労働委員会命令データベース

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成29年(不)第49号・30年(不)第34号
不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合(「組合」)・X2(個人) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  令和2年8月31日 
命令区分  全部救済・一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、法人が、①組合員1名の懲戒手続等に係る団体交渉申入れに応じなかったこと、②組合執行委員長及び組合員1名を懲戒委員会の懲戒委員から解任したこと、③団体交渉において、組合員1名の自宅待機命令について誠実に回答しなかったこと、④組合員1名を解雇したこと、⑤団体交渉において組合員1名の解雇について誠実に回答しなかったこと、が不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、法人に対し、①及び⑤について労組法第7条第2号並びに②について同条第3号に該当する不当労働行為であるとして、文書の手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
法人         
理事長 B1  

 当法人が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1) 平成29年11月10日付け、同月13日付け、同月17日付け、同月20日付け及び同年12月20日付けの団体交渉申入れに対する対応(2号該当)。
(2) 平成29年11月20日、法人が、組合執行委員長及び組合員1名を懲戒委員会懲戒委員から解任したこと(3号該当)。
(3) 平成30年5月15日に開催された団体交渉における貴組合員X2氏の解雇に係る対応(2号該当)。
2 申立人らのその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(29.11.10団交申入れ、29.11.13団交申入れ、29.11.17団交申入れ、29.11.20団交申入れ及び29.12.20団交申入れに対する法人の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるか。)
(1) まず、それぞれの団交申入れとそれに対する対応について検討する。
ア 29.11.10団交申入れについて
 29.11.10団交申入れの要求事項は、懲戒委員会要項の内容及びB2校長による懲戒委員の選出方法についてであることが認められるところ、このような懲戒手続に関する事項が、組合員の労働条件その他の待遇に関する事項として義務的団交事項に当たることは明らかである。
 29.11.10団交申入れについて、B3総務局長がA1組合執行委員長に対し、校内で議論して欲しい旨、A1委員長は懲戒委員だから懲戒委員会で意見を言えばいい旨の発言を行ったことが認められるところ、法人は、当該発言は、提案を述べただけであり、団交に応じなかったわけではない旨主張する。しかし、法人が団交に応じる旨の返答を行ったり、団交に応じた事実が認められないのであるから、法人は当該団交申入れに対し応諾をしなかったものといわざるを得ない。
イ 29.11.13団交申入れ、29.11.17団交申入れ及び29.11.20団交申入れ
 ①組合は、29.11.13団交申入れで、「B2校長の懲戒手続き違反疑惑」を議題とする団交を申入れたこと、②その4日後に、29.11.17団交申入れで同じ事項について重ねて団交を申入れたこと、③さらにその3日後に29.11.20団交申入れで、同事項について直ちに団交に応じることを要求していたこと、が認められる。そして、これら団交申入れの要求事項が義務的団交事項に当たることは、上記ア判断と同様である。
 法人は、29.11.13団交申入れについては、日程調整に日数を要し、その間、次々と組合からさらなる要求書が届いた次第であった旨主張し、最終的に組合と日程調整を行い、29.12.6団交を行った旨主張する。
 しかし、法人が団交を行ったと主張する29.12,6団交においては、30分の交渉時間の中で、29.11.13団交申入れ、29.11.17団交申入れ及び29.11.20団交申入れにおいて組合が要求していた「B2校長の懲戒手続き違反疑惑」に関しての交渉が行われた事実は認められない。そして、その後も、29-49事件(不当労働行為救済申立てを行った平成29年(不)第49号事件)申立てまでに、当該議題について団交が行われた事実の疎明はない。
