労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  群馬県労委令和5年(不)第1号
株式会社JR東日本運輸サービス不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和5年9月27日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、組合が、会社の従業員であったCが勤務中に死亡したことについて、その勤務状況の説明等や会社従業員に対する安全配慮義務等を交渉事項とする団体交渉を申し入れたにもかかわらず、会社がこれに応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 なお、Cは組合に加入していなかったが、組合は、相続人がCの組合加入を選択したことを根拠に事後加入を認めたなどと主張した。
 群馬県労働委員会は、死後に労働組合に加入することはできないなどとして、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合は、労働組合法第7条第2号の「使用者が雇用する労働者の代表者」に該当するか(争点1)

(1)労働組合法第7条第2号において規定する「使用者が雇用する労働者の代表者」とは、「現に使用者と雇用関係にある労働者の代表者」を意味し、労働組合がそれに該当する。
 しかし、本件ではCは死亡前に組合に加入したことがなく、また、会社の従業員の中には組合の組合員が存在しないことが認められる。
 したがって、組合は、労働組合法第7条第2号に規定する「使用者が雇用する労働者の代表者」に該当するとはいえない。

(2)なお、組合は、Cの法定相続人を含めた遺族の意向を踏まえ、Cの「事後加入」を組合が認めたため、Cは組合の組合員であると主張し、その根拠として、Cの期待権を相続人が継承し、Cの組合加入という選択をしたと主張する。
 しかしながら、労働組合に加入するという行為の効力は、組合と加入しようとする者との間で意思の合致することにより生じるものであるところ、死後にそのような法律行為をすることはできないことは明らかであり、Cは、その死後に組合に加入することはできない。
 よって、組合の主張を認めることはできない。

(3)また、組合は、法的な要件のみにとらわれることなく会社は団体交渉に応じるべきと主張するが、労働委員会は、労働組合法第7条に定める要件から離れて判断できるというような裁量権は有しておらず、組合の主張は失当である。

(4)さらに、組合は、将来的に組合の組合員が会社で就労する可能性がある等主張するが、組合の設立から結審時までの間に会社に所属していた組合員は存在しない状況において、組合を「使用者が雇用する労働者の代表者」と認めるに足る事情は見当たらない。

2 本件団交申入れに対し、会社が、Cが組合の組合員であることの証明を求めてこれに応じなかったことが労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当するか(争点2)

(なお、争点1において組合が労働組合法第7条第2号の「使用者が雇用する労働者の代表者」に該当しないと判断されたことから、争点2について判断する必要はないが、争点として整理したため念のため検討することとする。)

(1)本件団交申入れについて、会社はCが会社に在籍していた間に組合の組合員であったことがわかる資料の提示を求め、組合はこれに応じることなく、当事者間で団体交渉が開催されていない。
 会社は、組合に対してCが組合員であることの証明を求めて団体交渉に応じなかったことには正当な理由があると主張するため、この点について以下検討する。

(2)会社は、CはD組合の組合員であることを明らかにしていたが、組合に加入したことを明らかにしたことはなかったと主張している。客観的にCが生前には組合に加入していなかったことが判明しているから、会社の主張する事実を認めることができる。また、会社に雇用されている組合の組合員が存在しないことから、会社がCの組合への加入の有無を把握することは困難であったものといえる。

(3)団体交渉は、使用者とその雇用する労働者の属する労働組合との間で行われるものであるから、以上の状況において、団体交渉に応ずべきかについて会社が組合に対し、Cが組合の組合員であることの確認を求めたのは合理的な対応であるといえる。
 しかるに、組合は、真にCが加入していたなら、加入時に作成するであろう各種文書や組合費の支払の状況がわかるものなどを開示すれば容易にその証明ができるにもかかわらず、全くそのような行動をとっていない。
 これらの事情の下では、本件団交申入れに会社が応じなかったことには正当な理由があったと認められる。

3 結論

 以上のとおり、本件団交申入れの時点で組合が会社との関係において「使用者の雇用する労働者の代表者」であったとはいえず、また、本件団交申入れを会社が拒んだことには正当な理由があったといえることから、会社が本件団交申入れに応じなかったことは、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。 

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