概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和4年(不)第29号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y会社(会社) |
命令年月日 |
令和6年7月5日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、組合員Aに休業を命じ、約2か月間これを継続したことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
○会社が、組合員Aに対し、令和3年10月8日から同年12月5日までの間、休業を命じたこと(以下「本件休業命令」)は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか(争点)
1 組合は、会社が、組合員Aのみを、「注文がないためパレット作業〔注木製パレットの製造〕の仕事がない」という虚偽の理由をもって休業させたことは組合員であるが故の不利益取扱いに当たる旨主張するので、以下検討する。
(1)不利益性について
会社は、Aに対し、本件休業命令以降令和3年12月6日に復職するまでの間、賃金を全額支払っていたことから、Aに経済的な不利益は認められない。
しかし、会社は、組合に対し、仕事も注文もなく、赤字であり、助成金がなくなればAの雇用も難しくなるという趣旨の発言を複数回行っており、組合及びAが、これらの発言を解雇のほのめかしと受け止めることは無理のないことである。このことに、本件休業命令が、約2か月間弱という長期に及んだことを考え合わせると、Aは雇用に係る不安を感じたであろうことが推認され、同人に精神的な不利益があったといえる。
(2)本件休業命令が、組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たるかについて
ア 本件休業命令以前の組合らと会社との間の労使関係について
会社は、令和2年12月17日に協定書を締結するなど組合に協力的な態度をとることもあったものの、会社が本件休業命令を行った時期においては、組合と会社は、令和3年1月28日の口頭注意〔注 同月27日にAが通常とは異なる形で作業の片づけを行ったことについて、社長が同人を口頭で注意したもの〕をめぐり意見が対立しており、組合は社長の行為が不当労働行為になる可能性に言及した「社長発言について」と題する文書を同年2月8日に送付するなどしており、本件休業命令直前の会社と組合及びAとの関係は一定程度の緊張状態にあったといえる。
イ 当該行為の業務上の必要性や合理性について
会社は、本件休業命令は、①Aが担当していたパレットの注文が著しく減少したこと、及び②職場環境を調整する必要があったこと、が理由である旨主張し、一方、組合は、①Aが出勤するに足る業務が十分に存在していた旨、②職場の人間関係の調整という理由も虚偽である旨、主張するので以下検討する。
(ア)「Aが担当していたパレットの業務が著しく減少していた」という会社主張について
本件休業命令の期間の受注状況をみるに、Aが通常勤務を行えるほどの業務が十分になかったという会社の主張はそれなりに根拠があるものといえ、本件休業命令に必要性や合理性がなかったとまでいうことはできない。したがって、Aが出勤するに足る業務が十分に存在していた旨の組合の主張は採用できない。
ところで、宍粟市の求人広告に関して、会社は令和3年10月19日の通話などで組合に対し、事実と異なる説明を行っていたことが認められる〔注〕。
しかし、当該求人については、社長が故意に虚偽説明を行ったのか、単に惰性で求人が継続されたのかも明確ではなく、当該求人広告にかかる事実をもって、会社に本件休業命令を行う必要がないほどのパレットの業務が十分に存在しており、本件休業命令が不合理、不必要なものであったとまで判断することはできない。
〔注〕認定によれば、会社は、組合との電話において、「いまは職業安定所の求人も止めている」旨等を述べた。一方、宍粟市役所が民間企業に委託して運営している無料職業紹介所において、公開日を令和3年10月21日とする、会社の求人票(仕事内容の欄に「パレット及び梱包木箱の製造」、受入人数の欄に「2名」などの記載)が掲載されていた。
(イ)「職場環境を調整する必要があった」という会社主張について
(審問において、社長が、令和3年9月に工場長からAと仕事を一緒にするのは非常につらいとして自主退職の申し出があった旨陳述していることなどを踏まえると)工場長がAとの関係で問題を抱えており、会社が、工場長にとって深刻な状況であると判断し、そのことに配慮して本件休業命令を行った旨の会社主張には、一定合理性があり、虚偽であるとまで判断することはできない。
そうすると、組合が主張するように、①本件休業命令時以前に、会社がAに対し、工場長との関係性についてヒアリングを行ったり、注意をしたとの事実の疎明はなく、また、②職場環境を整えるのに2か月もの期間を要しており、会社の対応に問題がないとはいえないものの、工場長とAの関係性に配慮して対応を検討し、その理由を述べてこなかったという点については、会社の主張は、一定理解でき、不合理とまではいうことはできない。
(ウ)以上のとおり、本件休業命令には、必要性が認められ、不合理なものであったともいえない。
(3)以上を総合的に判断すると、本件休業命令当時、組合と会社とが一定程度の緊張状態にあったとはいえるものの、本件休業命令には、業務上の必要性及び合理性が認められ、Aが組合員であるが故に行われたものとまでいうことはできないから、不利益取扱いには当たらない。
2 上記1判断のとおり、本件休業命令は、虚偽の理由でもって行われたとも、Aの組合活動を理由に行われたとも認められないから、その余を判断するまでもなく、支配介入にも該当しない。
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