労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神奈川県労委平成29年(不)第37号
横浜自動車学校不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合(「本部組合」)・X2組合(「支部組合」)・X3(個 人) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年10月6日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①支部組合の支部長であるX3を配置転換し、教 習指導員に復帰させないこと、②X3支部長の自動車通勤を禁止したこと、③本部組合及び支部組合の、X3支部長の教習指導員 復帰等を議題とする団体交渉申入れを拒否したこと、④平成29年夏季賞与の査定において支部組合の組合員を差別的に扱ったこ と、及び⑤X3支部長や支部組合に対して差別的扱いをすることや、組合らからの団体交渉申入れを拒否することにより、組合ら に対して支配介入を行ったことが、①、②及び④については労働組合法第7条第1号に、③については同条第2号に、⑤について は同条第3号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。
 また、⑥会社が平成30年9月29日以降、支部組合が従前より組合事務所として利用してきたスペースに会社備品を運び入れ て設置していることが、労組法第7条第3号及び第4号に該当する不当労働行為であるとして、平成31年1月18日付けで追加 申立てを行った。
 神奈川県労働委員会は、会社に対し、①(及び⑤)の一部について労組法第7条第1号及び第3号、③(及び⑤)について同条 第2号及び第3号並びに⑥について同条第3号にそれぞれ該当する不当労働行為であるとして、不利益取扱いの禁止、団交応諾及 び支配介入の禁止とともに、文書の手交・掲示を命じ、その他の申立てを却下・棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人X3に対してコース整備業務を命じるという不利益取扱いをしてはならない。
2 被申立人は、申立人ら執行部全員がドライブレコーダーの映像を視聴していないことを理由としたり、出席人数について一方的に条件を付したりすることにより、団体交渉を拒否 してはならない。
3 被申立人は、申立人支部組合が利用していたスペースを平成30年9月28日の状態に戻さなければならない。
4 被申立人は、本命令受領後、速やかに下記の文書を申立人らに手交するとともに、下記の文書の内容を縦1メートル、横2メートルの白色用紙に明瞭に認識することができる大き さの楷書で記載した上で、被申立人事業所内の従業員の見やすい場所に毀損することなく 10日間掲示しなければならない。
 当社による、①貴支部組合のX3支部長にコース整備業務を命じていること、②貴支部組合が行った平成29年1月26日付け 団体交渉申入れから、平成29年4月8日の団体交渉までの当社の一連の対応及び③当社が平成30年9月29日以降、貴支部組 合が利用しているスペースに会社備品を運び入れたことは、①については労働組合法第7条第1号及び第3号に、②については同 条第2号及び第3号に、③については同条第3号に該当する不当労働行為であると神奈川県労働委員会において認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
  令和 年 月 日
本部組合
  執行委員長 A 殿
支部組合
 支 部 長 X3 殿
        X3 殿
会社        
代表取締役 B
5 被申立人が申立人X3を平成28年1月6日付け辞令により配置転換したことに係る申立てを却下する。
6 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 会社がX3支部長を、平成27年9月2日以降教習指導員に復帰 させないこと及び平成28年1月6日付け辞令により配置転換したことは、組合員であることを理由とする不利益取扱い及び組合 らの運営に対する支配介入に当たるか否か。(争点1)
ア 本争点の審査対象
 会社は、平成27年9月2日以降、X3支部長を教習指導業務から外し、平成28年1月6日付けで総務部に配置転換した。
 本件申立てが行われたのは平成29年12月28日であり、本件配置転換については1年の除斥期間が経過しているため、「平 成28年1月6日付け辞令により配置転換したこと」に係る申立ては却下を免れず、本件の審査対象とはならない。
 一方、本件配置転換後、会社は、度重なる組合らの要求にも応じることなく、X3支部長を教習指導員に復帰させず、同人に コース整備業務及び高齢者講習に関する業務を命じている(「本件配置転換後の処遇」)。そして、組合らは、本件申立てにおい て、請求する救済内容として「草むしり等の雑務を担当させる差別的処遇を止め、同人の本来業務である教習指導員に復職させる こと」を求めており、本件配置転換後の会社の同人に対する処遇を審査対象とするのが相当である。そこで、以下、会社のX3支 部長に対する本件配置転換後の処遇が不当労働行為に該当するか否かについて、判断する。
