労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和4年(不)第5号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和4年11月18日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、組合が申し入れた団体交渉に応じないことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、文書交付を命じた。 
命令主文   会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 年 月 日
X組合
 執行委員長 A1 様
Y会社        
代表取締役 B
 当社が、貴組合からの令和4年1月7日付け団体交渉申入れに応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨   令和4年1月7日付け団体交渉申入れ〔注〕に対する会社の対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当するかについて判断する。

〔注〕令和4年1月7日に、組合が会社に対し、①個別指導学院C教室(以下「本件教室」)の閉校を撤回すること、②団交において、閉校を決定した理由について説明し、支部代表A2の〔本件教室からの〕異動については労働条件を引き下げないことの2項目を要求事項とする団体交渉申入書を提出して行った団体交渉申入れ。以下「本件団交申入れ」という。)

1 〔令和4年1月28日の〕本件申立てに至るまで、組合と会社との間で、本件団交申入れについて団交は開催されていないことが認められるので、これに至る経緯についてみる。

 ①令和4年1月7日、組合は、団交日時は双方協議の上で決定するとして、本件団交申入れを行ったこと、②同月19日、組合書記長は会社のコンプライアンス経営推進室長に対し、電子メールにて、団交の日時等について通知するよう求めたこと、③同月23日、組合書記長は同室長に対し、団交日時の問合せに対する連絡がない状況が続いており、同月24日までに連絡がなければ、会社には団交する意思がないと判断する旨のメールを送信したこと、が認められる。
 これに対し、会社は、1月24日にメール(以下「1.24会社メール」)を送信したところ、同メールには団交候補日についての記載はなく、①担当幹部社員等から支部代表A2に対し、本件教室の閉校やA2の今後の処遇について説明を2回した、②会社は、これ以上、詳細な説明はできず、同じ説明を繰り返すことになる、③会社の適切な経営判断と適正な労務事象について、繁忙期である今の時期に団交を行う意義に懸念がある旨記載されていたことが認められる。
 組合は、これに対し、1月24日にメール(以下「1.24組合メール」)を送信したところ、同メールには、①組合員に直接説明があったとのことであるが、団交は組合が申し入れたものであり、組合に対して説明・協議を行わなければならない、②これ以上、組合及び組合員に対して説明することはないとの危惧は杞憂である、③繁忙期との点についても、そもそも閉校指示が唐突に出されたものであり、組合には関係のない事情である、④早急に団交日程の調整をお願いする旨記載されていたことが認められる。また、同認定のとおり、会社は、I. 24組合メールの受信後、団交日程について返答しなかったことが認められる。
 そうすると、組合は1.24会社メールに記載された内容にも返答し、繰り返し、団交日程の調整を求めたが、会社は応じなかったことは明らかで、会社が本件団交申入れに応じる態度を示さなかったため団交が開催されなかったというのが相当である。

2 会社は、本件教室の閉校は義務的団交事項には該当しない旨主張するので、本件団交申入れの議題について検討する。
 本件団交申入れの議題は、支部代表A2が勤務する本件教室の閉校やこれに伴うA2に関する労働条件の変更についてであると判断される。
 一般に、事業所が閉鎖されれば、そこに勤務する労働者は異動の対象とされ、労働環境が大きく変わったり、場合によっては余剰人員とされる可能性もあるのであるから、事業所の閉鎖が労働条件に直接に影響を及ぼし得ることは明らかであって、本件団交申入れの議題は、組合員の労働条件に直接の影響を及ぼし得るものとして義務的団交事項に当たるというのが相当である。
 会社は、本件教室の閉校は、純粋な経営的判断のみに基づき決定されており、本件教室の閉校が組合活動に対する報復措置であるとの組合の主張は根拠を欠く旨主張する。しかし、閉校の理由如何によって、本件団交申入れの議題が義務的団交事項に当たるとする判断が左右されるわけではない。したがって、会社が本件教室の閉校は経営的判断にのみ基づいたもので組合活動とは関係がないとするのならば、団交の開催に応じ、団交の場で、組合の理解を得られるようにその旨説明する義務を負うというべきものである。
 なお、本件団交申入れの要求事項は、着任後わずか1年で勤務地を変更されようとしている支部代表A2の労働条件についてでもあり、組合員故の不利益取扱いの疑念を払拭できる回答を求める旨の組合の主張は首肯できる。

3 会社は、団交の実施により合意が成立する可能性がほぼない旨、また、支部代表A2に対し、幹部社員等を通じて、本件団交申入れにおける要求事項について、丁寧かつ十分な説明を行っている旨主張する。
 しかし、会社が合意が成立する可能性がほぼないと判断したことのみをもって団交応諾義務が免じられるものではなく、組合員個人への説明と団交での協議を同視することはできない。
 したがって、これらの会社の主張は団交に応じない正当な理由には当たらず、会社は、団交の場で、組合に対し自らの見解を明らかにし、これに関する組合からの質問があれば回答するなどして協議を行うべき立場にあるというべきである。
 なお、1.24会社メールには繁忙期に当たる旨の記載もあるが、会社が、当時、団交を開催し、本件教室の閉校や支部代表A2の処遇について協議できない程度に多忙であったと認めるに足る疎明はなく、繁忙期であることは本件団交申入れに応じない正当な理由には当たらない。

4 これらのことから、会社は、義務的団交事項について協議を求めた本件団交申入れに正当な理由なく応じなかったというのが相当であって、かかる行為は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 

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