概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和4年(不)第57号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y法人(法人) |
命令年月日 |
令和6年7月8日 |
命令区分 |
棄却・却下 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、大学の学生募集停止に伴い希望退職に応じた組合員の復職等に係る令和3年8月23日など3回の事務折衝及び令和4年6月6日の協議における法人の対応が不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、右事務折衝に係る申立てについて除斥期間を徒過しているとして却下するとともに、その他の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 令和3年8月23日、同年9月30日及び同年11月22日の事務折衝に係る申立ては却下する。
2 その他の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 令和3年8月23日、9月30日及び11月22日の事務折衝(以下併せて「本件事務折衝」)に係る申立てが申立期間を徒過しているか
組合は、本件事務折衝について、その内容がその後の交渉に継続されたものであり、継続する行為は団体交渉である令和4年6月6日の協議(以下「4.6.6協議」)において終了したものであるから、労働組合法第27条第2項の除斥期間には当たらないと主張する。
しかし、労働組合法第27条第2項にいう「行為」とは、不当労働行為と主張される使用者の行為であって、「継続する行為にあっては」とは、その使用者の行為が継続して行われている場合をいう。同一の交渉事項に係る交渉が複数回にわたって行われていたとしても、組合が不当労働行為と主張する3回の本件事務折衝における法人の対応は、いずれも本件事務折衝の期日の都度一個の行為として完結しているから、4.6.6協議と一連のものとして継続する行為に当たらない。
よって、本件事務折衝が事務折衝であるか団体交渉であるかを判断するまでもなく、組合の本件事務折衝に係る申立てについては、いずれも労働組合法第27条第2項に定める除斥期間を徒過していることから却下する。
2 4.6.6協議における法人の対応が、不誠実団体交渉に当たるか
(1)組合が、令和4年4月25日付け要求書で希望退職に応じた組合員の復職についての協議再開を申し入れた後、4.6.6協議において復職についての協議が行われたことが認められる。
(2)法人は、4.6.6協議について、団体交渉ではなく事務折衝であった旨主張する。しかし、当該協議は、組合側から代表者である執行委員長が、また法人側から代表者である理事長に加えて、交渉委員とみられる理事1名及び総務部長がそれぞれ出席して、希望退職した組合員の復職という組合員の労働条件についての実質的な協議が行われたのであるから、労働組合法第7条第2号にいう団体交渉に当たる。
(3)4.6.6協議における法人の対応について、組合は、①平成26年12月4日付けの労働協約締結に際しての約束〔注1〕を守らず、最初から最後まで、組合員を復職させず、復職の検討もしないという門前払いの態度をとったこと、②復職させない理由として、当初は「財政上の理由」を挙げながら、組合が賃金面で柔軟に対応することを説明すると、科目専門性と担当可能科目という新たな理由を持ち出し、さらには学部の教員定員及び学部の意向を加えてきたこと、が不誠実団体交渉に当たる旨主張するので、以下検討する。
〔注1〕認定によれば、組合の分会と法人は、平成26年12月4日付けで、U大学の2つの学部の学生募集停止に伴う組合員の転退職支援について労働協約を締結しており、その際、当時の法人事務局長は、希望退職に応じた教員が、応じなかった教員より不利に扱われることはない旨を述べている。
〔注2〕一方、組合を脱退して別組合を結成した教員ら7名(その後、解雇)は、地位確認、未払賃金の支払等を求めて訴訟を提起し(以下「別件訴訟」)、令和3年5月25日、大阪高等裁判所において、原告と法人の間で、①うち2名の復職、②その他の原告らの合意退職、③解決金の支払を内容とする和解が成立している。
ア 組合主張①について
4.6.6協議において、法人は、確かに一貫して、希望退職に応じた組合員の復職という組合の要求には応じられないとの態度をとっていることが認められる。しかし、また、法人はこの自らの主張について、応じられない理由として、①定員割れで収入が1億円足りないこと、②組合提案の担当可能科目については雇用してまでの需要がなく専任教員を配置する余裕がないこと、③別件訴訟の原告教員らの復職が法人の積極的な意思によるものではないことを具体的に説明した上で、復職の代替案として金銭解決を提案していることが認められるのであって、4.6.6協議における法人のこうした説明を行い、対案の提案をしている対応が不誠実団体交渉に当たる行為であったとはいえない。
イ 組合主張②について
4.6.6協議に至るまでの交渉の経緯について、法人は、復職についての具体的協議が始まった令和3年8月23日の事務折衝の当初から、組合員らを復職させない理由として、財政上の問題のほかに科目専門性の問題も挙げており、後付けで新たな理由を持ち出したものとはいえない。また、担当可能科目の問題についても、特任教員という形もあり得るという組合の新たな提案を受けて、法人が検討し、回答したものであるといえる。さらに、その後の令和3年11月22日の事務折衝において学部の教員定員や意向の問題に触れたのは、当該事務折衝に先立って組合から新たに令和3年10月18日に担当可能科目リストの提出があったことを受けて、復職の可否について新たに検討した上で回答したものであるといえる。そして、法人は、4.6.6協議において、それまでの協議を踏まえて、改めて、組合員を復職させない理由について令和3年8月23日の事務折衝と同じ説明をしていることが認められるのであって、こうした法人の対応が、不誠実団体交渉に当たるとはいえない。
(4)以上のとおりであるから、4.6.6協議における法人の対応は不誠実団体交渉に当たるとはいえず、組合の申立ては、棄却する。 |