イ 不当労働行為該当性
 会社がX3支部長に対してコース整備業務を命じ続けていることには、業務上の必要性がなく合理性が認められず、同人主導の 組合活動に対する会社の嫌悪の意思が推認され、こうした推認を覆すほどの特段の事情は認められないことから、同業務を命じ続 けていることは会社の不当労働行為意思に基づくものと認めることが適当である。
 よって、会社がX3支部長にコース整備業務を命じていることは不利益取扱いであり、労組法第7条第1号の不当労働行為に該 当する。
 また、支部組合の組合活動を主導するX3支部長に対する不利益取扱いは、そこに属する組合員に対して組合活動を委縮させる おそれがあるだけでなく、支部組合に加入しようとする者に対してもこれを躊躇させることになるから、組合の運営に対する支配 介入行為であるといえ、したがって、X3支部長にコ一ス整備業務を命じていることは、労組法第7条第3号の不当労働行為にも 該当する。
 一方、X3支部長を教習指導員に復帰させていないこと及び高齢者講習に関する業務については合理的な理由が認められる。し たがって、X3支部長に対する会社の組合嫌悪の意思が推認できるとしても、会社が組合員であることを理由に同人を教習指導員 に復帰させていないとはいえず、また、高齢者講習に関する業務を命じているともいえないから、不当労働行為には該当しない。
2 会社が平成28年1月7日以降、X3支部長に対し車通勤を禁止していることは、組合員であることを理由とする不利益取扱 い及び組合らの運営に対する支配介入に当たるか否か。(争点2)
ア 除斥期間
 平成28年1月7日以降、会社はX3支部長の車通勤を禁止し、その後組合らは同人の車通勤禁止の解除を要求し続けている が、会社はこの要求に応じていない。申立人らが本件申立てをしたのは平成29年12月28日であり、会社が車通勤を禁止して から本件申立てまで1年以上が経過しているが、支部組合はX3支部長の車通勤禁止の解除を平成29年1月26日以降も要求し 続けており、会社は、その都度、車通勤の禁止を命じ続けているといえるから、本争点は却下すべき事案には当たらない。
イ 不利益性
 就業規則には通勤方法に関する規定はなく、会社の業務に支障が生じない限度で従業員が自由に通勤方法を選択していたことが 推認できる。よって、会社のX3支部長に対する車通勤の禁止に合理的な理由がなければ、同人は会社において差別的な処遇を受 けていることとなる。また、X3支部長が私傷病により車通勤が望ましいとの診断を受けた際も、会社は同人の車通勤を認めてい ない。こうしたことから、車通勤の禁止について、X3支部長に不利益が認められる。
ウ 車通勤禁止の合理性
 会社は、X3支部長の車通動を禁止した理由として、会社がX3支部長の常習的な居眠り運転の実態を把握しておきながら車通 勤を認めてしまうと、万が一事故が起きた場合に使用者責任を問われるおそれがあることを主張する。
 しかし、産業医報告書及び医療機関の診断結果に対する会社の対応は不十分であった。
 一方で、本件事故(教習生の運転する車による教習所敷地内にある車庫に衝突する事故)以前及び本件事故当時のX3支部長の 目を閉じたり俯いたりしていた状態における原因は明らかにされていない。そして、産業医が、X3支部長に瞬間的な「意識消 失」や「点頭てんかん」の疑いがあると会社に報告していることから、会社がこのような事情を重要視し、通動中の事故を懸念 し、同人の車通勤を禁止していることには相応の理由があるといえる。ましてや、会社は自動車教習を本業としているのであるか ら、従業員が交通事故を引き起こす可能性のある行為については慎重な対応となるのもやむを得ないといえる。したがって、X3 支部長に対し、会社との関係においては一切運転に携わることを認めないといった厳格でかつ一貫した姿勢をとったことも、本件 事故が起きた経緯及び会社の業務に照らせば、無理からぬことであるといえる。
エ 不当労働行為該当性
 以上のとおり、会社が平成28年1月7日以降、X3支部長に対し車通勤を禁止していることは、自動車教習を本業とする会社 にとって無理からぬ対応であったといえるから、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるとはいえず、労組法 第7条第1号の不当労働行為には該当しない。
 また、会社がX3支部長に対する車通勤を禁止していることにより、組合らの活動が弱体化するおそれがあるとは認められない ため、組合の組織又は運営に対して支配介入があったとはいえず、労組法第7条第3号の不当労働行為にも該当しない。
