労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和2年(不)第3号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年12月8日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、組合員1名に対するパワーハラスメントに係る組合からの団体交渉申入れについて、2度は団体交渉に応じたものの、同議題についての3度目の団体交渉申入れに対して、団体交渉に応じなかったこと、が不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、会社に対し、正当な理由のない団交拒否に当たる不当労働行為であるとして、文書の手交を命じた。 
命令主文   被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
会社        
代表取締役 B
 当社が、貴組合から令和元年12月7日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨  〇争点(1.12.7本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか)
1 ①1.7.20団交申入れを受けて開催された1.8.10第1回団交及び1.10.2団交申入れを受けて開催された1.11.2第2回団交において、C従業員のA2組合員に対するパワハラ等についての交渉等が行われていたこと、②第2回団交における、組合の要望に対し、会社は1.11.30会社回答書でパワハラ等への対応に関して回答したこと、③本件団交申入書には、1.11.30会社回答書を受け、また、その後のパワハラの事実確認について団交を申し入れる旨等が記載されていたことが認められる。
 以上のことからすると、本件団交申入れの要求事項は、C従業員のA2組合員に対するパワハラ等について会社に対処を求めるものであったとみることができ、組合の申入事項は、組合員の労働環境改善という労働条件に関する事項であって、また、使用者の処分可能な事項であるから、義務的団交事項であるといえる。
 したがって、会社が正当な理由なく、本件団交申入れに応じなければ、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為となる。
2 本件団交申入れについて、本件申立てまでの間、会社が団交に応じていないことが認められ、これについて当事者間に争いはない。
 この点、会社は、団交に応じなかったことの正当な理由として、①本件団交申入れがなされた令和元年12月の時点において第3回団交を開催しても、期日が空転するだけで終わることは明らかであったこと、②本件団交申入れがなされた段階で、会社は、事実解明のため実際に労働審判手続の申立てを行い、組合及びA2組合員の主張に係る事実確定のために努力を行ったことを主張するので、以下これらについて検討する。
ア まず、会社主張①についてみる。
 本件団交申入れの要求事項について、会社は、①組合の3点の要求事項((i)労使委員会の開催、(ii)組合とのパワハラ禁止協定の締結、(iii)C従業員の団交出席の可否と出席しない場合はその理由を述べること)等については、第2回団交後、1.11.30会社回答書により会社の見解を回答している状態に過ぎず、その内容も十分なものとはいえない上、また、②「その後のパワハラの事実確認等」という要求事項については、事実の確認すら行っていないといえ、①及び②共に交渉を通じて十分に協議が尽くされ、団交が行き詰まり、進展の見込みがないというような状態には至っていないとみることができる。
 そうすると、会社は、①組合の3点の要求事項については、たとえ開催される団交において、1.11.30会社回答書で回答した内容と同じ回答を行う可能性が高いと見込まれる状況であったとしても、組合から団交の申入れがあれば、団交においてその理由等をより詳細に説明すべきであり、また、②第2回団交以降の新たなパワハラの事実確認等に関しては、まずは団交において、事情や状況等の確認を行い、協議をすべきであったといえる。そのように協議が尽くされているとはいえない状況で、会社が、組合及びA2組合員の主張について、会社が望む資料の開示等が組合から行われておらず真否の確認ができていないとして、本件団交申入れ時点で団交が空転すると判断したことは、会社の一方的な判断であったといわざるを得ず、会社主張①は、採用できない。
イ 次に、会社主張②についてみる。
 会社は、1.12.31会社回答書において、組合に対し、パワハラの事実の存否を明らかにするためとして労働審判手続の申立てを行う旨を通知し、実際にその後2.1.6労働審判申立てを行っているが、団交は、その制度の趣旨からみて、労働組合と使用者が労働条件その他の待遇又は労使関係上のルールについて合意を達成することを主たる目的として交渉を行うものであり、労働審判が係属中であっても労使双方が自主的に団交において問題を解決することは可能であるから、労働審判手続の申立てをしていることが団交を行うことを妨げるものではなく、労働審判を申し立てていることは団交を拒否する正当な理由とはなり得ない。
 したがって、会社主張②は、採用できない。
3 なお、令和2年3月5日、会社は、2.1.6労働審判申立てを取下げ、同年4月8日、組合と会社との間で2.4.8第3回団交が開催されたことが認められるものの、これは、本件申立て以降の対応であり、団交の開催については、被救済利益の存否に係る事実ではあるが、このことをもって、本件団交申入れに対する会社の対応が、不当労働行為に当たらないとまではいえない。むしろ、会社が2.1.6労働審判申立てを取り下げたということは、この労働審判手続の申立て自体が事実の存否の解明に寄与しなかったといえる。
 そして、組合の請求する救済内容が、団交応諾ではなく「謝罪文の手交及び再発防止の誓約」である以上、本件申立て以後の団交応諾をもって被救済利益が消滅したということはできない。
4 以上のとおりであるから、本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
  
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