概要情報
事件番号・通称事件名 |
神奈川県労委令和4年(不)第19号 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y会社(会社) |
命令年月日 |
令和5年10月27日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、組合員Aに対して、①労災事故連絡票と題する書面を送付したこと、②会社に連絡して欲しい旨、及び右書面を送付した旨のSNSメッセージを送ったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
神奈川県労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 会社が組合員Aに対して、令和4年9月6日に、労災保険連絡票と題する書面(以下「本件連絡票」)を送付したことが組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。(争点1)
(1)組合は、会社がAに対して本件連絡票を送付したことは、組合を無視して直接交渉を行ったものであり、労組法第7条第3号に該当する組合の運営に対する支配介入に当たる旨主張するため、以下検討する。
(2)会社は、Aに対して、本件事故(令和4年8月16日午前、Aが課長から業務中に安全靴で蹴られたこと。以下同じ)について、労災手続を進めたい旨の手紙を添えて、所管の労働基準監督署に報告するために必要な本件連絡票を送付した。会社が、本件連絡票においてAに記入を依頼した項目は、被災者住所、被災者連絡先、診察を受けた病院、薬局及び傷病部位と状態等のみであって、本件連絡票送付時、Aと接触できない状況であった会社が労災手続を進めるために必要な項目に限定したものであると認められる。
(3)よって、会社がAに対して本件連絡票を送付したことは、本件事故について労災手続を進めることを目的としていたといえ、組合の関与を排除して、組合員と直接交渉を行ったものとは認められないことから、組合の運営に対する支配介入には当たらない。
2 会社が、Aに対して、次の行為をしたことが組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。(争点2)
①令和4年8月23日、26日、30日及び31日に、会社あてに連絡して欲しい旨のSNSメッセージを送ったこと
②令和4年9月6日に、会社からAへ本件連絡票を送付した旨のSNSメッセージを送ったこと
組合は、会社がAに対して、会社あてに連絡するようSNSメッセージを複数回送信したことは、いずれも組合とAの信頼関係を揺るがすものであり、組合の運営に対する支配介入に該当すると主張するため、以下検討する。
(1)令和4年8月23日、26日、30日及び31日に、会社あてに連絡して欲しい旨のSNSメッセージを送ったこと
ア 会社は、令和4年8月23日、26日、30日及び31日に、Aに対してSNSメッセージを送信しているが、これらはいずれも、本件事故後、A自身が会社に同月23日から出勤すると連絡したにもかかわらず、同日以降も出勤せず、会社への連絡も行わなかったことから、Aの健康状態及び今後の出勤の意向を確認するために行ったものと認められる。
したがって、会社が、Aに対して、会社あてに連絡して欲しい旨のSNSメッセージを送ったことは、組合の関与を排除して、組合員と直接交渉を行ったものとは認められない。
イ 組合は、会社が送信した上記各SNSメッセージの内容が、労組法第7条第3号の組合の運営に対する支配介入に当たるとする理由について、当委員会からの求釈明に対して、何ら具体的な主張、立証をしていない。
ウ 以上のことから、会社が、Aに対して、令和4年8月23日、26日、30日及び31日に、会社あてに連絡して欲しい旨のSNSメッセージを送ったことは組合の運営に対する支配介入には当たらない。
(2)令和4年9月6日に、会社からAへ本件連絡票を送付した旨のSNSメッセージを送ったこと
ア 前記1の(3)で判断したとおり、会社が本件事故について労災手続を行うため、Aに対して本件連絡票を送付したことをもって、会社が、組合の関与を排除して、組合員と直接交渉を行ったものとは認められない。
また、会社が、Aに対して、本件連絡票を送付した旨のSNSメッセージを送ったことは、本件事故について、労災手続を進めることを目的として、会社が本件連絡票を送付したことを事前に知らせるために行われたことが認められ、したがって、組合の関与を排除して、組合員と直接交渉を行ったものとは認められない。
イ 組合は、会社が令和4年9月6日に送信したSNSメッセージの内容が、労組法第7条第3号の組合の運営に対する支配介入に当たるとする理由について、当委員会からの求釈明に対して、何ら具体的な主張、立証をしていない。
ウ 以上のことから、令和4年9月6日に、会社が、Aに対して、本件連絡票を送付した旨のSNSメッセージを送ったことは、組合の運営に対する支配介入には当たらない。 |
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