労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和4年(不)第42号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y法人(法人) 
命令年月日  令和6年1月19日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合が組合員A2の雇用契約解除の撤回等に係る団体交渉を申し入れたところ、法人が応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると判断し、法人に対し、文書手交を命じた。 
命令主文   法人は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 年 月 日
X組合
 執行委員長 A1様
Y法人     
代表理事 B
 当法人が、貴組合から令和4年8月8日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨  1 令和4年8月8日に組合が法人に手交した「労働組合加入通知及び団体交渉申入書」(以下「本件団交申入書」)による団体交渉申入れ(以下「本件団交申入れ」)に対する法人の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか

(1)本件団交申入書の要求事項は、①組合員A2の雇用契約解除の撤回、②A2へのパワハラ行為に対する謝罪等、③就業規則の作成、周知等であり、これらはA2の労働条件に関する事項を含んでいるといえ、これらの要求事項が義務的団体交渉事項に当たることは明らかである。
 また、本件団交申入れ以降、本件申立てまでの間、団体交渉が開催されなかったことが認められる。
 そうすると、本件団交申入れに法人が応じなかったことに、正当な理由がなければ、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当することとなるので、この点について、以下検討する。

(2)法人は、令和4年8月8日に、組合が法人を訪問してきた際、代表理事は、訪問の趣旨について十分に理解できなかったものの、組合の申入れを傾聴し、話合いに誠実に応じたものであるため、組合の救済申立てに理由はない旨主張する。これは、同日の組合と代表理事とのやり取りをもって団体交渉に該当するという主張であるようにもみえるが、組合と法人との間で団体交渉実施予定日の調整を行っている以上、この時のやり取りが団体交渉であるとはいえない。

(3)次に、法人は、本件申立て後に団体交渉が開催されており、組合と法人との集団的労使関係が正常化されるに至っているため、申立ての救済の利益を欠く旨主張し、確かに、本件申立て後に4回の団体交渉が開催されたことが認められる。
 しかし、法人は、令和4年8月9日に代表理事がした通話において明確に団体交渉を拒否する意思表示を行っており、本件申立て後に団体交渉が開催されたことにより、法人の不当労働行為性が当然に消滅したとはいえず、また、当該行為に関して、組合が謝罪文の掲示を要求していることについてまで被救済利益が消滅したということはできない。

(4)以上のとおり、本件団交申入れに対する法人の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるといえる。

(5)また、法人の当該対応は、組合の申し入れた団体交渉を正当な理由なく拒否することにより、組合員の組合に対する信用を失墜させるものといえるため、組合に対する支配介入にも当たる。

(6)以上のとおりであるから、本件団交申入れに対する法人の対応は、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為である。

2 救済方法
 組合は、団体交渉応諾、組合員1名に対する雇止めの撤回及び謝罪文の掲示を求めるが、主文をもって足りると考える。 

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