利益は失われていない。
〔注〕認定によれば、令和5年4月18日付けで、申立外C会社が加入するD事業協同組合(以下「D協」)から、C会社に対し交付された「勧告書の交付について」と題する書面で、従業員に対し、加入している組織から速やかに脱退することを勧告するよう依頼する旨等が記載されていた。
(1)会社主張〔Ⅰ〕について
①会社は、組合及びA2ら2名をあて名とした令和5年4月26日付け「撤回及び謝罪」と題する書面(以下「4.26撤回等書面」)を組合に提出し、同書面には謝罪する旨の記載があったこと、②令和5年6月15日に開催された団体交渉(以下「6.15団交」)において社長B2〔当時〕が、不適切な行為をしたことを謝罪する旨、二度と繰り返さない旨述べたことが認められる。
しかし、①4.26撤回等書面には、今後同様の行為を二度と行わない旨を誓約する文言の記載がないこと、②6.15団交において、二度と行わない旨誓約する文言を記載した書面の提出を会社は拒んでいるといえることなどからすれば、再び同様の行為が行われるかもしれないという組合の懸念は払拭できないというべきで、将来に向けて正常な労使関係を実現していくためには、4.26撤回等書面及び6.15団交における会社の謝罪では不十分といわざるを得ない。
(2)会社主張〔Ⅱ〕について
D協は、申立外C会社〔注 認定によれば、C会社が製造した生コンを会社の従業員が輸送するという関係〕に対し、令和5年4月18日に撤回書を交付し、D協勧告依頼書を撤回していることが認められる。しかしながら、救済の必要性の判断に当たっては、不当労働行為によって生じた組合会社間の労使関係上の問題点が是正又は解消されているか否かが重要であり、D協がD協勧告依頼書を撤回したという事実は、この点の判断に直接関係するものではない。
(3)なお、会社は、先行事件について、中央労働委員会で係属中であるから初審命令を履行していない旨主張するが、係属中であったとしても、初審命令の履行義務が免ぜられるといえないことはもちろん、このような状況下で行われた本件脱退勧奨について、組合が会社に対し不信感を抱き、再発の可能性を懸念することは理解できるところである。
3 以上のとおりであるから、会社が、令和5年4月6日及び同月11日に、A2ら2名に対し、組合からの脱退を勧奨したことは、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であり、かつ救済利益もあると考える。 |