労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  福岡県労委令和2年(不)第2号 
申立人  X組合(A1組合A2支部。組合) 
被申立人  Y法人(法人) 
命令年月日  令和3年2月19日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①団交における休憩室及び院内保育所門前でのビラ配布を許可しない理由や具体的業務上の支障についての説明に係る法人の対応、②法人がビラ配布を許可しなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 福岡県労働委員会は、①について労働組合法第7条第2号、②について同条第3号にそれぞれ該当する不当労働行為であると判断し、法人に対し、(i)組合が申し入れた、ビラ配布を議題とする団交に、組合の提案に対して十分に検討して誠実に応じなければならないこと、(ⅱ)ビラ配布について、誠実な団交を経ないまま不許可とする対応をとってはならないことを命じた。 
命令主文  1 Y法人は、X組合が申し入れた、Y法人C1センターの休憩室及び院内保育所門前におけるビラ配布の許可を議題とする団体交渉に、組合の提案に対して十分に検討して誠実に応じなければならない。
2 Y法人は、Y法人C1センターの休憩室及び院内保育所門前におけるX組合のビラ配布について、主文第1項の誠実な団体交渉を経ないまま、不許可とする対応をとってはならない。 
判断の要旨  1 本件申立ては、却下事由に該当するか
 労働委員会規則33条1項5号にいう「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき」とは、被申立人とされた者が使用者に当たらないことが一見して明らかであるときや、申立人が不当労働行為であると主張する事実が何らの証拠調べを待たず申立書の記載自体からみて不当労働行為に該当しないことが明らかな場合をいうのであって、証拠調べの結果、そのような点が明らかになる場合を含まない。
 本件申立ては、証拠調べを行うことにより、不当労働行為に該当するか否かを判断する必要があるものであることから、同号の却下事由には該当せず、被申立人の主張は採用できない。
2 本件団交における病院の対応は労組法第7条第2号に該当するか
①誠実団交について
 団交において、使用者は、自己の主張を相手方が理解し、納得することを目指して、誠意をもって団交に当たらなければならず、組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示するなどし、また、組合からの要求や提案に対しては真摯に検討を行い、それらに対し譲歩することができないとしても、その論拠を示して反論するなどの努力をすべき義務がある。使用者には、このような誠実な対応を通じて、合意形成の可能性を模索する姿勢が求められる。
②休憩室でのビラ配布について
 組合が休憩室におけるビラ配布の際の配慮や時間設定の提案をしたにもかかわらず、団交における病院の対応は、組合からの要求や提案に対して十分な検討をしているとは認められず、譲歩できない場合に論拠を示して反論する努力をしているものとはいえない。
 よって、病院の団交における対応は、自己の主張を組合側が理解し納得することを目指して、誠意をもって団交に応じているものとは評価できない。
③院内保育所門前でのビラ配布について
 組合が院内保育所門前でのビラ配布について、対象を院内保育所の職員に限定したり、許可証を着用したりするなどの方法を示したにもかかわらず、本件団交における病院の対応は、組合からの要求や提案に対して十分な検討をしているとは認められず、譲歩できない場合に論拠を示して反論する努力をしているものとはいえない。
④不当労働行為の成否
 上記により、本件団交における病院の対応は、不誠実であるといわざるを得ず、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
3 病院が休憩室及び院内保育所門前でのビラ配布を許可しなかった行為は労働組合法第7条第3号に該当するか
①ビラ配布に関するルールについて
 一般に、ビラ配布は組合にとって重要な組合活動であり、本来ビラ配布に関するルールについては、団交の中で協議されるべきものである。
 本件においては、現在許可されている3箇所の通用口では、出勤時間帯が様々である病院の職員に対し、ビラを配布しきれないという事情や、院内保育所の職員に対し配布することができないという事情が認められる。
②休憩室及び院内保育所門前でのビラ配布について
 団交の中で休憩室や院内保育所門前でのビラ配布に係るルールについて協議が尽くされていない中で病院は、一律にビラ配布を制限しており、こうした病院の対応によって組合のビラ配布が阻害されていることが認められる。
③不当労働行為の成否
 上記のとおりビラ配布という組合活動が一定制限を受けていることは、本件団交における病院の対応が不誠実であったことに起因している。
 組合が休憩室及び院内保育所門前でのビラ配布を求める事情も考慮すると、病院が、十分な協議を経ないまま、それらの場所でのビラ配布を許可しなかった行為は、組合の組合活動を阻害するものであり、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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