概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和3年(不)第21号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y法人(法人) |
命令年月日 |
令和4年2月10日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、法人が、組合員2名の配置転換に係る団体交渉において、抽象的な回答に終始し、具体的な説明を一切行わなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 令和3年3月19日の団体交渉(以下「団交」)における組合員A1及び組合員A2の配置転換(以下「配転」)についてのやり取りに関して、組合は、法人が同人らの配転先を明らかにせず、抽象的な回答に終始し、具体的な説明を拒否したことが不誠実団交である旨主張し、法人は、組合との間で、組合員の配転について、いわゆる事前協議条項が存する労働協約は存在せず、組合に対して内示前に配転の有無や配転先を明らかにすべき義務はないのであり、それらを情報開示できない旨の回答をしたことをもって不誠実団交には当たらない旨主張する。
そこで、団交において、内示前に、労働組合に対して、配置転換の有無や配転先を明らかにしなかったことが不誠実団交に当たるといえるのかについて、以下検討する。
2 一般的に、配転は、組合員の勤務場所が相当の長期間にわたって変更されるものであり、組合員の労働条件や生活環境に多大な影響を与えるものであるから、配転の基準や手続などの実施方針は、労働条件に関する事項であり、義務的団交事項に当たるといえる。
しかしながら、個々の組合員に対してなされる個々の配転については、労使間に事前協議の協定がある場合を除き、使用者は、事後的に苦情処理手続又はこれに代わる協議の手続において対応すれば足りるものであり、個々の配転についての事前協議に応じなければならないものではないと解される。そして、組合と法人との間で、そのような事前協議の協定の存在は認められないため、法人に、内示前に組合員の配転の有無や配転先を明らかにすべき義務までが課されるとはいえない。
3 ところで、組合は、内示前に、組合と協議するために配転の有無や配転先を明らかにすることが義務付けられたとしても、法人の人事権が制約されることはない旨主張するが、事前協議の協定がないにもかかわらず、そのような義務が課されるとすれば、使用者は、組合との協議により、配転の有無や配転先を左右されることになり、このことが使用者の人事権に著しい制約を課すことは明らかであり、組合の主張は、採用できない。
4 以上のとおり、法人には、令和3年3月19日団交で、組合に対して、内示前に配転の有無や配転先を明らかにする義務があったとまではいえず、これらを明らかにしなかったことは不誠実団交に当たるとはいえない。
5 なお、①組合が、A組合員の復職後の勤務について質問したのに対し、法人が復職復帰支援プランに沿った勤務時間の配慮について回答していること、②組合からの産業医の面談についての質問にも、法人は回答していること、③組合からのAの残業について配慮してほしいとの要望に対し、法人は、拠点長に配慮の指示を出す考えである旨回答していること、が認められる。これらのことからすれば、法人は、配転に係る全ての事項について抽象的な回答に終始しているというわけではなく、配転の有無や配転先以外については、一定、回答を行っているといえる。
6 以上のとおり、令和3年3月19日の団交における法人の対応は、不誠実団交に当たるとはいえず、本件申立ては棄却する。 |
掲載文献 |
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