 以上の経緯からすれば、29.11.13団交申入れ、29.11.17団交申入れ及び29.11.20団交申入れに対して、法人が団交に応じたものとは認められない。
ウ 29.12.20団交申入れ
 29.12.20団交申入れには、「また、将来のこととして、懲戒手続き、とりわけ本校懲戒委員会要項の運用及び懲戒委員の選出方法を議題とする団体交渉を要求する。」と記載されていたことが認められ、29.12.20団交申入れの団交議題もそれまでの4回の団交申入れ同様に義務的団交事項であったといえる。なお、「将来のこととして」という記載はあるが、それまでの4回の団交申入れの経緯からして、これが団交申入れでなかったとみることはできない。
 法人は、29.12.20団交申入れに対しては、書面回答を優先させたが、その後、30.1.30団交を開催した旨主張する。しかしながら、30.1.30団交では29,12.20団交申入れにおいて要求された事項についての交渉が行われたとは認められず、法人の主張は採用できない。
エ 最終的に、懲戒手続一般に関する協議が行われたのは、30.3.16団交においてであると認められる。
(2) 以上のことからすれば、法人は、29-49事件の申立てがあった平成29年12月25日までの間、29.11.10団交申入れ、29,11.13団交申入れ、29.11.17団交申入れ、29.11.20団交申入れ及び29.12.20団交申入れで組合が要求していた懲戒委員会要項の運用及び懲戒委員の選出方法に関する団交に一貫して応じていないことが認められ、また、法人が団交に応じていないことの正当な理由も認められない以上、このような法人の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
2 争点2(平成29年11月20日、法人が、組合執行委員長及び組合員1名を懲戒委員会懲戒委員から解任したことは、組合に対する支配介入に当たるか。)
(1)まず、懲戒委員の解任は、校長の専決事項といえるかについてみる。
 高等部・中等部において、校長には、懲戒委員を解任する権限があったといえる。
 しかし、懲戒手続は労働者の地位や労働条件に重大な影響を与えるものであるから、懲戒委員の選任及び解任には公平性が求められる。特に解任については、校長の意に添わない等の理由で自由に解任することは許されないことと考えられる。従って、懲戒委員の解任は、校長の権限であるといえるとしても、一度選任された懲戒委員については、校長による解任が当然に許され、一切の法的評価を受けないことにはならない。つまり、懲戒委員の解任は、校長の自由裁量ではなく、一定の限界に服するといえる。
 そうだとすれば、懲戒委員の解任が組合活動の弱体化などにつながるものである場合には、支配介入の不当労働行為に当たるといえる。そこで以下、A1委員長及びA2組合員の解任が不当労働行為に当たるかを検討する。
(2) B2校長がA1委員長とA2組合員を懲戒委員から解任したのは、両名が第1回及び第2回の懲戒委員会において、懲戒委員会の存在そのものについて疑義を述べていること、また、29.11.9第1回懲戒委員会では、ほとんど議事が進行しなかったことが背景にあると考えられ、懲戒委員会の成立自体が違法という考えを持ちながら、委員としての職責を果たすことはできないとB2校長は考えて、解任した旨の法人の主張は、一定、理解できないものではない。
(3) しかしながら、法人は、一方で、組合に対して、懲戒委員の選任方法等に関する組合としての主張を、団交の場ではなく懲戒委員会の場で行うべきだと述べておきながら、他方で、組合が法人の態度に従って懲戒委員会の場でこれを主張したことを理由に、懲戒委員にしておけないとして、A1委員長及びA2組合員を解任するという矛盾した行動をとったといえ、法人は、これら一連の行為によって、懲戒委員の選任方法等に関して、組合が自らの見解を主張する機会を一方的に奪ったものと認められる。
(4) また、B2校長は、それ以前になんら警告や予告を行うことなく、29.11.20第3回懲戒委員会の直前にA1委員長を突然懲戒委員から解任し、また、同懲戒委員会開始直後に、委員の選任に関してA1委員長と同意見であると述べただけのA2組合員も解任したことが認められる。
 このことに加えて、29.11.13第2回懲戒委員会においても、懲戒委員の選定方法について議論があったが、調査部会の設置が決定されるなど、まがりなりにも、議事が進行していたことを考え合わせると、B2校長の、当該該措置は、拙速かつ強引なものであったと言わざるを得ない。
(5) 以上のことを総合的にみれば、平成29年11月20日、法人が、A1委員長及びA2組合員を懲戒委員から解任したことは、懲戒委員会の違法を主張する組合に対して、一旦組合員2名を懲戒委員に選任しておきながら、同人らが懲戒委員として議論に加わる機会を突然一方的に失わせる対応を取ったという点で、組合を軽視した対応であり、かつ、組合活動を弱体化させるものと言わざるを得ず、組合に対する支配介入といえ、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