3 X3支部長の教習指導員への復帰及び同人の車通勤禁止について組合らが申し入れた団体交渉の開催に対する、一連の会社の 対応は労組法第7条第2号に該当する不当労働行為及び組合らの運営に対する支配介入に当たるか否か。(争点3)
ア 本争点の審査対象
 本件申立てが行われたのは平成29年12月28日であるところ、除斥期間により、本件申立てより前の1年以内に支部組合が 申し入れた、29.1.26団交申入れ及びその後の団体交渉申入れに対する会社の一連の対応を、本争点の審査対象とし、以 下、このことが不当労働行為に該当するか否かについて、判断する。
イ 平成29年4月8日の団体交渉開催に至るまでの会社の対応
(ア)平成27年11月18日の団体交渉後、支部組合は、平成28年1月26日に団体交渉を申し入れてから、約1年2か月の 間、12回にわたってX3支部長の教習指導員への復帰や同人の車通動禁止の解除を主な議題とする団体交渉を会社に申し入れて いる。会社は、これらの申入れに対し、①支部組合の執行部8名全員が、本件事故前のX3支部長の教習指導中のドライブレコー ダーの映像を視聴していないこと、②支部組合執行部の1名が団体交渉開催予定日に休暇届を提出したことを理由に応じていな い。
 そして、29.1.26団交申入れ後も、組合らは一貫してX3支部長の教習指導員への復帰や同人の車通勤禁止の解除を主な 議題とする団体交渉を申し入れているところ、会社は、団体交渉開催の前提として、支部組合に対し、上記①及び②のことを求め ている。
(イ)確かに、団体交渉の議題であるX3支部長の教習指導員への復帰及び同人の車通勤禁止の解除の問題の発端は本件事故及び 同人の教習指導態度であることから、今後の同人の処遇を協議するに当たり、支部組合執行部全員が同人の教習指導中のドライブ レコーダーの映像を視聴し、教習指導が適切であったか否かについて共通認識を抱いていたほうが、実のある団体交渉になるとい う会社の主張も理解できなくはない。
 しかし、会社が、ドライブレコーダ一の映像の視聴が団体交渉開催に不可欠であると考えるならば、団体交渉の場で労使同席の もとその映像を視聴することも可能であったし、支部組合はドライブレコーダーの映像を視聴した者で団体交渉を行うことも提案 したが、会社がこの提案に応じた事実は認められない。
 また、組合らの要求事項は、X3支部長の教習指導員への復帰及び車通勤禁止の解除で統一されているのだから、会社として は、同人の処遇を決定した理由や根拠を説明した上で、組合らが本件配置転換及び車通勤の禁止が不当と考える理由を統一して示 すよう、団体交渉の中で求めることもできたはずである。
 さらに、会社は、組合らの出席人数について、支部組合執行部全員が出席しない限り団体交渉を開催しないという態度を一方的 に取っているが、支部執行部8名のうち1名でも欠席すれば実のある団体交渉にならないとは考えにくい。
 会社は、本件事故後の3度の団体交渉により議論が膠着状態となったためドライブレコーダーの映像の視聴を提案したこと、及 び予備折衝に積極的に応じていたことから団体交渉拒否には当たらないことを主張する。しかし、平成27年11月18日の団体 交渉後に、会社はX3支部長を総務部へ配置転換していること、会社は同人の車通勤を禁止していること、支部組合が 28.1.27診断書を会社に提出していることなどから、本件事故後の3度の団体交渉後に団体交渉の議題に係る状況は変化し ており、膠着状態であったとは認め難い。また、組合らが求めていたのは折衝ではなく団体交渉であり、一般的に、団体交渉の議 題等の調整を行う折衝は、労働条件等について交渉を行う団体交渉とは異なる性質のものである。
 よって、会社が、支部組合の29.1.26団交申入れ後も、①支部組合執行部全員のドライブレコーダーの映像の視聴及び② 執行部全員の団体交渉への参加を求め、団体交渉の開催に応じなかったことは、正当な理由なく団体交渉開催の条件に固執してい たと評価せざるを得ない。
ウ 不当労働行為該当性
 以上のとおり、支部組合が行った29.1.26団交申入れから、平成29年4月8日の団体交渉までの会社の一連の対応は、 正当な理由のない団体交渉拒否であり、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
 また、支部組合が平成28年1月26日に団体交渉を申し入れてから平成29年4月8日の団体交渉開催まで、会社が約1年2 か月という長期にわたり団体交渉に応じていなかった経緯を踏まえると、29.1.26団交申入れ後も会社が正当な理由なく団 体交渉に応じなかったことは、組合らの団体交渉権を軽視し、組合活動に重大な支障を与える支配介入行為であるといえ、労組法 第7条第3号の不当労働行為にも該当する。
4 会社が29年夏季賞与において、支部組合の組合員14名中12名をマイナス査定としたことは、組合員であることを理由と する不利益取扱い及び組合らの運営に対する支配介入に当たるか否か。(争点4)
