労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神奈川県労委令和5年(不)第5号
沼南化成不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和6年2月16日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、組合が組合員Aの労働条件を交渉事項とする団体交渉を申し入れたところ、会社が、組合が求める期限までに文書回答をせず、団体交渉に応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 神奈川県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  ○争点
 組合が、令和5年3月3日付けで申し入れた組合員Aの労働条件を交渉事項とした同月14日を予定日とする団体交渉について、会社が出席しなかったことは正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。

1 組合が令和5年3月3日に会社に送付した団体交渉要求書(以下「5.3.3団体交渉要求書」)に対し、会社は、同月9日に、「同要求書で組合が指定する文書回答日までには回答できないため、同月31日までに文書回答する」旨を記載した文書(以下「5.3.9文書」)を組合に送付した。
 会社は、この文書に組合が応答しなかったことから、文書回答期限の延期について組合も同意したと認識し、同月14日の組合指定の団体交渉予定日も文書回答期限とともに延期になり、団体交渉の日時及び場所については調整中であると認識していた旨を主張している。
 確かに、5.3.3団体交渉要求書には団体交渉よりも前に文書回答を求める記載があり、令和5年3月9日の電話でのやり取りから、組合の要求は、団体交渉を開催する前提として、団体交渉の前に文書回答することであると会社が認識したとしてもやむを得ないと解される。
 そして、会社が、本件申立ての事実を知る前の同月24日に、団体交渉の日時及び場所の調整について連絡を求める通知書(以下「5.3.24通知書」)を組合に送付していることからすると、会社が、団体交渉の開催について、改めて組合と日程調整を行うものと考えていたことは容易に推認することができ、この推認を覆すに足りる事実は認められない。
 また、会社は組合の要求に対して全く応じていないわけではなく、5.3.3団体交渉要求書が会社に到達してから4日後に組合に対して連絡をとり、その後、5.3.9文書を送付したことからも、組合指定の期限には間に合わないものの、文書回答を組合の要求のとおり行う意思があったことは認められる。
 さらに、5.3.3団体交渉要求書に対して、5.3.9文書や5.3.24通知書を送付した一連の会社の対応は、同要求書が会社に到達してから1か月以内に行われており、5.3.9文書で申し入れた文書回答期限の延期についても、会社が引き延ばしを画策して実質的な団体交渉拒否を図ったという事実は認められない。
 これらの事実から判断すると、会社に団体交渉そのものを拒否する意思があったとは認められず、団体交渉の日時及び場所については、本件申立て時点においても調整段階であったとみるのが妥当である。
 したがって、5.3.3団体交渉要求書で組合が一方的に指定した団体交渉の日時及び場所に、会社が出席しなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否には当たらない。

2 なお、会社が事前の文書回答には応じる意向を電話及び文書で示して5.3.3団体交渉要求書記載の事項について対応しているにもかかわらず、同団体交渉要求書により団体交渉を申し入れてから2週間もたたない令和5年3月16日に本件申立てを行った組合の行動はやや性急の感を否めない。 

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