労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和元年(不)第40号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y法人(法人) 
命令年月日  令和3年2月5日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、法人が組合との協議を行わないまま就業規則を改定したことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合は、法人が組合に対し、平成31年3月18日に改定就業規則を送付し変更の「お知らせ」をしたのみで、協議はおろか説明の機会すら設けようとしなかったことは、組合を無力化し、労組法第7条第3号の支配介入に当たると主張するところ、以下、就業規則の改定に関する経緯等について具体的に検討する。
2 就業規則の改定に関する法人から組合への通知について
 法人は改定就業規則施行の2週間ほど前に、組合に対し、就業規則を改定するという予定及び改定就業規則の全文のみを通知しており、組合の求めに応じた新旧対照書面の送付は、施行の約3ヶ月後であった。
 この点、確かに、法人から組合への就業規則改定に関する通知の手順は、丁寧さに欠けることは否めないが、少なくとも、この通知によって組合は改定の予定及びその内容を事前に知ることができ、31.3.22団交における就業規則のやり取りの端緒になったといえる。
 また、法人は、従業員に対する説明会の実施に先んじて、組合に対して改定就業規則の全文を提示したといえる。
3 31.3.22団交は就業規則の改定に係る協議の機会であったといえるか
 31.3.22団交では、就業規則の改定は、当初の議題とはなっていなかったものの、事前に送付されていた改定就業規則をもとに、非常勤職員について定年が設けられたことへの問題意識や、変更内容についての説明や資料が必要な旨指摘した上で、法人から組合に団交を申し入れることを求めており、法人が「また申入れします」と答えていることから、その限りにおいては、一定やりとりが行われ、法人が団交申入れを行うことを約したといえる。
4 平成31年3月中に、法人から団交を申し入れ、団交を開催すべき事情があったかどうか
 組合と法人との間で、団交申入れをは法人から行わなければならないというルールや慣行は存在しないものの、本件申立てに係る就業規則の改定については、法人が31.3.22団交において「また申入れします」と約したことから、法人から申し入れることが予定されていたといえ、法人は、早急に申入れについての手続を進める必要があったといえる。
 しかしながら、組合による31,3.28要請書には、3月中に法人が団交を申し入れなければならないといった具体的な期限に関する記載はなく、その後4月1日の改定就業規則の施行までの間や、施行後初めて開催された3.4.26団交前において、法人が団交を申し入れないことについて、組合から抗議が行われたという事実の疎明はない。このように、組合の姿勢も、31.3.22団交後、早急に改定就業規則に係る団交を開催するように法人に対して積極的に求めるものでなかったといわざるを得ない。
5 平成31年4月1日以降の法人の対応について
 改定就業規則の施行以降、組合と法人との間で就業規則の改定について団交が重ねられ、その具体的な内容について協議が継続して行われていたといえる。
6 本来、就業規則の改定に係る団交等組合との協議は、改定就業規則の施行前の3月中に行われるべきであるのはいうまでもない。
 しかしながら、上記2から5までの判断を総合して勘案すると、法人が3月中に団交を申し入れなかったことが、組合の運営や活動に打撃を与え弱体化させるものであったとまではいえず、また、そもそも組合の弱体化について具体的な事実の疎明もないため、法人が改定就業規則を平成31年4月1日から施行したことは、労働組合法第7条第3号に規定する不当労働行為とまではいえない。 
掲載文献   

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