労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委令和4年(不)第43号
日本鉄筋継手協会不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y法人(法人) 
命令年月日  令和5年11月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、組合が、法人の専務理事・事務局長である組合員A1及び事務局次長である組合員A2に対する処分の撤回等を議題とする団体交渉を申し入れたのに対し、法人が応答しなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 東京都労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員A1の労働組合法第2条但書第1号該当性について

 法人は、A1が労働組合法第2条但書第1号に規定する、いわゆる使用者の利益代表者に当たる旨主張する。
 確かに、A1は、理事のうち唯一常勤の専務理事の職に就いており、その責務は、人事、予算・決算、事業計画の作成など、法人の業務執行及び事務局が実施すべき業務のほぼ全般にわたっている。
 しかし、本件団体交渉申入時において、A1は、形式上役員の地位にとどまってはいたものの、法人から既に解雇されており、自宅待機を命じられるとともに、事務所への立入りと法人職員との接触を禁じられ、さらに、A1の役員解任及び特別会員の除名を近いうちに総会で決議することが会員に通知されていたことからすれば、もはや専務理事としての実態を備えていないといえる。
 したがって、A1の参加を許したとしても、法人との団体交渉において組合の自主性を損なうものとはいえず、同人を組織する組合が、労働組合法第2条但書第1号に抵触するとはいえない。

2 正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるかについて

(1)法人においては、A1以外に常勤の役員はおらず、また、本件団体交渉申入れ当時、近く臨時総会と理事会の開催が予定されており、総会は700を超える会員を対象としていることや、これまで法人の業務を取り仕切っていたA1及びA2が不在であったことからすれば、法人が臨時総会等の準備に追われていたことは容易に推測され、そのような中で、経験のない労働組合からの申入れを受けた状況を考慮すると、本件団体交渉申入れに対し回答が遅れたことにつき、法人にはやむを得なかった事情が存在したことが推認される。
 もっとも、仮に法人が主張する事情があったとしても、その旨組合に伝えればよかったのであって、上記事情の説明や回答が遅れる旨の連絡等を何ら行わなかった法人の対応に非がなかったとはいえない。

(2)しかし、法人は、7月12日付団交申入書により組合が指定した回答期限の7月19日の約20日後には、回答を行っている。しかも、この回答期限は、事前に組合と法人とが調整して設定されたものではなく、組合の一方的な都合による要求にすぎず、回答が8月10日になったことについて法人が意図的に遅延させたと認めるに足りる事情も見当たらない。

(3)そして、法人は、その後組合との団体交渉や事務折衝に応じ、両名の処分について協議しており、また、他の組合員の処分についても法人は、団体交渉に応じ、これについては和解が成立している。こうした経緯をみれば、法人は本件団体交渉申入れに対する回答は遅れたものの、その後は組合との協議には真摯に対応していると評価することができる。

(4)これら諸事情を総合的に考慮すると、本件団体交渉申入れに対し、回答が遅れる旨の連絡等も行わず、応答していなかった法人の対応に非がないとはいえないものの、法人が、団体交渉を拒否する意図をもって応答しなかったということはできず、上記対応をもって、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるとまで認めることはできない。 

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