3 争点3(30.1.30団交におけるX2組合員の自宅待機命令に係る法人の対応は、不誠実団交に当たるか。)
(1) ①30.1.30団交は平成29年12月21日に法人総務局人事課長から組合に送信された29.12.21法人メールの後、複数のメールのやり取りを経て同30年1月30日に団交を開催することが決定されて、開催されたこと、②組合による30.1.26要求書には、法人役職者の発信した電子メールの件などを30.1.30団交の議題として追加する旨が記載されていたこと、③30.1.30団交においては、約1時間半、30.1.26要求書に記載の電子メールの件や教員の労働時間管理などについて交渉を行い、B3総務局長が「時間がきましたので」と述べた後に、A1委員長の変形労働時間制に関しての質問に対するやり取りがあったこと、④そのやり取りが終わった後に、A1委員長が「あとね、10月27日の時に見えましたけれど、X2教諭の自宅待機、これ早急に解かれるべきだと考えていますんで、それはぜひお願いをしたいと。」述べたのに対し、B3総務局長や法人常務理事が、この問題は労働委員会でやっている旨述べたところ、A1委員長が「わかりました。」と述べ、団交が終了したこと、が認められる。
 これらの経緯からすれば、そもそも、X2組合員の自宅待機の解除という事項が30.1.30団交の団交議題として予定されていたものとはみられないのであり、A1委員長の発言は、30.1.30団交で交渉終了後に、X2組合員の自宅待機の早期の解除を「お願い」したものであったということができ、これをもって、組合の主張するように協議を申し入れたものとみることはできない。そのため、組合が不誠実団交に当たると主張するやり取りは、30.1.30団交の団交議題に係る交渉には当たらず、そもそも、不誠実団交を主張する対象には当たらない。
(2) 以上のとおりであるので、30.1,30団交におけるX2組合員の自宅待機命令に係る法人の対応は、不誠実団交に当たらず、よって、この点に関する組合らの申立てを棄却する。
4 争点4(法人が、平成30年4月26日付けでX2組合員を解雇したことは、同組合員が労働組合の正当な行為をしたが故に行われた不利益取扱いに当たるとともに、29-49事件の不当労働行為救済申立てを行ったことを理由として行われた報復的不利益取扱いに当たるか。また、このことは、法人による組合に対する支配介入に当たるか。)
(1)法人が本件解雇を行った理由が、X2組合員が労働組合の正当な行為をしたこと等の「故をもって」であったといえるか否かについて判断する。
(2)まず、本件解雇に至る経緯と組合活動との時間的近接性についてみる。
ア B2校長は、生徒や保護者からの苦情が多数届いていたこと、海外研修旅行の前後の29.10.12話し合いや29.10.20話し合いでX2組合員の指導について話し合われたことを受けて、本件自宅待機命令を行ったとみて不自然な点はなく、29.10.27団交を3日後に控え、当該団交にX2組合員を出席させないことを目的としたものとみることはできない。
 また、本件自宅待機命令は、教師としての業務を停止するものであって、X2組合員の組合員としての活動を禁止するものではないから、X2組合員が団交に出席できなくなるものではない。
 このため、本件自宅待機命令は、X2組合員を29,10.27団交に参加させないために行われたものである旨の組合の主張は採用できない。
イ また、本件解雇とX2組合員の組合活動の時期的な関係についてもみる。
 ①平成29年12月25日、組合らが29-49事件の申立てを行ったこと、②同30年3月13日付けで、X2組合員ほか1名が所轄の労基署に30.3.13申告書を提出したこと、③同月23日、所轄の労基署が法人に対して是正勧告を行い、同年4月3日及び4日にこのことが新聞報道されたこと、④同年4月26日に法人は本件解雇を行ったこと、が認められ、これらのことからすれば、確かに、29-49事件の申立てや労基署への30.3.13申告書の提出等の事実と、本件解雇は時期的に近接しているといえる。
 しかし、上記ア判断のとおり、そもそも生徒や保護者からの多数の苦情等が本件解雇に至る端緒となっており、法人がかかる苦情等の発出を差配したと認めるに足る証拠は存在しない。その後の手続についても、法人は、本件自宅待機命令以降、懲戒委員会を立ち上げ、調査部会によって調査を行い、懲戒委員会が懲戒処分について議決に達しなかった旨を理事会に報告し、これを受けた理事会が理事会小委員会を開催した後に、その報告を受けてX2組合員の解雇を承認している。これら一連の流れは、意図的に滞留することも、意図的に性急に行われることもなく粛々と進行していたと認められる。
