概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京都労委令和元年(不)第75号
桜美林学園不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X1組合(X1組合)・同X2支部(X2組合) |
被申立人 |
Y法人(法人) |
命令年月日 |
令和3年4月20日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
|
事件概要 |
本件は、法人が、組合の団体交渉申入れに対し、団交ルール(出席人数及び使用言語)について合意に至っていないなどとして応じていないことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
東京都労働委員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、法人に対し、(i)組合らが申し入れた団体交渉について、出席人数に係る団体交渉ルールについて合意に至っていないことを理由に拒否してはならず、誠実に応じなければならないこと、(ⅱ)団体交渉申し入れ事項である英語プログラムの外部委託については義務的団体交渉事項には当たらないこと及び非常勤職員の労働条件への具体的影響が決まっていないことを理由に拒否してはならず、誠実に応じなければならないこと、及び(ⅲ)文書交付等を命じた。 |
命令主文 |
1 法人は、令和元年9月25日付けでX1組合及びX2組合が申し入れた団体交渉について、出席人数に係る団体交渉ルールについて合意に至っていないことを理由に拒否してはならず、誠実に応じなければならない。
2 法人は、令和元年9月25日付けの組合らの団体交渉申し入れ事項である英語プログラムの外部委託については義務的団体交渉事項には当たらないこと及び非常勤職員の労働条件への具体的影響が決まっていないことを理由に拒否してはならず、誠実に応じなければならない。
3 法人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を組合等に交付しなければならない。
記 年 月 日
X1組合
執行委員長 A1殿
X1組合X2支部
執行委員長 A2殿
Y法人
理事長 B
当法人が、令和元年9月25日付けで貴組合らが申し出た団体交渉に応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為と認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付した日を掲載すること。)
4 法人は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 |
判断の要旨 |
1 団交ルールについて
組合らと法人との間では、出席人数と使用言語に係る団交ルールの合意はなかったところ、団交ルールを事前に設置しなければ秩序のある団体交渉が開催できないような具体的な事情は認められない。
そして、法人は、組合らが譲歩案を提示していたにもかかわらず自らは一切譲歩せず、団交ルールが整えば団体交渉に応じるなどとして、団交ルールを議題とする団体交渉にも応じようとしなかったのであるから、法人が団体交渉を拒否したことに正当な理由があったということはできない。
2 義務的団体交渉事項等について
法人は、①組合らの交渉事項のうち、本件外部委託の決定の経緯については、経営事項であって義務的団体交渉事項ではない、②本件団体交渉申入れ時、本件外部委託による本件非常勤教員の労働条件への具体的影響が決まっておらず、法人の方針も定まっていなかったため、具体的な内容について交渉を行うことは困難であったと主張する。
しかし、本件外部委託について具体的な方針は定まっておらず、本件非常勤職員の労働条件への具体的な影響(雇止めや担当コマ数の増減等)までは明らかになっていなかったとしても、法人は、団体交渉に応じて、その時点で回答できる範囲内で、本件外部委託のスケジュール、組合員の労働条件に与える影響の見通し、具体的に雇止めの有無や担当コマ数の減少が明らかになる時期の見通し、本件外部委託以前の外部委託の状況等を説明するなどして、組合らの雇止めや担当コマ数の減少等に係る不安の解消に努める必要があったというべきである。
3 結論
以上のとおり、法人が本件団体交渉申入れに対し、団交ルール(出席人数及び使用言語)について合意に至っておらず、また、団体交渉申入事項である英語プログラムの外部委託について、決定の経緯は義務的団体交渉事項には当たらない、非常勤職員の労働条件への具体的影響が決まっていないとして応じていないことは、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たる。
4 救済方法について
使用言語については、本件申立て後に、組合らと法人との合意が成立していることを踏まえ、主文第1項及び第2項のとおり命ずることとする。 |
掲載文献 |
|