労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成30年(不)第84号
OTGJAPAN不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年4月7日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   会社の従業員A2は、会社から解雇する旨の通知がなされたことから、平成30年10月13日、組合に加入した。同日、組合は、会社に対し、A2の組合加入通知書及び団体交渉申入書を郵送した。
 団体交渉の日時についての回答期限の前日である10月18日、会社のオフイス内で、代表取締役B1、執行役員B2及び執行役員B3とA2とが面談し、B1社長らがA2に対し「基本的にその組合と交渉して、あの何かを決めるっていうことは我々考えていませんから。」などと発言した。
 本件は、30年10月18日、会社オフイス内において、会社のB1社長らがA2に対して行った上記の言動が支配介入に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労働委員会は、会社に対し、支配介入に当たる不当労働行為であるとして、文書の交付を命じた。 
命令主文  1 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。
 年 月 日
 組合
 執行委員長 A1 殿
会社          
代表取締役 B1
 当社が平成30年10月18日、貴組合の組合員に対し個別交渉をして貴組合を交渉から排除しようとしたことは、東京都労働委員会において不当労働行為と認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
2 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
 
判断の要旨  (争点)B1社長らの言動が会社による支配介入に当たるか
 10月13日付けで、組合が、会社に対し、A2に対する解雇等を議題とする団体交渉を申し入れたところ、同月18日、A2の勤務時間内に、会社のオフイス内で、会社のB1社長らは、A2との間で、本件面談を実施した。本件面談は、組合の団体交渉申入れ後、その開催前に行われたものであり、その面談の内容も、以下のとおり組合が申し入れたA2に対する解展等を議題とする団体交渉と同様の事柄に関するものであったことからすると、組合を通さず、組合員に対して個別交渉を求めたものであって、組合を交渉から排除することを企図したものといえる。
 また、本件面談の際の会社側の発言内容を具体的にみると、B2執行役員は、A2に対し、「交渉が決裂すると思うから、・・・そうなった場合には今度労働審判かそれになって、今度、それも決裂した場合は、最終的には裁判になるからね。」と、また、「裁判に至るなっていうふうに今思っているから。ここ(組合)と会うってことはそういうことだから。」、「そうなると、あの解雇通知に書いた、退職金云々ももう反故だよね。」と発言した。これらの発言は、団体交渉を行うことによって、A2が経済的な不利益等を受けることを示唆するものである。
 さらに、本件面談において、B1社長は、「彼らの落としどころっていうんですか。それは何か打合せはされているんですか。」と、B3執行役員は、「基本的にその組合と交渉して、あの何かを決めるっていうことは我々考えていませんから。」と、B2執行役員は、「A2ちゃんと話をしていくけども、組合とは話をするつもりはないから、俺たちは。ただ会わないといけないって脅されちゃったから、会うだけで、あの、話合いするつもりないから、端から。」と発言した。これらの発言は、全体としてみると、会社が、団体交渉等による組合との話合いによって解決するつもりはないことを明言するものである。
 したがって、10月18日の本件面談におけるB1社長らのA2に対する言動は、A2に組合を通じた解決を断念させることによって組合との団体交渉を回避するとともに、A2と個別交渉を行い、A2の解雇に係る組合の関与を排除しようとするものであるといわざるを得ず、会社による組合の組織及び運営に対する支配介入に当たる。 
掲載文献   

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