 このため、本件解雇に至る法人の手続が、上記労基署への申告などX2組合員の組合活動の影響を受けて行われたものとみることはできず、上記の時期的な近接性をもって、法人の不当労働行為意思を推認する根拠とすることはできない。
(3)次に、本件解雇という処分が非組合員に対する処分と均衡がとれていない旨の組合らの主張についてみる。
 そもそも、本件解雇は、懲戒処分として行われたものではなく、「その職に必要な適格性を欠くと認められる」等の理由によりなされた普通解雇であるので、個別の懲戒事案と比べること自体が適切ではない。組合の主張する事案の中には、本件解雇と同様に、複数の保護者や生徒からの指導に対する苦情が相次いだという事例は認められない。
 以上のとおりであるので、本件解雇が非組合員に対する処分と比べて均衡を欠くという組合の主張も採用できない。
(4)さらに、本件解雇の合理性についてみる。
ア まず、事実認定についてみる。
 法人の行った事実認定は、一定丁寧な手続を経て、公平に行われていたものということができ、法人が不合理な事実認定を行っていたとまではいえない。
イ 次に、本件解雇に至る判断の経緯についてみる。
 法人は、調査部会で一定調査を行った上で、懲戒委員会、理事会小委員会、理事会のそれぞれにおいて、複数名で審議し、結論を出しているといえる。結論として、X2組合員が「その職に必要な適格性を欠く」等とした判断自体を明確に不合理なものであったといえるような事情は認められない。
(5) 以上のとおり、本件自宅待機命令がX2組合員を29.10.27団交に参加させないために行われたものであるとは認められず、また、本件解雇が非組合員と比べて不均衡な扱いであるとも認められず、さらに、本件解雇の判断自体が不合理であったとも認められないのであるから、当該時期において、組合と法人が時間外労働の扱いを巡って対立していたこと、X2組合員が労基署に申告を行ったこと、組合の主張する法人の組合嫌悪的態度などを考慮しても、本件解雇が、X2組合員が労働組合の正当な行為をしたことの「故をもって」なされた不利益取扱いであるとも、29-49事件の不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とする報復的不利益取扱いであるともいえず、また、組合に対する支配介入であるともいえない。
 このため、この点に関する組合らの申立ては棄却する。
5 争点5(30.5.15団交におけるX2組合員の解雇に係る法人の対応は、不誠実団交に当たるか。)
(1) 法人は、30.5.15団交において、司法の場で争うことになったことは団交で協議せず、また、本件解雇は理事会の決定によるものであるので、団交で覆されることは考え難いという前提のもと、組合に対し、本件解雇に至った経緯について、30.5.2解雇理由証明書の記載内容以上のことは極力述べないようにしていたとみることができる。
 しかし、組合員の解雇の当否が義務的団交事項である以上、使用者は、団交の実を上げるために、解雇の当否の裏付けとなる事実や資料を組合側に開示し、具体的な解雇理由の存否に関して、組合と実質的な交渉を行う義務がある。従って、使用者は交渉を行う前提として、解雇の根拠となった具体的事実や証拠を組合に提示する義務を負い、これを履行せずに団交を行った場合には、不誠実団交の責を免れない。
 本件解雇の撤回を議題とする30.5.15団交においては、実のある交渉を行うためには、本件解雇の理由が組合らに具体的に示されることが必要であったといえるが、理事長ら団交出席者は、理事会においてX2組合員の解雇を承認するに際し、理事会小委員会から30.4.26理事会小委員会検討結果報告書の提出を受けていたことが認められるのであるから、本件解雇の具体的理由を把握していたといえ、それにもかかわらず、その内容を30.5.15団交において組合に開示しなかったといえる。また、開示しなかった理由について、法人は、X2組合員には聞き取り調査において具体的な事実関係について詳細な説明をしていたことを主張するが、このことをもって、団交において説明をしない正当な理由とはなり得ないことはいうまでもない。
 そうすると、30.5.15団交における法人の対応は、自らの主張の根拠を具体的に示し、組合やX2組合員が、理解し、納得することを日指して、誠意をもって団交に当たったものということはできず、誠実団交義務を尽くしたということができない。
(2) 以上のとおりであるから、30.5,15団交における法人の対応は、不誠実団交に当たり、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

[先頭に戻る]