概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京都労委平成31年(不)第6号
大和製作所不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y会社(会社) |
命令年月日 |
令和3年2月2日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
平成30年7月7日、組合と会社は、組合員Aの29年度冬季一時金について5万円を上乗せするとの協定書を締結した。同年8月3日、会社は、Aの30年度夏季一時金の回答において、前回(29年度冬季一時金)と同じ金額という回答ではなく、前年度同期(29年度夏季一時金)と同じという回答をした。
本件は、①会社がAに係る30年度夏季一時金の回答において前回と同じ金額という趣旨の回答でなく、前年度同期と同じ金額という回答をするとともに、平成30年8月7日の団体交渉において、29年度冬季一時金に係る妥結額の上乗せ分を解決金であるとしたこと、②令和元年7月10日の団体交渉における同年度夏季一時金に係る会社側の対応が不当労働行為に当たる、として救済申立てがあった事案である。
東京都労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 会社が、平成30年度夏季一時金の回答において、前回と同じ金額という趣旨の回答ではなく、前年度同期と同じ金額という回答をするとともに、30年8月7日の団体交渉について、29年度冬季一時金に係る妥結額の上乗せ分を解決金であるとしたことは、組合との妥結の趣旨を事後的に変える支配介入、Aが組合員であることを理由とした不利益取扱い及び不誠実な団体交渉に当たるか否か(争点1)
(1) 30年7月7日付協定書(以下「協定書」)において、「組合員の平成26年度以降の夏季・冬季一時金支給にかかる一切の件(組合からの、組合員の平成26(2014)年度以降の一時金支給決定にあたり、会社が組合員に差別を行ったとの議題を含む。)について双方誠意をもって交渉を重ねた結果、・・・協定する」との前文の文言や、上乗せ分の支払先がAではなく組合であること、上乗せ分の支払いをもって本件を解決するとの文言など、上乗せ分が解決金の性格を有することをうかがわせる記載がされ、そして、翌年度以降の一時金の算出については記載がない。
そうすると、協定書の文言から、上乗せ分が29年度冬期一時金を構成するものであり、以後の一時金の支給額を算出する基準となるとの組合の主張を認めることはできない。
(2)会社が組合の要求内容に理解を示し、持ち帰り検討するとした経緯から、組合が、上乗せ分も含めた一時金額を以降の一時金の支給額を算出する基準とするとの要求が受け入れられたものと考えたことも理解できなくはない。しかし、会社が、団体交渉において、組合の要求内容に合意を示した事実は認められず、協定書には、翌年度以降の一時金の算出について何らの記載もされていない。
そうすると、会社がAの30年度夏季一時金について前年度同期と同じと回答したことは、組合との妥結の趣旨を事後的に変更したものとはいえないし、上乗せ分を反映させないために回答を変更したものということもできない。また、30年8月7日の団体交渉において会社が上乗せ分は解決金であると述べたことは、不当なものとはいえず、組合との構想経過を否定するものであったということもできない。
(3)したがって、Aの30年度夏季一時金についての会社の回答は、組合に対する支配介入及びAが組合員であることを理由とした不利益取扱いには当たらず、同年8月7日の団体交渉における会社の対応は、不誠実な団体交渉には当たらない。
2 令和元年7月10日の団体交渉における同年度夏季一時金に係る会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たるか否か(争点2)
上乗せ分について、組合の主張するような合意があったとはいえない以上、団体交渉における見解の相違は、組合と会社との上乗せ分についての認識の違いにすぎないから、会社が組合の見解を否定したことは、非難されるべきことではなく、組合との妥結の趣旨を事後的に変更したものともいえない。
さらに、この団体交渉において、上記以外に会社の対応が不誠実であったとの疎明はない。
したがって、7月10日の団体交渉における会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たらない。
3 以上の次第であるから、平成30年度夏季一時金の会社の回答、30年8月7日及び令和元年7月10日の団体交渉における会社の対応は、いずれも労働組合法第7条には該当しない。 |
掲載文献 |
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