労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  岐阜県労委令和5年(不)第2号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和6年6月19日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、組合が令和5年4月3日付けで申し入れた団体交渉に応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 岐阜県労働委員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、団体交渉応諾を命じた。 
命令主文   会社は、組合が令和5年4月3日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。 
判断の要旨  1 令和5年4月3日付け団体交渉申入れ及びこれに対する会社の対応について

(1)本件申入れが会社に到達しているか否か

ア 令和5年4月3日、組合は、名宛人を「C会社B1」とした上で〔注〕、組合員Aに対する令和2年12月末日払い分など3件の賃金(以下「本件未払賃金」)を交渉事項とする団体交渉の申入れを内容証明郵便として郵送しており(以下「本件団体交渉申入れ」)、同内容証明郵便については、同月4日に配達された。
 本件団体交渉申入れについては、内容証明郵便の名宛人が「C会社B1」とされてはいるものの、文中には「X組合は、Y会社の代表取締役である貴方に、この未払賃金を交渉事項とする団体交渉開催を申し入れます。」と記載されている一方、組合員AとC会社(以下「別会社」)との間に雇用関係があったとは認められないし、B1代表が別会社の代表取締役であったとも認められないから組合が別会社に対して団体交渉申入れをしたものでないことは明白である。
 名宛人を「C会社B1」と表記した理由についての書記長A2の証言によれば、組合としては、B1代表のいわゆる居所として別会社を表示したに過ぎず、あくまでも会社に対して本件団体交渉申入れをしようとしたものと認めるのが相当である。

〔注〕 認定によれば、令和4年3月29日に組合の書記長A2が会社所在地にあるビルを訪問したところ、申立外C会社の事務所が存在し、その代表は、会社の事務所は当該所在地に存在しない、来訪をB1に伝えるなどと述べた。また、同5年3月20日にA2がC会社を訪問した際、対応した社員が、B1が同会社の従業員として就労していることを肯定した。

イ 書記長A2が、本件団体交渉申入れがB1代表に送達される可能性が高い方法として、名宛人を上記のとおり表記したことにはそれなりの合理性があると認められるし、そもそも組合から見てB1代表との連絡が困難となる状況を作出したのは会社側であると認めるのが相当であるから、このような方法で本件団体交渉申入れをしたことが不相当であったとは認められない。
 そして、同内容証明郵便については、受取人を「C会社B1」とする郵便物等配達証明書が発行されていること、(岐阜県労働委員会が架電した際の)B1代表の「落ち着いたら連絡するとA2さんに伝えてもらいたい。」との発言に照らせば、B1代表が本件団体交渉申入れの事実を認識していたと推認されることから、特段の事情のない限り、本件団体交渉申入れはB1代表のもとに送達され、その内容をB1代表が認識したものと認めるのが相当である。

(2)本件団体交渉申入れに対する会社の対応

 上記のとおり、本件団体交渉申入れは、会社に送達されたと認められるところ、組合が本件団体交渉申入れにおいて7日以内に団体交渉応諾の意思表示をするように求めているのに対して、期限までに応諾の意思表示がなかっただけでなく、そもそも応答自体がなされておらず、その後も、何ら応答がないまま推移したものと認められる。

2 本件団体交渉事項が義務的団体交渉事項に該当するか否か

(1)本件団体交渉申入れに至る経緯をみるに、会社と組合員Aとの間には雇用契約が締結されていたところ、会社は組合員Aに対し本件未払賃金を支払っておらず、これに対し、組合は、令和4年2月23日に送付した文書をもってその支払いを求め、同年11月1日に開催した団体交渉において、会社は総額50万円を毎月2万円の分割支払いすることを提案したと認められる。
 会社から提案された50万円の趣旨については、上記1の(1)の経緯及び書記長A2の証言に照らせば、本件未払賃金に充当する趣旨であったと認めるのが相当である。

(2)令和4年11月1日の団体交渉の結果及びその後の経緯をみるに、組合は会社からの上記提案に対して後日メールで回答する旨を述べ、同月9日、組合は上記提案について、初回支払方法を修正することを内容とする提案(以下「4.11.9修正提案」)をB1代表のメールアドレス宛てに送信した。
 このメールが戻ってきたとか送信エラーになった等の事実があったとは認められないからB1代表に届いていると認めるのが相当であるが、会社からの応答はなかった。

(3)以上のとおり、本件団体交渉申入れは、組合員Aに対する本件未払賃金の支払方法を団体交渉事項とするものであって義務的団体交渉事項に関するものであったと認められるし、令和4年11月1日の団体交渉時に会社側の提案によって妥結したわけでも決裂したわけでもなく、当然に同一事項についてさらに団体交渉が行われることが予定されていたと認められる。

3 団体交渉拒否と正当理由

(1)団体交渉拒否があったか否か

 組合は、4.11.9修正提案に対して会社から応答がなかったことを受け、本件団体交渉申入れに至ったことが認められ、本件団体交渉申入れがB1代表に送達されたにもかかわらず、会社から何ら応答がなかった。
 そうすると会社は、本件団体交渉申入れに対して、その応諾を拒否したものと認めざるを得ない。

(2)団体交渉拒否の正当理由が認められるか否か

 会社は、本件団体交渉申入れに対して、これに応じることができないとか、あるいはこれに応じる必要がない等の理由を一切示していない。会社は、本件調査及び審問の手続を通じて団体交渉拒否について正当な理由がある旨の主張・立証を全く行っておらず、本件関係各証拠に照らしてもそのような正当な理由があると推認できるような事情は何ら存在しない。
 したがって、本件団体交渉申入れに会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に該当するものと認められる。

4 結論

 以上のとおり、本件団体交渉申入れは、B1代表に送達されていると認められるところ、本件団体交渉申入れは組合員Aに対する本件未払賃金の支払方法に関するものであって義務的団体交渉事項に該当するにもかかわらず、また、その応諾を拒否し得る正当理由が存在しないにもかかわらず、会社は応諾を拒否したものであるから労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する違法な行為であると言わざるを得ない。 

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