概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和5年(不)第38号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y会社(会社) |
命令年月日 |
令和6年4月22日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、組合が組合員A2,A3及びA4に関する解雇、未払い賃金等を協議事項とする団体交渉を申し入れたところ、会社が、これら組合員が訴訟を提起して判決が出れば支払うが、団体交渉には現時点では応じない、と回答したことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 会社は、組合が令和5年7月3日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。
2 会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記 年 月 日
X組合
執行委員長 A1様
Y会社
代表取締役 B
当社が、貴組合が令和5年7月3日付けで申し入れた団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 |
判断の要旨 |
○争点
令和5年7月3日付けの組合からの団体交渉申入れ(以下「5.7.3団体交渉申入れ」)に対する会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか。
1 5.7.3団体交渉申入れに関し、本件申立て時点(令和5年7月14日)において団体交渉は開催されていない。
2 したがって、会社が正当な理由なく、5.7.3団体交渉申入れに応じなければ、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為となるため、会社が団体交渉に応じないことに正当な理由があるかをみる。
(1)会社は、団体交渉拒否の理由として、組合員A2,A3及びA4は、既に会社と雇用関係はなく、会社とは無関係の人物であると主張する。
しかし、労働組合法第7条第2号の「雇用する労働者」とは、現に使用者との間で雇用関係にある者に限られず、組合員が退職し又は解雇・雇止めとなった場合であっても、雇用関係のあった当時の労働問題や雇用契約の効力等に関する団体交渉を申し入れた場合には、同条の「雇用する労働者」に当たると解すべきである。
令和5年7月14日付け申入書の要求事項は、これら組合員が会社と雇用関係にあった当時の労働条件や懲戒解雇撤回等の雇用契約の効力に関する事項であるから、これら組合員は、労働組合法第7条第2号の「雇用する労働者」に当たるといえ、また、5.7.3申入書の要求事項は、義務的団体交渉事項に当たる。
したがって、上記の会社主張は、団体交渉を拒否する正当な理由に該当しない。
(2)次に、会社は、令和5年7月12日付け組合あて「ご連絡」と題する書面により、組合員らが訴訟を提起し判決が出れば支払うべき金員を支払う意向であるため団体交渉には応じないとし、当事件の審査の過程においても、団体交渉の実施については、労働委員会での判断ではなく、裁判所での判断を希望するとした。
しかし、このような会社の主張は、労働組合法が定める不当労働行為救済制度を無視したものであり、団体交渉を拒否する正当な理由に該当しないことは明らかである。
3 以上のとおり、5.7.3団体交渉申入れについて、会社が団体交渉に応じないことは、正当な理由のない団体交渉拒否であり、かかる会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 |