労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神奈川県労委令和元年(不)第21号
ベスト・パートナー等不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和3年10月27日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、①組合が、Y会社及びC会社に対して申し入れた、組合員A(Y会社に雇用され、派遣先であるC会社にて業務に従事)の解雇問題、社会保険未加入問題などを交渉事項とする団体交渉についてのY会社の交渉態度、②同団体交渉についてのC会社の交渉態度、③Y会社が、本件申立てに係る第1回調査期日において、労働条件通知書兼就業条件明示書を証拠として提出したことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 その後、組合は、C会社と和解協定を締結したことを受け、同会社に対する申立てを取り下げた。
 神奈川県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合からの令和元年8月7日付けAの解雇等の労働問題を議題とする団体交渉の申入れに対するY会社の対応は、不誠実な交渉態度に当たるか否か(争点1-1)
 組合は、Y会社は、①C会社がY会社に代わりを依頼した事実がないにもかかわらず、あたかも代わりのように組合に元.9.3文書を送付した、②作成日が虚偽でねつ造である本件個別契約書(Y会社とC会社との間の労働者派遣個別契約書)を作成し、組合に送付したとし、これらが不誠実な交渉態度に当たると主張する。
 しかし、Y会社がこれらの書類を送付した時点では、組合とY会社は団体交渉の開催に向けて日時等の調整を行っている段階であり、未だに団体交渉は一度も行われていない。その後も団体交渉が行われていない以上、このような段階でY会社が組合に対して元.9.3文書及び本件個別契約書を送付したことのみをもって、不誠実な交渉態度に当たるとはいえない。
 したがって、Y会社が組合に元.9.3文書及び本件個別契約書を送付したことは、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為とはいえない。
2 組合からの令和元年8月7日付けAの解雇等の労働問題を議題とする団体交渉の申入れに対するY会社の対応は、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点1-2)
(1)組合は、Y会社がC会社に虚偽の連絡を行い、C会社から組合に元.8.20文書〔注 Y会社と組合の話し合いの中で偽装派遣の疑いが解消したので、両者で団体交渉を行うこととなった旨の連絡がY会社からあったが、その認識で正しいか確認したい旨記載〕が送付されたことにより、組合の内部に不審や疑念が生み出され、組織運営が阻害されたことが支配介入に当たると主張する。
 しかし、C会社が組合に対して文書を送付する前に、Y会社とC会社がいかなるやり取りをしたかについて、元8.19文書の送付〔注「労働者派遣契約の途中解約を行う場合について」と題する文書〕、本件個別契約書の作成及び元8.20文書の送付を除いて証拠上明らかではない。したがって、Y会社がC会社に虚偽の連絡をしたという組合の主張は採用することができない。
(2)Y会社が組合に対して本件個別契約書を送付したことにより、組合は、「偽装派遣」、「偽装請負」問題について内部打合せに時間がかかり、組織運営を阻害されただけでなく、組合と組合員Aとの間に不信や疑念が発生又は拡大することとなったため、支配介入に当たると主張する。
 Y会社とC会社が本件個別契約書を作成したのは元.8.7要求書を受け取った後であること、及びY会社が組合に対して本件個別契約書の実際の作成日を明らかにしなかったことが認められ、同社は組合に対して真実を伝える姿勢に欠けていたといわざるを得ない。
 しかし、本件において、本件個別契約書の実際の作成日そのものが組合にとって重要な意味を持つとまでは認められず、組合に対して本件個別契約書の実際の作成日を伝えなかったことのみをもって、本件個別契約書を受け取ってからC 会社との団体交渉を開催するまでの間の組合の運営に、直ちに影響を与え得るとは言い難い。また、組合が主張するような、組合内部で拡大した不信や疑念が、具体的にいかなるものであったか、当委員会からの求釈明に対する回答からも明らかではなく、組合の主張を採用することはできない。
 したがって、Y会社が組合に対し、本件個別契約書を送付したことが、組合に対する支配介入に当たるとは認められない。
3 Y会社が令和2年2月5日の第1回調査期日において、労働条件通知書兼就業条件明示書を証拠として提出したことは、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点2)
 組合は、第1回調査証拠は、事後的に作成された虚偽の書面であり、提出によって組合内部の信頼関係が揺らぎ、組合の組織運営が大きく阻害されたと主張する。
 しかし、Y会社は、第1回調査証拠を提出する際、AとY会社との雇用契約の内容を立証する趣旨と説明し、また、本件審査手続における主張では、第1回調査証拠がAとの雇用契約の契約時又は更新時に作成したものではないと述べている。したがって、Y会社が第1回調査証拠を提出したことは、存在しない書面が存在しているかのように装って組合を欺こうとするものであるとは評価できない。
 したがって、第1回調査証拠が虚偽であると認めることはできないので、このような証拠の提出によって組合内部の信頼関係が揺らぎ、組合の組織運営が大きく阻害されるとはいえず、組合の主張は採用できない。よって、Y会社が第1回調査証拠を提出したことが、組合の運営に対する支配介入であるとは認められない。
  
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