労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成31年(不)第25号
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和3年1月19日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、組合員A2を解雇後、組合からの解雇の撤回等を議題とした再度の団体交渉に応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 東京都労働委員会は、労働組合法第7条2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し誠実団交応諾を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 会社は、組合が平成31年3月4日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 団体交渉拒否について
(1)会社は、組合のすべての質問の要求は既に第1回団体交渉や継続中の訴訟等において回答済みであり、また、長期間、数々の訴訟と労働委員会の手続等で争われており、いずれかの譲歩により交渉が進展する見込みはなく、団体交渉を継続する余地はなくなっていた以上、団体交渉拒否の正当理由があると主張する。
 しかしながら、訴訟と不当労働行為審査手続と団体交渉とは、各々その目的や機能を異にするものであり、訴訟や労働委員会の手続の中で説明資料が提出されたからといって、団体交渉において誠実に説明する労働組合法上の義務が消滅するわけではない。また、訴訟等が係属していたとしても、別途、団体交渉において紛争を解決する余地がないとはいえず、団体交渉において双方が説明や主張を尽くした上で交渉が行き詰まりに達したといった事情がない限り、訴訟等における状況のみから、団体交渉を継続する余地がなくなったということはできない。そこで、本件団交申入書の議題に係る第1回団体交渉の状況等を検討する。
(2)本件団体交渉申入書の議題の中には、会社が相応の説明を行っているものや、議題とすることが適切とはいい難いものもあるが、労使双方が重大な議題であるとの認識を共有している5月31日付解雇に係る議題は、第1回団体交渉では実質的な交渉に入っておらず、今後交渉継続する余地があったということができる。加えて、その他の議題についても、会社が一定の説明を行っていることは認められるものの、今後の交渉の余地がないとまではいえず、また、いずれの議題も5月31日付解雇に係る議題との関連がないとはいえないことなどを考慮すると、本件団体交渉申入書の議題については、全体として、交渉が行き詰まりに達していたとはいえず、団体交渉を継続する余地が残されていたといういうべきである。
(3)ところで、組合は、第1回団体交渉の前後に、会社の取引先や取引銀行に対し、会社が違法行為及び不当配転や不当解雇等を行っている旨記載した文書を送付する一方、第1回団体交渉から約10か月後の31年3月4日まで第2回団体交渉の申入れを行っていない。本件において、会社ではなく、その取引先や取引銀行に対する働き掛けは、労働組合の情宣活動としてやや行き過ぎの面もあり、会社が組合の対応に不信感を抱くのも無理からぬところがある。加えて、第1回団体交渉の終了間際に、A1委員長が「じゃあもう全面的にこのまま、全面紛争ですね。我々の組合とも。」などと述べていたこと、組合が第1回団体交渉から約10か月団体交渉申入れを行っていなかったことなどを考え合わせると、会社が、組合との団体交渉の継続はもはや困難であると考えるのも理解できなくはない。
 しかし、組合の情宣活動に必ずしも適当とはいえないところがあったとしても、団体交渉の開催に支障が生じるような事情であったとまではいえない。また、第1回団体交渉から本件団体交渉の申入れまでに約10か月間の期間があったとしても、その間、訴訟手続等のA2をめぐる労使間のやり取りが行われていたのであり、本件交渉申入れが時機に遅れたものであるということはできない。
 したがって、会社が団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。
2 支配介入について
 会社が第2回団体交渉に応じなかったことは正当な理由のない団体交渉拒否に当たる、第1回団体交渉において会社が一定の説明を行っていたと認められることなども考慮すると、会社の団体交渉に応じなかったことが組合の弱体化を企図した支配介入にも当たるとまでは言えない。 
掲載文献   

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