労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成31年(不)第3号
あんしん財団(資料配付)不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y法人(法人) 
命令年月日  令和3年6月15日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、法人が、その3つの支局において、「ユニオンとは何か-その実態と対応方法ー」と題する資料(支局長会議の中で行われた研修の資料)を職員に配布し説明したことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 東京都労働委員会は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると判断し、文書の交付及び掲示等を命じた。 
命令主文  1 法人は、職員に対し、組合及びその組合員を法人に敵対する好ましくない存在であるなどと印象付ける内容の資料を配布し説明するなどして、組合の運営に支配介入してはならない。
2 法人は、本命令書受領の日から一週間以内に、下記内容の文書を組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、法人の本部及び各支局内の職員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
 年 月 日
  X組合
  執行委員長 A殿
Y法人   
理事長 B
 当法人が、平成31年1月15日に千葉支局において、同月16日に茨城局支局において、同月18日に西東京支局において、「ユニオンとは何か-その実態と対応方法-」を職員に配布し読み上げるなどして説明したことが、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注.年月日は、文書を交付又は掲示した日を記載すること。)
3 法人は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨  1 各支局において本件資料配布が行われた時期は、A2ら7名の配転をめぐって、東京地裁判決が出た後、法人及びA2が東京高裁に控訴し争われている中、組合が各支局で情宣活動を行うとともにさらなる活動を予告するなど、組合活動が活発化した時期であった。
2 本件資料の内容は、法人と組合との紛争が激しくなる時期において、本件資料を配付された一般の職員に対し、組合は、多額の金銭を要求するなど法人を攻撃し、法人と敵対する存在であり、社会的にも法人にとっても好ましくない存在であるとの印象を与えるものであったといえる。
3 各支局長が行った職員に対する本件資料の配付と説明は、法人の指示に基づいて行った法人の行為であると認められる。
4 以上のことから、各支局長が本件資料を職員に配布し読み上げて説明した行為は、職員に対し、組合は法人と敵対する存在であり、社会的にも法人にとっても好ましくない存在であるとの印象を与え、組合への敵対意識を醸成するものであり、また、組合員である職員に対しては、組合への不信感を抱かせ、組合活動への萎縮効果を与えるものであるから、組合の組織運営に対する支配介入に該当する。
5 法人は、本件研修は、組合の違法不当な情宣活動に対抗するためにやむを得ないものであったと主張するところ、組合の情宣活動に必ずしも適当とはいえない面があったとしても、それは組合との交渉や組合への抗議、あるいは訴訟による法的手段等により解決を図るべきものであり、組合の情宣活動への対抗手段として支配介入行為が許されるものではないので、法人の主張は採用することができない。
6 また、法人の行為は、正当防衛または正当防衛に類似する行為として違法性を阻却され、結果的に法人による支配介入の成立は否定されるとの法人の主張は独自の見解であり、採用することはできない。
 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地裁令和3年(行ウ)第379号 棄却 令和5年1月26日
東京高裁令和5年(行コ)第52号 棄却 令和5年8月2日
最高裁令和5年(行ツ)第380号・令和5年(行ヒ)第417号 上告棄却・上告不受理 令和6年1月25日
 
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