労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委令和元年(不)第44号
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和3年1月19日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、団体交渉申入れに対し、大会開催手続など組合の内部運営についての具体的な説明を求め、その説明がないことを理由として団交に応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 東京都労働委員会は、労働組合法第7条2号及び第3号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、①誠実団交応諾、②組合が団交を申し入れたときは、組合が大会開催手続など組合の内部運営について具体的に説明しないことを理由に拒否してはならないことを命じた。 
命令主文  1 被申立人Y会社は、平成31年4月17日付け、25日付け及び令和元年5月1日付けで申立人X組合が申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 Y会社は、X組合が団体交渉を申し入れたときは、X組合が大会開催手続など組合の内部運営について具体的に説明しないことを理由に拒否してはならない。 
判断の要旨  1 組合の資格について
ア 労組法第2条の「自主性」の要件について
 組合の規約等によれば、使用者からの独立性は確保されており、ほかに使用者からの独立性を疑わせる事情は何ら存在していないのであるから、規約どおりの運用がなされていないことをもって、直ちに「自主性」を満たしていないとまではいうことができない。
イ 民主性の要件について
 労組法第5条第2項は、組合規約にこれらの事由を定めた規定を含むことを求めているものであって、規約どおりに運用がなされていないからといって、直ちに「民主性」の要件を満たしていないとまではいうことができない。そうでなければ、公権力が組合運営に立ち入ってその実施状況を調査することになり、組合自治に対する過剰な介入になると考えられたからである。
 したがって、組合の規約の記載内容そのものに労組法第5条第2項の不備がない以上、同条項の「民主性」の要件を欠いているともいえない。
2 団体交渉拒否について
 会社が問題視する組合の自主性や民主性に関する事項は、組合の内部運営に係る事項であるから、以下に述べるとおり、団交を拒否する理由にはならない。
ア 本件団交申入れ当時、組合の自主性に立ち入ってまで組合に説明を求める必要性は会社には存在しなかったこと
 本件団交申入れ当時、会社が出所の分からない伝聞や、ネット上の書き込み等から組合の法適合性について疑義を抱き、それが事実であれば、会社と組合の間の過去の36協定の有効性、各種協定の締結主体性、組合の代表者は誰かという問題に、将来影響が及ぶ可能性もあるというだけでは、会社にとってはこれまでと同じ交渉相手であるA委員長を代表者とする組合と会社との団体交渉の開催自体を否定すべき現実かつ具体的な事情があったとまでは認められない。
イ 組合を被告とする組合大会決議の不存在確認等の訴訟において会社が裁判所から訴訟告知を受けたとしても本件の結論には影響はないこと
 会社に利害関係はあるとしても、他組合からの協力要請や裁判所からの訴訟告知は、本件申立て後に行われたものであり、本件団交申入れ当時も、本件調査手続終了時も、争点となっている組合の大会開催手続等に係る事実の真偽は明らかになっておらず、ほかに組合の代表者の資格を否定し、正統に組合を継承している等の主張をしている団体等も存在していない。
 したがって、会社の従業員ではない一部の組合員が組合の大会開催手続に異を唱えていたというだけでは、これが直ちに上記アの判断を左右するものではない。
ウ A委員長名義による団交申入れに対し会社には団交応諾義務があること
 本件団交申入れ当時も、本件調査手続終了時も、争点となっている組合の大会開催手続等に係る事実の真偽は明らかになっておらず、ほかに組合が、B事業所の組合員のために、A委員長を代表者として、会社と団体交渉を行う立場にあることを疑うに足りる具体的な事情は存在していない。
 なお、組合が内部規約に違反して代議員を選出したとしても、それは単に内部規約違反であるにとどまり、その解決は組合の自主性に委ねられるべきものであるから、それが直ちにA委員長の代表者資格や組合の法適合性に影響を与えるものとはいえない。
3 支配介入について
 団交の開催自体を否定すべき現実かつ具体的な事情があったとまでは認められないにもかかわらず、会社は、組合に対し、組合の内部運営について具体的な説明を求めた上、ネット上の書き込みが事実であると解し、組合は36協定の締結主体にはならないものと理解すると回答するなどして組合の内部運営に立ち入った。これは、会社が、組合の自主的な組織運営・活動に介入し、組合の代表者資格を否定することにより組合を弱体化させる行為にほかならない。
 会社が、本件団交申入れに対し、大会開催手続など組合の内部運営についての具体的な説明を求め、その説明がないことを理由に団交に応じなかったことは、正当な理由のない団交の拒否に当たるとともに、組合の組織運営に対する支配介入にも該当する。 
掲載文献   

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