労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和3年(不)55号
大阪府不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  大阪府(府) 
命令年月日  令和5年1月13日 
命令区分  却下 
重要度   
事件概要   本件は、組合が、常勤講師又は非常勤講師等である組合員の雇用継続の保証を要求事項とする団体交渉を申し入れ、開催された団体交渉の席上、府が、当該要求事項は管理運営事項に該当し回答できないとしたことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事件である。
 大阪府労働委員会は、申立ては労働組合法適用者に関するものとはいえず、組合の申立人適格を認めることはできないとして申立てを却下した。
 
命令主文   本件申立てを却下する。 
判断の要旨  本件において、申立人は申立人適格を有するか(争点)

1 令和3年2月3日付け団体交渉申入書(以下「本件団交申入書」)に記載された組合員19名の氏名等を記載した表の内訳から、本件団交申入れは①常勤講師等の臨時的任用職員11名、②非常勤講師4名と外国語指導員1名の会計年度任用職員及び③大阪府立支援学校で児童生徒の医療的ケア等に従事する労組法適用者である特別非常勤講師(看護師)3名(以下「本件看護師組合員3名」)についてのものであったと解される。
 組合は、上記①の常勤講師等の臨時的任用職員と上記②の非常勤講師等の会計年度任用職員は労組法によって不当労働行為について救済されるべきである、上記③の本件看護師組合員3名は労組法適用者であって不当労働行為について救済される対象であることは自明である、として、本件において、組合は申立人適格を有する旨主張するので、以下検討する。

2 ①の常勤講師等の臨時的任用職員と②の非常勤講師等の会計年度任用職員については、いずれも一般職の地方公務員である。
 これについて、組合は、一般職の地方公務員にも不当労働行為救済制度が適用されると主張し、その理由として、一般職の地方公務員が憲法第28条の勤労者あるいは労組法第3条の労働者に該当することは否定されておらず、労使関係を規律する法律として、地方公務員法(以下「地公法」)は労組法の特別法に当たり、地公法は、労組法による労使関係の規律と同等かそれを上回る規律を保持していなければならず、特別法に別の規定がない場合には一般法が類推適用ないしは準用されるはずであるとした上で、地公法には不当労働行為の定義はなく、労組法第7条第1号に類似した不利益取扱いの禁止が定められているだけであり団交拒否や支配介入等が禁止されていないことや臨時的任用職員や条件付採用期間中の会計年度任用職員については、不利益取扱いを受けた場合の救済制度が不備であることを指摘する。さらに、令和2年4月1日施行の地方公務員法改正に当たって、国会において附帯決議がなされたことを挙げ、従前、不当労働行為救済制度が適用されていた会計年度任用職員には、不利益が生じることなく、引き続き、同制度を適用させるという立法者意思がある旨主張する。
 しかし、地公法第58条が一般職の地方公務員について労組法の適用除外を明確に定めている以上、一般職の地方公務員にも不当労働行為救済制度が適用されるとする組合の主張は採用できない。

3 ③の本件看護師組合員3名は、特別非常勤講師(看護師)として任用されていたが、平成29年4月1日以降は、府に任用されていないことが認められる。そうすると、本件団交申入書の「講師組合員に対して雇用の継続を保証すること」との要求事項について、本件団交申入れ時において任用されていない本件看護師組合員3名が「雇用の継続」を求める対象者であったとはいい難い。

4 また、本件看護師組合員3名は、平成29年4月1日以降、任用されなかったことが違法であると主張して地位確認等請求訴訟を提起するなどしていたことから、本件団交申入れ時において雇用されるべき地位にあったとして雇用の継続の保証を要求したものとしたとしても、令和2年4月1日の地公法改正の施行後は、非常勤講師や非常勤看護師は一般職の会計年度任用職員として任用されることになっていたことが認められる。したがって、「雇用の継続」という以上、同3年2月3日の本件団交申入れの時点においては、本件看護師組合員3名の地公法適用者としての任用の継続を要求したとみるのが相当であり、労組法適用者の問題について団交を申し入れたとみなすことはできない。

5 以上のとおりであるから、本件団交申入書の表中の組合員のうち、常勤講師等の臨時的任用職員と非常勤講師等の会計年度任用職員は一般職の地方公務員であって労組法は適用されず、表中の組合員に本件看護師組合員3名が含まれていることをもって、労組法適用者の問題について団交を申し入れたということもできない。

6 したがって、本件団交申入書の「講師組合員の雇用の継続を保証すること」との要求事項への対応に係る申立ては、労組法適用者の問題に関するものとはいえないのであるから、本件において組合の申立人適格を認めることはできず、その主張する事実が不当労働行為に当たらないことが明らかであることから、本件申立ては却下する。 

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