労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和2年(不)第30号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和3年9月13日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   会社が組合員A2に対し解雇を予告したところ、組合は会社に対し、A2が組合員であることを通知し、団体交渉を申し入れるなどした。本件は、このような状況下で、会社が一旦発表した勤務シフトを変更し、A2について全て休日としたことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、文書の手交を命じた。 
命令主文   被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 年 月 日
 X組合
  執行委員長 A1 様
Y会社        
代表取締役 B
 当社が、勤務シフトを変更して、令和2年7月21日から同年8月20日までの間、貴組合員A2氏について、全て休日としたことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。  
判断の要旨  1 会社が、勤務シフトを変更して、組合員A2について全て休日としたことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるかについて、以下判断する。

2 会社は、A2に対し休職期間中の賃金を全額支払っており、不利益はない旨主張する。しかし、労働者の就労の意思は尊重されるべきものであって、賃金が全額支払われたとしても、本人の意に反して就労できないことは、苦痛を伴うものである。また、このことにより、同僚との接触や情報交換が困難になることを考えれば、正当な理由なく休職扱いにすることには、不利益があるというのが相当である。

3 そこで、会社が、勤務シフトを変更して、A2について全て休日とした理由について検討するに、
①会社は、当初は、A2を雇用解除日まで勤務させる方針であったところ、雇用解除を予告してから相当程度経ってから、この方針を突如として変更し、翌日から雇用解除日まで勤務しないよう命じたというべきである。
②会社はA2に対し、理由を明示しないまま、出勤しないよう命じたというのが相当である。
③会社は、本件休職の理由として、A2は「私クビやてー」等と他の従業員に吹聴するので、他の従業員の士気が下がっていたことを挙げ、A2が組合に加入したことや組合活動をしたことが休職の理由ではない旨説明するが、これはむしろ、A2が会社による雇用解除が不当であるとの自らの考えを述べることにより、同調する従業員が出現することを会社が警戒していたことを窺わせるものである。
④ また、会社は、職員Cから、A2がセクハラに該当するような話をするので迷惑をした旨の話を聞いたことも本件休職の理由として挙げるが、A2とCとの間に、同じ職場で就労させてはならないような人間関係上の問題があったとみることはできず、加えて、休職通知までの間に、Cが、自発的に会社に対して、A2からセクハラに該当するような言動を受けたとして相談をしたと認めるに足る疎明はない。
⑤ 本件休職を通知した時期についてみると、組合が、A2に対する解雇通知の撤回等を求めて団交を申し入れ、日程調整を求めた結果、近日中の開催が決定した直後に、会社はA2に対し、出勤しないよう命じたと言うことができる。

4 以上のことを総合的に判断すると、組合から実際に、解雇通知の撤回等を求めて団交が申し入れられ、近日中の開催が決定した状況において、会社は、組合を通じて雇用問題を解決しようとするA2の影響が他の従業員に及ぶことを危惧して、職場から同組合員を排除するために、雇用解除日まで勤務させる方針を突如として変更して、本件休職を行ったとみるのが相当である。
 以上のとおりであるから、会社が、勤務シフトを変更して、A2について全て休日としたことは、組合員であるが故の不利益取扱いであると判断され、かかる行為は、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。
  
掲載文献   

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