労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  埼玉県労委令和4年(不)第3号
有田川漁業協同組合不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和5年5月25日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、①法人が、組合からの団体交渉の申入れに応じなかったこと、②組合に対し、法人事務所への立入り及び使用並びに同事務所敷地内へののぼり旗・掲示板等の設置を拒否したことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 埼玉県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合が、令和4年6月22日に団体交渉を申し入れたのに対し、漁協が、本件申立後の同年8月30日まで団体交渉に応じなかったことは、団体交渉の拒否に当たり、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当すると言えるか。(争点1)

 本件申立てに至るまで、法人は、組合からの団体交渉申入れに関して、その都度文書により対応しており、団体交渉そのものを拒絶する意思を示したとするような事実は認められない。その後も、法人は、交渉日時や交渉方法について組合とのやり取りを継続し、交渉日時を調整して、令和4年8月30日、組合の希望どおりリモート方式(Zoom)による団体交渉に応じている。また、当該団体交渉の日程を調整するに当たり、法人が殊更開催を先延ばしにしようとした意図も認められない。
 したがって、本件申立時点では、まだ団体交渉は開催されていなかったものの、組合からの団体交渉申入れに対し、法人がこれを正当な理由なく拒否したとまでは言えず、法人の対応が労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとは認められない。

2 法人が、組合に対し、法人事務所への立入り及び使用並びに同事務所敷地内におけるのぼり旗・掲示板等の設置を拒否したことは、労働組合運営への支配介入に当たり、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当すると言えるか。(争点2)

 本来、使用者の施設はその事業目的を達成するためのものであって、労働組合であるからといって、当然に使用者の施設を利用する権限を有するものではないし、使用者において組合活動のために労働組合が当該施設を使用するのを受忍すべき義務を負うというものではないことは言うまでもない。
 本件においても、漁協施設の利用を許さないことが施設管理権の濫用であると認められる特段の事情がない限り、使用者の施設管理権の正当な行使であると言わざるを得ない。
 この点、組合は、2人の理事の許可を受けていると主張するが、「代表理事は、組合の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」(水産業協同組合法第39条の3第2項)とされていることから、漁協の業務に関する行為をする権限を有しない他の理事から組合が施設利用の許可を得ることはできないと解されるべきである。
 本件申立時において、組合に所属する21人の組合員のうち、漁協の雇用者は1人のみであり、組合が漁協施設を利用する必要性は必ずしも大きいとは言い難く、また、漁協が殊更組合を嫌悪していたとする事実も見受けられず、施設管理権の濫用と言えるような特段の事情についても疎明がない。
 したがって、漁協が組合に対し、漁協事務所への立入り及び使用並びに同事務所敷地内におけるのぼり旗・掲示板等の設置を拒否したことは、組合運営への支配介入に当たるとは言えず、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するとは認められない。 
掲載文献   

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