労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  愛知県労委令和元年(不)第5号・2年(不)第1号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和3年2月8日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①組合に対して組合事務所等のための会社施設の供与及び組合員の給与からの組合費の天引き(チェックオフ)を認めなかったこと、②組合から脱退することを条件として組合員に携帯電話を供与したこと、③組合からの団体交渉の申入れを拒否したこと、④その他が不当労働行為に当たる、として令和元年7月25日から2年1月14日までの間に救済申立てがなされた事案である。
 愛知県労働委員会は、申立てを棄却した。
 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社は組合からの組合掲示板の設置、会議室の共有およびチェックオフにかかる要求を拒んだか。当該行為は、労組法第7条第1号、第3号及び第4号の不当労働行為に当たるか。
〔組合事務所等に係る会社施設の供与要求について〕
 使用者がその施設の利用を労働組合に許諾するかどうかは、原則として使用者の自由な判断に委ねられており、その理由を利用を許さないことが当該施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合には、労組法第7条第3号に規定する不当労働行為となり得るところ、会社について特段の事情があったと認めるに足る疎明はない。
 組合は、会社が組合掲示板の設置及び会議室の供与の要求について応じなかったことを労組法第7条第1号及び第4号にも該当する旨主張するが、組合への不利益性についての具体的な主張や疎明はない。
〔チェックオフの要求について〕
 組合費はもともと労働組合が自らの手で徴収すべきものであって、使用者として労働組合からのチェックオフの要求に応じる義務があるわけではなく、使用者が当該要求に応じないことが組合の運営に対する干渉又は組合の弱体化を図ったものと認められるような場合を除き、労組法第7条第3号に規定する不当労働行為とならないところ、会社が組合の運営に対する干渉又は組合の弱体化を図ったと認めるに足る疎明はない。
 組合は、会社がチェックオフの要求について応じなかったことを労組法第7条第1号及び第4号にも該当する旨主張するが、組合への不利益性についての具体的な主張や疎明はない。
2 会社による以下の行為があったか。当該行為は労組法第7条第1号、第3号及び第4号の不当労働行為に当たるか。
①組合員とされるA1に対し、携帯電話を供与して組合からの脱退を促したこと。
 A1が組合員であったとを認めるに足る疎明はないことから、電話の貸与がA1に対して組合からの脱退を促したものであるとはいえない。
②組合員とされるA2に対し、有給休暇を取得するよう会社の社員の前で罵倒したこと。
③A3元委員長及びA2に対し、不利益となる業務命令を行ったこと。
④A3元委員長との間の雇用契約を一方的に破棄したこと。
⑤A3元委員長ないしA2に対し、別の不当労働行為救済申立事件に係る申立てについて取下げ等するよう強要したこと。
 これら行為を認めるに足る疎明はないことから、会社による当該行為があったとは認められない。したがって、本争点に係る不当労働行為該当性について判断するまでもない。
3 組合の令和元年9月1日付け、同月9日付け、同月16日付け及び同月23日付けの団交申入れに対する会社の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。
 組合が会社に送付した各書面の記載内容を見るに、多岐にわたる事象が脈絡なく羅列されていて組合の要求や主張の要点が判然とせず、会社が団交の議題として理解するには困難なものであったといえる。
 会社の対応は、組合に促すことによって議論を整理した上で団交の開催を模索したものと評価するのが相当であり、会社が団交申入れを拒否したとはいえない。また、組合と会社との間で団交が開催されなかった理由は、会社からの団交の議題の整理に係る要請に対し、組合が申出書において、いずれも当該要請に回答することなく、一方的で判然としない要求や主張をしたことによるものであるといえる。
 したがって、これら団交申し入れに対する会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。
 
掲載文献   

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