 29年夏季賞与の人事考課率における査定について支部組合員と非組合員との間に外形的な格差の存在が認められ、29年夏季 賞与の査定当時における組合らと会社との関係は良好であったとはいえない。
 しかし、会社の評価制度はそれ相応の客観的な評価が担保された制度であり、また、本件における査定が不合理とまではいえな いから、会社が恣意的な査定により支部組合員を低位査定にしていたとはいえない。
 以上のとおり、会社が29年夏季賞与において、支部組合の組合員14名中12名をマイナス査定としたことは、組合員である ことを理由とする不利益取扱いに当たるとはいえないし、組合の組織又は運営に対する支配介入に当たるともいえず、労組法第7 条第1号及び第3号の不当労働行為には該当しない。
5 会社が平成30年9月29日以降、支部組合が事務所として利用しているスペースに会社備品を設置していることは、支部組 合の運営に対する支配介入及び組合らが不当労働行為救済申立てを行ったことに対する報復的不利益取扱いに当たるか否か。(争 点5)
ア 支配介入
(ア)本件荷物運び入れ前の組合利用スペースの状況
 組合利用スペースの利用について、支部組合と会社との間で明確な取決めはなく、支部組合が排他的に利用しているわけでもな いが、遅くとも昭和62年から支部組合の備品が置かれ、その後も支部組合が執行部の集会場所として利用していたといえる。そ うだとすると、支部組合は、組合利用スぺースを組合事務所に近似した様態で、長期間継続して利用していたといえる。
 また、会社は、支部組合が組合利用スペースを利用していることについて認識した上で、本件荷物運び入れ以前に同スペースの 利用中止を支部組合に求めるなど明示的に組合の利用を排斥した事実は認められないし、本件荷物を連び入れる際には、支部組合 に対しその旨を予告しており、支部組合の同スペース利用を認めていたといえる。
 これらのことから、支部組合が組合利用スペースを組合事務所に近い様態で利用することについては、支部組合と会社との間で 労使慣行になっていたと認められる。
(イ)組合活動に対する影響
 組合利用スペースは約10平方メ一トルの面積しかないところ、会社は、本件追加申立てまでに段ボール12箱と収納ボックス 2個を同スペースに運び入れており、この運び入れにより支部組合は元々置いていた備品の配置の変更を余儀なくされている。ま た、会社が非組合員も利用する休暇届等の入った収納ラックを組合利用スぺースに配置したことにより、同スペースに非組合員の 立入りが増えるなど、会社の本件荷物運び入れにより、支部組合の活動に支障が生じていることが認められる。加えて、こうした 会社の行為が既成事実化すれば、将来的に組合利用スペースでの組合活動そのものが困難となるおそれがあるといえる。
(ウ)本件荷物連び入れに係る会社の対応
 会社は、支部組合が組合利用スペースへの荷物の運び入れを拒否したにもかかわらず、荷物を運び入れ続け、支部組合の度重な る荷物の撤去要求に対しても、会社は昭和41年覚書を根拠として、組合利用スペースは組合事務所とは言えない旨を述べ、荷物 の運び入れを続けたことから、会社の一方的な姿勢がうかがえる。また、会社は、支部組合に特段協議等を持ち掛けることはな く、支部組合が求めた昭和41年覚書の提示にも応じないなど、支部組合の活動への配慮や、本件荷物運び入れの必要性について 支部組合へ丁寧に説明するといった姿勢も認められない。
(エ)本件荷物運び入れの合理性
 会社が、労使慣行となっており支部組合が利用していた組合利用スペースを会社備品の配置場所に選んだ理由は不明確であり、 会社の本件荷物運び入れには合理性を認めることはできず、会社の本件荷物運び入れは支部組合に対する支配介入行為であるとい わざるを得ない。
イ 報復的不利益取扱い
 申立人らは、不当労働行為救済申立ての審査係属中に、支部組合の本拠たる組合利用スペースの利用を妨げるという組合攻撃を 行ったことは、報復的不利益取扱いに該当すると主張する。しかし、労組法第7条第4号の報復的不利益取扱いは、労働者個人を 対象とした規定であると解されるところ、本件荷物運び入れについては、前記アで判断したとおり、支部組合に対する支配介入行 為と認められるものの、申立人らは本争点に関して組合員個人に対する会社の報復的不利益取扱いがあったという疎明はしていな いのであるから、報復的不利益取扱いの成立を認めることはできない。
ウ 不当労働行為該当性
 以上より、会社が平成30年9月29日以降、支部組合が事務所として利用しているスペースに会社備品を設置していること は、支部組合の運営に対する支配介入行為で、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するが、申立人らが不当労働行為救済申 立てを行ったことに対する報復的不利益取扱いがあったとはいえず、労組法第7条第4号の不当労働行為には該当しな い。 
掲載文献   

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