労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  兵庫県労委平成30年(不)第11号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年5月14日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が兵庫県労委平成26年(不)第9号事件(「前事件」)に係る命令(「前命令」)の確定後も前命令主文第1項の履行を怠り、時間外労働に関してA2とCを差別して取り扱ったことが、A2に対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に該当するとして、救済申立てがなされた事案である。
 兵庫県労働委員会は、会社に対し、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、不利益取扱いの撤回とともに、文書の交付を命じた。 
命令主文  1 被申立人会社は、時間外労働について、申立人組合組合員A2と被申立人会社の他の従業員であるCを差別して取り扱ってはならない。
2 被申立人会社は、平成28年10月支給分から本命令書交付の日までの間の時間外労働について、タイムカードの打刻時刻から算定した、CとA2の時間外労働時間数を合算して得た時間数の2分の1からA2の時聞外労働時間数を差し引いて得た時間数に見合う時間外割増賃金(ただし、上記期間中に当月分の時間外割増賃金の額が固定残業代を超えない月がある場合は、その差額を合算したものを除く。)をA2に対して支払わなければならない。
3 被申立人会社は、本命令書写し交付の日から7日以内に、下記文言を記載した文書を申立人組合に交付しなければならない。
令和 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
会社          
代表取締役 B
 当社が貴組合の組合員A2に対し、時間外労働について他の従業員と差別して取り扱ったことは、兵庫県労働委員会において労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当すると認定されました。
 今後、 このような行為を繰り返さないことを誓約します。 
判断の要旨  1 平成28年10月以降(下記2において除斥期間に抵触する場合は、除斥期間を経過していない部分)の時間外労働の命令について、会社がA2に対し、Cと差別して取り扱ったといえるか。いえるとすれば、そのことは、A2に対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に該当するか。(争点1)
 前命令が確定した平成28年10月支給分以降令和元年6月支給分までのCとA2の月平均時間外労働時間数を比較すると、Cの時間外労働時間数は、多い月でA2の17.7倍、少ない月でもA2の1.6倍、全期間の平均でA2の3.7倍となっていることから、会社が、毎月の時間外労働について、常態的にA2とCとを差別的に取り扱っていたことは明らかである。
2 本件救済申立日から1年以上前における会社の時間外労働の命令に係る申立ては、労働組合法第27条第2項に規定する除斥期間に抵触するか。(争点2)
ア 本件では、組合と会社との間で、A2とCの時間外労働時間数が等しくなるように業務指示を行うこととした本件団交合意(26.11.29)の効力がそのまま維持されていることを前提に、時間外労働について公平に取り扱わなければならないとした公平取扱命令(前命令)が確定し(28.10.7)、時間外労働について本件団交合意等を踏まえて公平に取り扱わなければならないとした和解条項を含む訴訟上の和解が成立し(28.9.26)、さらに、公平取扱命令(前命令)の不履行に係る過料の決定が最高裁判所における特別抗告の棄却(30.5.9)をもって確定したにもかかわらず、前記1のとおり、会社が時間外労働に係る差別的な取扱いを継続してきたという特殊な事情が存する。
 かかる特殊な事情に鑑みれば、この間の会社の一連の対応は、組合活動を甚だしく嫌悪したものであり、また、不当労働行為制度そのものを著しく軽んずるものであって、毎月の時間外労働に係る差別は、こうした会社の姿勢を体現したものとして相互に関連し、その目的、態様及び効果の同一性があり、時間的接着性も認められる。
 加えて、会社は、本件争点に係る組合の主張に対し、何ら具体的反論をしていない。
 よって、本件では、平成28年10月支給分以降本命令書交付の日までの間になされた時間外労働に係る差別の全体をもって、一個の行為と評価するのが相当である。
イ 以上より、本件では、会社のなした毎月の時間外労働に係る差別を内容とする不当労働行為は、その全体をもって「継続する行為」と評価すべきであるから、労組法第27条第2項の除斥期間は適用されない。
3 結論
 上記のとおり、会社の時間外労働についてのA2とCとの差別的取扱いは、前事件当時から行われており、本件申立て後も続けられていると認められるので、このことは、A2が組合員であるが故をもって行われた不利益取扱いであり、労組法第7条第1号に該当する。
 同時に、前命令の確定後も新たな差別的取扱いを続ける会社の態度は、救済命令を受けた組合の努力を無にする行為であって、組合の組合員に動揺を与え、組合の運営を阻害し、組織を弱体化させようとするもので、同条第3号の不当労働行為にも該当する。 
掲載文献   

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