概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京都労委令和2年(不)第85号
明泉学園(継続雇用拒否)不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X1組合連合・X2組合(併せて「両組合」) |
被申立人 |
Y法人(法人) |
命令年月日 |
令和6年6月18日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、法人が、①組合員A2、A3及びA4をそれぞれ継続雇用しなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
東京都労働委員会は、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると判断し、法人に対し、(ⅰ)A2を令和2年6月16日付けで、A3を同年9月23日付けで、A4を同年10月25日付けで、それぞれ継続雇用した上、それ以降毎年4月1日付けで雇用契約を更新したものとしての取扱い、職場復帰及びバックペイ、(ⅱ)文書の交付及び掲示等を命じた。 |
命令主文 |
1 法人は、X1組合連合及びX2組合の組合員A2を令和2年6月16日付けで、同A3を同年9月23日付けで、同A4を同年10月25日付けで、それぞれ継続雇用した上、それ以降毎年4月1日付けで雇用契約を更新したものとして取り扱い、上記3名を職場復帰させるとともに、継続雇用の日から職場復帰するまでの間の賃金相当額として、それぞれ月額17万円以上の額を支払わなければならない。
2 法人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合らに交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、C高等学校にある全ての職員室(ホームルーム指導教員室を含む。)内の教職員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
年 月 日
X1組合連合
中央執行委員長 A1殿
X2組合
執行委員長 A3殿
Y法人
理事長 B
当法人が、貴組合らの組合員A2氏、A3氏及びA4氏を定年退職後に継続雇用しなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
3 法人は、前各項を履行したときは、当委員会に速やかに文書で報告しなければならない。 |
判断の要旨 |
1 法人が、組合員A2を令和2年6月16日以降継続雇用しなかったことは、組合員であることを理由とする不利益取扱い及び両組合の運営に対する支配介入に当たるか(争点1)
(1)各懲戒処分等の継続雇用拒否の理由としての相当性
法人がA2に対する継続雇用拒否の理由として挙げているのは19件の事由についてなされた合計222件の懲戒処分等であるところ〔注〕、いずれも継続雇用の申出を拒否する理由として相当性を欠くものであるとみざるを得ない。
〔注〕いずれも、学校内及び校門付近における校長など法人関係者や生徒に対するA2の言動等に係るもの
(2)不当労働行為該当性
①平成18年4月以降令和4年9月までの間、C高校において定年退職し継続雇用の申出を行った教員のうち、継続雇用が認められなかったのは組合員のみである。
②法人において継続雇用が認められた教員はいずれも定年退職時に役職に就いており、この点においていずれも定年退職時に役職に就いていなかったA2、A3及びA4ら組合員との間に明確な差異が認められるものの、(法人の平成31年度就業規則には、継続雇用を希望する職員については、法人の定める基準に該当しない限り満65歳の誕生日まで継続雇用となる旨定められているところ)法人において定年退職時に何らかの役職に就いていないことが継続雇用されない条件となっていたとは認められない。
以上に加え、③法人のA2に対する各懲戒処分等は、おおむね同人の組合活動に対するもので、いずれも継続雇用の申出を拒否する理由として相当性を欠くことや、④C高校の生徒数が減少傾向にあるものの、A2が継続雇用となった場合の雇用形態である常勤講師について、2年度に7名が退職し、3年度に9名が採用されているという2年度及び3年度の教員の退職及び採用状況に照らし、A2の継続雇用が可能な状況であったにもかかわらず、法人が、組合活動に対する上記各懲戒処分等を理由に同人の継続雇用の申出を拒否したこと、⑤法人が、就業規則において組合員による組合活動に対する嫌悪感を容易に想起させる禁止事項を追加していること等の事情を併せて考慮すると、法人が、A1を令和2年6月16日以降継続雇用しなかったことは、同人が両組合の組合員であることを理由として行われた不利益取扱いであり、また、同人を法人から排除することによって両組合の組織及び活動を弱体化させる支配介入といえる。
2 法人が、A3を令和2年9月23日以降継続雇用しなかったことは、組合員であることを理由とする不利益取扱い及び両組合の運営に対する支配介入に当たるか(争点2)
(1)各懲戒処分等の継続雇用拒否の理由としての相当性
法人がA3に対する継続雇用拒否の理由として挙げているのは12件の懲戒処分等であるところ〔注1〕、法人のA3に対する各懲戒処分等のうち、1件の訓告の懲戒処分以外については〔注2〕、継続雇用の申出を拒否する理由として相当性を欠くものであるとみざるを得ない。
〔注1〕下記〔注2〕に係るものを除き、いずれも、学校内及び校門付近における校長など法人関係者や生徒に対するA3の言動等に係るもの。
〔注2〕A3が「前理事長の居宅を訪問して団体交渉の申入れを行うのみならず、法人内の労使関係とは無関係の近隣の居宅に印刷物を投函」したことに係る「訓告」(令和2年6月10日措置)については、およそ必要性を欠くとともに、前理事長のみならず、その家族の私生活の平穏を侵害する不穏当な行為であるから、継続雇用の申出を拒否する理由として相当性を欠くとはいえない、旨判断。
(2)不当労働行為該当性
上記1(2)の①から⑤までと同様の理由により(ただし、同③において「いずれも」とあるのは「1件を除き、いずれも」)、法人が、A3を令和2年9月23日以降継続雇用しなかったことは、同人が両組合の組合員であることを理由として行われた不利益取扱いであり、また、同人を法人から排除することによって両組合の組織及び活動を弱体化させる支配介入といえる。
3 法人が、A4を令和2年10月25日以降継続雇用しなかったことは、組合員であることを理由とする不利益取扱い及び両組合の運営に対する支配介入に当たるか(争点3)
(1)各懲戒処分等の継続雇用拒否の理由としての相当性
法人がA4に対する継続雇用拒否の理由として挙げているのは20件の事由についてされた合計312件の懲戒処分等であるところ、法人のA4に対する懲戒処分等のうち、1件の訓告の懲戒処分以外については、継続雇用の申出を拒否する理由として相当性を欠くものであるとみざるを得ない〔注〕。
〔注〕2(1)の〔注1〕〔注2〕も参照。
(2)不当労働行為該当性
上記2(2)と同様の理由により、法人が、A4を令和2年10月25日以降継続雇用しなかったことは、同人が両組合の組合員であることを理由として行われた不利益取扱いであり、また、同人を法人から排除することによって両組合の組織及び活動を弱体化させる支配介入であるといえる。
4 よって、法人が、①A2を令和2年6月16日以降継続雇用しなかったこと、②A3を同年9月23日以降継続雇用しなかったこと、③A4を同年10月25日以降継続雇用しなかったことは、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する。 |