労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  高知県労委令和2年(不)第1号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y法人(法人) 
命令年月日  令和3年3月29日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合が組合員Aの現職復帰等について団交を申入れ、法人との間でコロナウイルス感染症対策の観点から文書郵送による主張の交換による方式によるやりとりが行われたが、その間、法人がAに労働契約の変更に係る催告書を送付するなどしたため、組合が対面方式による団交を複数回申し入れたのに対し、法人がこれに応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがあった事案である。
高知県労働委員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、法人に対し文書の交付及び掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、本命令交付後速やかに、下記内容の文書を申立人に交付するとともに、同一内容の文書を、用紙の大きさはA4版(210×297ミリメートル)、文字のフォントは明朝体、文字サイズは12ポイント以上で記載の上、被申立人交流室内の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
 年 月 日
 X組合
  組合長 A様
Y法人    
理事長 B
 当法人は、令和元年11月12日に、高知県労働委員会から貴組合との団体交渉等に関する不当労働行為救済命令を受けましたが、そのような経緯があったにもかかわらず、今回、貴組合からの令和2年6月1日から同年7月2日にかけての団体交渉の申入れに対して、当法人が書面の交換による方法に固執し、これに応じなかったことが、同委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。
 当法人は、このことを真摯に受け止め、今後は、このような行為を繰り返さないようにします。
2 被申立人のその余の申立ては、棄却する。 
判断の要旨  1 団体交渉がどのような方法で行われるべきかについて、法令上明文で定めたものはない。しかし、団体交渉においては、使用者には誠実交渉義務があると解されており、当該義務を果たすためには、使用者が労働組合の代表者と会見し協議する過程が特に重要であることから、誠実交渉義務には、会見し協議する義務が内包されていると解される。
 したがって、原則として団体交渉は対面方式によることが必要であり、例外的に、書面の交換による方法により団体交渉義務の履行があったといえる場合があるとしても、労使双方の合意がある場合又は対面方式によることが困難であるなど特段の事由がある場合に限られるというべきである。
2 新型コロナウイルス感染症が収束しない限り、対面方式による団体交渉を行うことが一律に困難であると認めることは相当ではない。つまり、上記のとおり、誠実交渉義務を果たすためには、対面方式による団体交渉を行うことが重要であることに鑑みれば、一律に対面方式を困難なものとするのは相当ではなく、その時点における新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況と照らし合わせ、かかる状況下で、感染予防対策を行ってもなお団体交渉を行うことが困難であるか、具体的事情を考慮して、特段の事情の有無を判断することが必要である。
3 緊急事態宣言が解除された後、本県においては、その開催場所や開催方法によっては、対面方式による団体交渉が可能な状況であったというべきであり、組合により書面の交換による方法についての合意が撤回されたと認められる6月1日以降も、法人が、感染リスクを低減させる方法を何ら検討することなく対面方式による団体交渉を拒否し続けていることからすると、本件においては、新型コロナウイルス感染症の感染予防対策を行ってもなお団体交渉を行うことが困難であったとは認められず、特段の事情があったとはいえない。
4 以上のとおりであり、6月1日から7月2日にわたる組合からの対面方式による団体交渉の申入れに応じなかった法人の対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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