労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委令和元年(不)第39号
申立人  X1組合・X2組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和3年10月19日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、組合の団体交渉申入れに対し、東京支社の新設に伴い、今後は、同支社が組合への対応を行うと伝えるとともに、同支社内には会議室がないため団体交渉は外部施設を利用し、その費用は組合と折半とすることを提案した会社の対応が不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 東京都労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 東京支社が対応することについて

 組合は、団体交渉には登記簿の公開に関する事務(以下「乙号事務」)に従事する労働者(以下「乙号事務労働者」)の労働条件について決定権限を有する本社の担当者が出席しなければならないと主張することから、東京支社の権限についてみてみる。
 会社において、乙号事務民間競争入札の際、入札価格を見積もり、決定しているのは各支社であるところ、平成31年4月1日に会社の東京支社が設置され、会社の登記簿に支店として登記された。そして、東京法務局の乙号事務受託については、31年4月以降、見積り及び入札、契約締結、代金の請求及び受領に関する事項等、その他契約履行に関する一切の権限が社長から東京支社長に委任され、同支社のB課長が、乙号事務民間競争入札に関し、人員、業務量を分析して管内各所の人員配置を決定し、賃金等を勘案して入札価格の見積りを作成し、同支社長の了承後に、本社に報告している。また、会社では、社員の昇給、契約社員の採否及び役職の付与については各支社長が、一定の労働協約の締結についても各支社長が、それぞれ権限行使者とされている。さらに、乙号事務労働者の賃金は、契約社員就業規則において、個別に決定し、雇用通知書に明示するとされているところ、31年4月以降、東京法務局管内の乙号事務労働者に対する雇用通知書の使用者名は、東京支社長となっている。
 そして、会社が組合加入を認識していた乙号事務労働者は全員東京法務局に所属していた中で、会社は、東京支社の設立を受け、本件要求書への回答として組合に対し、①4月1日付け会社の組織変更による東京支社の新設、②今後は東京支社が組合への対応を行うこと、③同支社に所属する組合員については同支社が対応すること、④上記組織変更により、東京法務局の乙号事務労働者である組合員に関する交渉は同支社の管轄となったことなどを説明している。
 このように、東京支社設置後は、東京法務局の乙号事務受託に関する一切の権限が同支社に委任され、その労働者についての賃金等の労働条件の決定については同支社長が権限を有することとされた。そして、会社は、本件要求書に対し、今後の団体交渉は組合員の所属する東京支社が対応することとなったとの説明を行った上で回答しているのである。こうした会社の対応は、東京支社の権限や同支社が団体交渉を担当することに係る説明の内容からみて、それ相応な対応であるといえる。
 加えて、会社は、2019春闘要求(以下「本件要求書」)以前の類似する組合の要求に対しても適宜回答しており、その内容は本件要求書に対する回答と同旨であったといえることから、東京支社が団体交渉を担当することによって本件要求に対して適切に回答できなくなったともいい難い。
 したがって、本件要求書に対し、東京支社の担当者を交渉窓口とする会社の対応が団体交渉拒否であったということはできない。

2 会議室について

 本件要求書についての会議室を巡るやり取りをみると、会社は、平成31年4月15日、東京支社には会議室等がなく、団体交渉は外部施設の利用を考えており、費用については折半するよう提案している。これに対し、組合は、会社が団体交渉の場所を今までとは別の場所にするならば、会社がその費用を負担するのが当然であり、外部施設利用の際の費用の負担について応じることは出来ないと抗議した。これを受けて、会社は、本件要求書に関する団体交渉については従来どおり本社会議室で行えるよう調整する、今後については団体交渉で協議したいと回答している。
 このことについて、組合は、会社が外部会議室の利用による費用負担を求めて団体交渉開催を引き延ばしていると主張する。
 しかしながら、上記のとおり、会社は、本件要求書に対し、当初は外部施設の利用と費用の折半を提案しているものの、組合の要求に応じて本社の会議室で応ずる姿勢をみせている。そして、会社は、今後については団体交渉で協議したいと求めているが、このことは、会社が本件要求書に関する団体交渉に応じた上で、今後の団体交渉ルールについて協議することを提案しているにすぎない。
 したがって、上記対応により会社が団体交渉開催を引き延ばしているとはいい難いことから、組合の主張を採用することはできず、会社の対応が団体交渉拒否に当たるとはいえない。 
掲載文献   

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