概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和4年(不)第56号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y会社(会社) |
命令年月日 |
令和6年3月22日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が65歳に達した組合員Aの雇用を継続しなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 65歳に達した時に組合員Aの雇用が継続されなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いとして労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当するか
(1)雇用が継続されなかったことにより不利益を被ったとされるためには、組合員Aが65歳に達した後も会社に継続して雇用されることを期待する合理的な理由を要するというべきであるから、この点について検討する。
会社の就業規則は、定年は満60歳とし、定年年齢に達した日の直後の賃金締め切り日をもって退職とすると定めているところ、Aは60歳に達してから、平成29年契約〔注 平成29年8月21日、会社が、満60歳のA、63歳のC氏など組合員3名を正社員のミキサー車運転手として雇用した契約〕により雇用され、これに係る雇用契約書は作成されなかったことが認められる。また、仮に、就業規則第39条第2項及び第3項〔注 ①60再定年退職者が希望した場合の満65歳までの再雇用、②65歳以上の社員について、会社が必要と認める場合に嘱託として再々雇用することがある旨を規定〕がAに準用されるとみても、65歳以上の社員は、会社が必要と認める場合に改めて雇用されるものと解される。
そこで、検討するに、〔AやC氏に係る組合と会社との間のやりとりや、C氏が65歳到達後に会社を退職し、その後、会社でアルバイトや日々雇用として就労していた状況などからすれば〕組合自体、60歳に達した後に平成29年契約により雇用された正社員のミキサー車運転手については、65歳で雇用は終了し、その後の処遇は改めて協議することを前提に申入れを行っていたとみるのが相当で、かかる対応からすると、平成29年契約締結時の当事者双方の認識においては、60歳を過ぎた従業員の雇用期間は65歳までとするというのが相当である。
したがって、Aが、65歳に達した後も会社に継続して雇用されるものと期待することについて合理的な理由があったとはいえず、継続雇用に係る期待権を有していたとはいえない。
(2)なお、組合は、団体交渉において、65歳以降も雇用された従業員として、C氏以外に従業員2名を挙げているが、この2名は65歳に達した後に会社で日々雇用として就労してはいるが、正社員として雇用されたことはなく、Aとは事案を異にする。これ以外にも、65歳に達した後も雇用された従業員がいることは認められるが、このような例があることを勘案しても、上記の結論は変わらない。
(3)以上のとおり、Aが、65歳に達した後も会社に継続して雇用されることについて期待権を有していたとはいえない以上、Aが不利益を被ったとはいえない。
したがって、その余を判断するまでもなく、会社が、(65歳到達の翌日である)令和4年3月7日以降、Aの雇用を継続しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとはいえない。
2 65歳に達した時にAの雇用が継続されなかったことは、組合活動に対する支配介入として労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当するか
会社の行為により組合員が不利益を被ったとはいえない場合でも、組合活動を弱体化したというべき特段の事情があれば、支配介入に該当する可能性はある。しかし、本件において、このことを認めるに足る疎明はなく、Aの雇用を継続しなかったことを組合活動に対する支配介入とはいえない。
3 以上のとおりであるから、会社が、令和4年3月7日以降、Aの雇用を継続しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらず、組合活動に支配介入したものともいえない。 |