労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成31年(不)第17号
WIN不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和3年3月16日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合の組合員A1が勤務していたD店舗を経営していた会社が、同人の未払賃金等を議題とする団体交渉に応じなかったことが不当労働行為に当たる、として申立てがなされた事案である。
 東京都労働委員会は、会社に対し、誠実団交応諾、文書交付等を命じた。
 なお、会社は、本件審査手続に一切応じず、主張書面や証拠を提出していない。 
命令主文  1 会社は、組合が申し入れたA1に係る未払賃金等を議題とする団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を組合に交付しなければならない。
 年 月 日
X組合
共同代表 A2殿
Y会社   
代表社員B
 A1に係る未払賃金等を議題とする貴組合の団体交渉申入れに会社が応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注.年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨  1 会社は、本件審査手続に一切応じず、主張書面や証拠を提出していないが、A1は会社が経営するC店舗において「A1②」という源氏名で勤務していたこと、D店舗において会社所在地及び「D〔注.アルファベット〕」の標記とともに宛名に「A1②殿」と記載された「給与支払明細書」と題する文書を受領していたことからすると、D店舗において勤務していたA1の使用者は、会社であるということができる。
 会社は、平成30年9月頃にD店舗を閉店し、9月分賃金をA1に支払わなかったことから、会社とA1との間には、未払賃金等の問題が未精算のまま残されていたといえる。
2 C2弁護士と組合との間でA1の未払賃金問題等に関する協議が行われたが、同弁護士はC1の代理人として協議しており、A1のD店舗勤務時の会社の代表社員であったC1が、自らA1の未払賃金問題等の解決を図ろうとしたものと推測される。協議に当たり、BがC2弁護士に事情を説明したことはうかがわれるものの、同弁護士が本事件の処理につきBから受任していないと述べた旨をA3元組合代表が述べていることからすると、同弁護士が会社の代理人として組合と協議したとみることはできない。 
3 会社の元代表役員であるC1が、個人的にA1の未払賃金問題等の解決に向けてC2弁護士を代理人として組合と協議していたとしても、本来、この問題について組合との団体交渉に応ずる立場にある会社が、団体交渉応諾義務を免れるものではないし、C1の代理人であるC2弁護士と組合との協議が頓挫した場合、最終的に、組合との団体交渉によりこの問題の解決を図る立場にあるのは会社であるというべきである。
4 したがって、組合が、C2弁護士との協議と平行して、会社に対し、令和元年9月5日付け文書によりA1の未払賃金問題等に関する団体交渉を申し入れ、同月16日及び11月11日には、口頭で団体交渉に応ずるよう申し入れたのは、もっともなことであり、9月16日に、組合のA3元代表の「Bさんが別途話し合いに応じて下さるということは、今のところ考えていないということですか。」との問い掛けに対し、Bが「そうですね。僕は一切ノータッチですから」などと回答するなどして、組合の団体交渉申入れに会社が応じていないことに、正当な理由は認められない。また、会社は、本件審査手続に一切応じず、主張書面や証拠を提出していないことから、他に、会社が団体交渉に応じなかったことに正当な理由があったと認めるに足りる事情があったということもできない。
5 会社は、D店舗において勤務していたA1の使用者であり、同人の未払賃金問題等に関する団体交渉に応ずべき立場にあったところ、組合の再三にわたる同議題に関する団体交渉申入れに応じておらず、そのことに正当な理由は認められないのであるから、会社が、A1の未払賃金等を議題とする団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約273KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。