労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和元年(不)第33号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和3年1月22日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合の分会結成後、組合と会社の間で団体交渉が継続していたところ、会社が、3回目の団体交渉が予定されていた当日の午前中に突然、分会長を懲戒解雇処分としたことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
大阪府労働委員会は、会社に対し、労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、原職復帰及びバックペイとともに、文書の手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員A2に対する令和元年6月20日付けの懲戒解雇処分がなかったものとして取り扱い、同人に対し、懲戒解雇処分の日から就労させるまでの間に得られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1様
会社         
代表取締役 B
 当社が、貴組合員A2氏を令和元年6月20日付けで懲戒解雇処分としたことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨  争点(会社が、A2分会長に対し本件懲戒解雇処分をしたことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。)
1 まず、本件懲戒解雇処分の理由の合理性についてみる。
ア 本件懲戒解雇処分の理由の根拠とされた事実は、①A2分会長が本件解体下架工事においてC1社から支払われたスクラップ代金の一部を着服、横領したこと、②A2分会長がC2社から購入した電器製品の代金を、架空の請求書等を利用して会社から詐取したこと、の2点であったということができる。
イ また、A2分会長が、本件解体下架工事においてC1社から支払われたスクラップ代金の一部をC3次長から受け取ったこと及び女子更衣室に置くための電器製品について工具を購入した形での手続をしたことが、事実として認められる。
ウそこで、A2分会長が、本件解体下架工事においてC1社から支払われたスクラップ代金の一部をC3次長から受け取ったことが着服、横領に、また女子更衣室に置くための電器製品について工具を購入した形での手続をしたことが代金の詐取に、それぞれ当たるとした会社の判断の妥当性についてみる。
(ア)本件解体下架工事においてC1社から支払われたスクラップ代金の一部をC3次長から受け取ったことについて
 A2分会長が本件解体下架工事においてC1社から支払われたスクラップ代金の一部をC3次長から受け取ったことが、懲戒解雇処分に値する着服、横領であると判断するには、なお証拠不十分であると言わざるを得ず、そうした会社の判断が妥当であるかどうかについては、疑問の残るところである。
(イ)女子更衣室に置くための電器製品について工具を購入した形での手続をしたことについて
 A2分会長が女子更衣室に置くための電器製品について工具を購入した形での購入手続をしたことが代金の詐取に当たるとする会社の判断が妥当であるかについても、疑問の残るところである。
エ さらに、会社は、前記(ア)、(イ)記載のA2分会長の行為について、それぞれ着服、横領行為及び詐欺行為でありいずれも刑法上の犯罪行為であるから、これらを理由とする本件懲戒解雇処分が相当であることは明らかであると主張するが、会社がA2分会長をこれらの行為について刑事告発をしたと認めるに足る事実の疎明はないのであり、会社が、実際に、本件懲戒解雇処分を決定するに当たってA2分会長の上記行為が刑法上の犯罪行為に当たると判断したのかどうかは、極めて疑問である。
オ 以上のことからすると、本件懲戒解雇処分の理由に合理性があるかについては、相当の疑問が残るものと言わざるを得ない。
2 次に、本件懲戒解雇処分の手続の合理性についてみる。
ア この時期、会社においても懲戒処分の対象者に対して、処分前に事実確認のための事情聴取を行うのが通常であるとみられるところ、A2分会長に対してだけは、懲戒処分としては最も重い懲戒解雇処分であるにもかかわらず、本件懲戒処分通知書の交付前に事情聴取が行われていないということができる。
イ 本件懲戒解雇処分の手続について、適式に行われたものとはいえず、合理性を欠くものであったと言わざるを得ない。
3 次に、本件懲戒解雇処分と他の従業員に対する懲戒処分との均衡についてみる。
 A2分会長に対する本件懲戒解雇処分と、組合の組合員でないその他の4名の従業員に対する処分との間には、その理由及び手続に関して不均衡が存在するものと言わざるを得ない。
4 ここで、本件懲戒解雇処分の時点における労使関係についてみる。
 組合が会社に分会の結成を通知してから会社が本件懲戒解雇処分を決定するに至るまでの間の労使関係は、労使関係の運営に係る事項を中心に団交において労使の主張が対立する状況が解消されない中で、会社が組合に対して、一方的に、否定的な感情及び警戒感を抱く状況にあったものとみざるを得ない。
5 さらに、会社が本件懲戒解雇処分をA2分会長に通知したのが第3回団交当日の朝であったことが認められる。
 一方で、会社が、組合が会社に分会の結成を通知してから会社が本件懲戒解雇処分を決定するに至るまでの間に、組合に対して否定的な感情及び警戒感を抱いていたものとみざるを得ないことは、前記4判断のとおりであるから、本件懲戒解雇処分のA2分会長に対する通知は、当日後刻に行われる第3回団交を意識してなされたものと推認することができる。
6 最後に、本件懲戒解雇処分と組合結成との時期的関係についてみる。
ア 本件懲戒解雇処分は、組合が会社に分会結成を通知してから3か月足らずという極めて近接した時期になされたことが認められる。
イ また、①平成31年3月28日にB社長が会社の女子更衣室に入室し、冷蔵庫、ホームベーカリー等が置かれているのを現認したこと、②同月30日、B社長がC3次長に対して事情聴取を行い、スクラップ代金の取扱い及び女子更衣室に置かれた電器製品について尋ねたこと、が認められる一方、これより前に、会社が、本件懲戒解雇処分の理由とされた事実について調査のための具体的行動を起こしたとは認められない。そうすると、会社は、平成31年3月27日の組合結成の翌日から、上記事実についての調査を開始し、本件懲戒解雇処分に向けて準備を始めたものとみるのが相当である。
7 以上を総合的に判断すると、本件懲戒解雇処分は、団交において労使関係の運営に係る事項を中心に労使間の主張の相違が解消されない中で、会社が組合に対して一方的に否定的な感情及び警戒感を抱いている状況において、当日行われる予定の第3回団交を意識してA2分会長に通知され、かつ、分会結成通知の翌日から準備を始めて、3か月足らずという極めて近接した時期になされ、その理由の合理性については疑問が残り、その手続が合理性を欠き、さらに、その結果として、組合員でない他の4名の従業員に対する処分との間には大きな不均衡が存在するのであるから、会社の不当労働行為意思に基づいてなされたものとみるべきであって、組合員であるが故の不利益取扱いに当たり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。
8 また、第3回団交の時点において、労使関係の運営に係る事項を中心に団交において労使間の主張の相違が解消されない状況にあったことは前記4判断のとおりである。かかる状況において、団交開催の当日に分会長に対する懲戒解雇処分がなされれば、分会の中心的存在であるA2分会長がいわば不意打ちで職場を追われることとなり、団交における組合の交渉力が低下することは明らかであるから、本件懲戒解雇処分は、組合の影響力を減殺するものとして、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。


 
掲載文献   

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