概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和2年(不再)第7号
双葉産業不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X組合(「組合」) |
再審査被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和4年10月19日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、組合員である従業員Aを、平成30年3月31日付けで雇止めとしたこと(本件雇止め)が労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第1号及び第3号の不当労働行為であるとして申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、組合の救済申立てを棄却し、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 不利益取扱いに当たるか
ア 本件雇止めについての合理的理由の有無
会社は、従前、取引先であるB社の製造する生コンクリートのほぼ全てについての販売業務を行っていたが、平成29年10月にB社がC協同組合に加盟した後は、当該販売業務を大幅に縮小することとなるなど、収益構造の変動を来し、売上げ・利益とも悪化していた。本件雇止めはB社のC協同組合加盟の約5か月後にされた ところ、上記変化が生じた時期に鑑みれば、本件雇止め当時、会社が人件費削減の必要性があると判断したことは、自然かつ合理的である。
さらに、会社は、A組合員と同時に非組合員の2名を雇止めとしており、A組合員を含め雇止めとされた3名は、通算雇用期間が比較的短い従業員であったこと等からすると、同人らが人件費削減の対象となったことも不合理とはいえない。
以上によれば、本件雇止めは、人件費削減を目的とするものであって、本件雇止めの判断には合理性があるというのが相当である。
イ 30.2.8D発言
① 組合は、会社が組合対応への助力を依頼したDが、平成30年2月8日、A組合員に対して組合脱退勧奨の発言(以下「30.2.8D発言」という。)をしたとし、これは会社の指示を受けて行われた脱退勧奨であって、A組合員がこれに応じなかったためになされた本件雇止めは、組合嫌悪意思に基づくと主張するが、会社がDに対し、脱退勧奨の依頼をしたことを示す客観的証拠はなく、30.2.8D発言の内容をみても、会社側の誰にいかなる働き掛けをしてほしいと言われたかは判然と しない。
また、Dは、要旨、自分がA組合員を思って30.2.8D発言を行ったのであり、会社の依頼は受けていない旨を証言するところ、Dは、A組合員と従前から面識を有しており、当時、C協同組合が、組合の活動が威力業務妨害であるとして、組合の責任を徹底的に追及する旨を表明していたことからすると、Dが、組合員を気にかけて、会社に無断で30.2.8D発言に及んだとしても、不自然とまではいえない。
また、同月27日の団体交渉のやり取りをみると、組合も、30.2.8D発言が、会社の具体的指示によるものであるという認識は有していなかったことがうかがわれる。
以上から、30.2.8D発言が会社の依頼によってされた事実は認められない。
② 組合は、Dが、30.2.8D発言の前後を通じ、会社の委任を受け代理人として行動していたとも主張する。しかし、Dが会社から、労使関係の処理について代理権を授与されたという客観的裏付けはないこと、組合もDの関与によって円滑な交渉が期待できると考えていたことがうかがわれること等に鑑みれば、Dの立場は、会社の委任を受けた代理人とは異なるものであったというべきである。したがって、30.2.8D発言は、会社から依頼を受けたとも、会社の代理人として行ったとも認められない。
ウ 以上のことなどから、本件雇止めは、組合員であることの故をもってした不利益取扱いであるとは認められず、労組法第7条第1号の不利益取扱いには当たらない。
(2) 支配介入に当たるか
本件雇止めに合理的理由が認められることは、前記のとおりであることからすると、会社に、本件雇止めをもって組合を弱体化させる意思があったとも認められないことから、本件雇止めは、労組法第7条第3号の支配介入には当たらない。 |
掲載文献 |
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