労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和元年(不)第38号 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和3年7月27日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①組合員1名に対し、社長室に呼びつけるなどして組合から脱退するよう勧奨し、その後組合を脱退させたこと、②組合員1名に対し、日常的に組合を批判する言動を行うなどして、組合から脱退するよう促したこと、③組合員5名に対し、昇格人事をもって組合脱退工作を行ったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労委は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、文書の手交及び掲示を命じた。 
命令主文  1 会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートル、横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、本社正面玄関付近及びC工場正面玄関付近の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
年 月 日 
X組合
 執行委員長A1様
Y会社       
代表取締役B1
 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1)元貴組合員1名に対し、貴組合を脱退するよう勧奨し、結果的に脱退に至らせたこと。
(2)貴組合員A3氏に対し、貴組合を脱退するよう勧奨したこと。
(3)元貴組合員4名を、貴組合脱退直後に昇格させたこと。
2 組合のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 平成31年4月23日付けでA2元組合員が組合を脱退したのは、会社からの働きかけによるものであり、組合に対する支配介入に当たると言えるか(争点1)
 A2元組合員が組合脱退届を提出したこと自体は、最終的には自らの意思であったとしても、31.4.17団交直後の社長の言動、31.4.18会話及び31.4.19会話を中心にした社長による連日の働きかけを受け、社長と意志疎通と図りながらなされたものであると見るのが相当である。
 このように、A2が組合脱退に至った経緯に加えて、当時は、会社が、組合に対する不当労働行為を繰り返していた時期であったことを併せ考えると、平成31年4月23日付けでA2が組合を脱退したのは、会社からの働きかけによるものであると言わざるを得ず、また、かかる会社の行為は、組合活動を委縮させ、ひいては組合を弱体化させるものであるから、組合に対する支配介入であり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
2 B2面談(31.4.3面談、1.5.28面談、1.6.6面談)におけるB2専務のA3組合員に対する発言は、会社による組合に対する支配介入に当たるか(争点2)
①31.4.3面談におけるB2専務の発言は、社内での昇進を示唆し、A3組合員に対し、早期の組合脱退を勧めるものであるといえる。
②1.5.28面談におけるB2の発言は、自身の個人的な思いとしつつ、社長が心配していたなど、社長すなわち会社の考えであることを印象づけた上で、A3に対し、早期の組合脱退を迫っているものであるといえる。
③1.6.6面談におけるB2の発言は、自らの人事上の権限を背景に、既に組合を脱退した者の氏名を具体的に挙げながら、組合に加入していることが昇格に不利に影響することを示唆した上で、A3に対し、早期の組合脱退を迫っているものといえる。
これらから、B面談におけるB2の発言は、A3に対し、組合に加入していれば、人事上の不利益を被るといった不安をあおり、脱退を勧める会社の行為であったとみるのが相当である。かかる発言は、会社による組合に対する支配介入であり、労働組合法第7条第3項に該当する不当労働行為である。
3 A4元組合員ら5名に対する、各人の組合脱退前後に行われた昇格人事は、組合に対する支配介入に当たるか(争点3)
(1)会社においては、人事異動に係る規定がない中で、不定期かつ相当頻繁に社員に対する人事発令がなされていることから、組合員、非組合員を問わず、社長による恣意的な人事が容易に行える状況にあるとみることができるが、その是非はともかく、このことをもって直ちに組合に対して影響があるとはいえない。
(2)次に、A4組合員ら5名に対する昇格人事の理由とその時期についてみる。
 会社は、社員の増員を図りたかったが、あいにく求人難の状況であったため、既存の社員の叱咤激励の一手段として、元組合員ら5名の昇格人事を行った旨主張するが、そもそも人事評価制度がなく、不定期かつ相当頻繁に社員に対する人事発令がなされている中で、求人難を理由とした叱咤激励の昇格人事の相当性について、直ちに評価することはできない。
(3)そこでA4ら5名について個別に検討するに〔注.これまでの人事発令、組合加入状況、昇格の理由、昇格人事と組合脱退時期との近接性など〕、A4、A5、A6、A7については、昇格人事と組合脱退には関係があったか、その疑いがあったといえる。
 一方、A8に対する昇格人事は、組合脱退と関連してなされたものとはいえないから、組合に対する支配介入に当たるとはいえない。
(4)会社は、昇格人事と組合脱退に関連がない理由として、組合と会社の間にはチェック・オフ協定が締結されており、会社が組合員の脱退を知るのは翌月の給与支払実績によってであることを挙げているが、会社が主張する時期よりも前に組合員の脱退を知る機会がなかったとはいえない。そうすると、組合脱退直後に昇格人事が行われた場合、会社が当該組合員の脱退と無関係に昇格人事を行ったとはいえず、かかる会社の主張は採用できない。
(5)ここで当時の労使関係についてみるに、A4、A5、A6及びA7が相次いで組合を脱退したのは、組合が不当労働行為救済申立てを行い、労使間に緊張関係が続く中、会社がA2元組合員やA3組合員に対して脱退勧奨を行う支配介入を繰り返し行なっていた時期であったといえる。
 以上を総合的に判断すると、A4、A5、A6及びA7の4名に対する昇格人事は、組合を脱退したことを受けてなされたものであると言わざるを得ず、かかる会社の行為は、組合活動をけん制するものであるとともに、他の組合員に動揺を与え、ひいては組合を弱体化させるものであるから、組合に対する支配介入であり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
 
掲載文献   

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