事件番号・通称事件名 |
大阪府労委平成30年(不)第13号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和2年4月20日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、①組合員2名に対し、定時で帰宅すること等を指
示したこと、②団体交渉で合意した協定書の締結を拒否したこと、③団体交渉で合意した期日までに資料を提示しなかったこと、
④団体交渉において協議中であった組合員1名の未払賃金を組合員のロ座に振り込んだこと、⑤組合員1名に対し、雇用契約終了
通知書を交付したこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
大阪府労働委員会は、会社に対し、①について労組法第7条1号及び第3号、②及び③について労組法第7条2号、にそれぞれ
該当する不当労働行為であるとして、不利益取扱いの撤回とともに、文書の手交を命じ、その他の申立てを棄却し
た。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人組合員A2に係る時間外勤務について、平成30年1月6日から同年10月15日まで
の間、申立人組合員以外の従業員との均衡を失しないように指示したものとして取り扱わなければならない。
2 被申立人は、申立人組合員A3に係る時間外勤務について、平成30年2月27日以降、申立人組合員以外
の従業員との均衡を失しないように指示したものとして取り扱わなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
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記 |
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年 月 日
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組合
執行委員長 A1 様
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会社
代表取締役 B1
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当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると
認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
記
(1)平成30年1月6日、貴組合員A2氏に対し、毎週土曜日及び日曜日は休日として休むこと並びに平日は
定時で帰宅することを指示し、同年2月27日、貴組合員A3氏に対し、平日は定時で帰宅することを指示した
こと(1号及び3号該当)。
(2)貴組合との間で、平成29年11月20日及び同年12月18日の団体交渉において合意した協定書の締
結を、同30年2月5日の団体交渉において拒否したこと(2号該当)。
(3)平成30年2月5日の団体交渉において同月末日までに提示することを合意した、貴組合員A3氏及び同
A4氏の未払賃金について再計算をした資料を、同日までに貴組合に対し提示しなかったこと(2号該当)。
4 申立人のその他の申立てを棄却する。 |
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判断の要旨 |
1
定時に帰宅すること等を指示した①30.1.6会社指示及び②30.2.27会社指示は、それぞれ組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入
に当たるか。(争点1)
会社における従業員の出退勤の時間管理が適正に行われていたかについて判然としない中で、会社は、組合加入公然化後、組合
活動が活発化していた時期に突然、組合が未払賃金の支給を要求しているA2分会長及びA3組合員に対し、根拠の説明もしない
まま、合理的な理由なく30.1.6会社指示及び30.2.27会社指示を行っているといえ、このことは、組合活動を嫌悪し
た会社による組合員であるが故の不利益取扱いであるとともに、組合の活動を萎縮させ、組合を弱体化させるものであるから、組
合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。
2
会社と組合は、29.11.20団交及び29.12.18団交で、協定書の締結に合意したといえるか。いえるとすれば、30.2.5団交で、会社が、協定書の締結を拒否し
たことは、不誠実団交に当たるか。(争点2)
29.11.20団交及び29.12.18団交において、会社は、協定書の締結に合意していたにもかかわらず、
30,2.5団交で協定書の締結を合理的理由なく拒否したのであって、かかる会社の対応は、不誠実団交に当たるといえ、労働
組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
3
会社が、30.2.5団交において平成30年2月末日までに提示することを合意した、A3組合員及びA4組合員の未払賃金について再計算をした資料を、同日までに組合に対
し提示しなかったことは、不誠実団交に当たるか。(争点3)
会社は、30,3.5団交において、A3組合員及びA4組合員の未払賃金に係る資料について失念していたことを謝罪したと
はいえ、30.4.26団交における会社の対応をみても、30.2.5団交におけるA3組合員及びA4組合員の未払賃金に係
る資料提示の組合との合意を軽視し、未払賃金は存在しないとの自らの認識のみに基づいて、十分な検討も行わず、組合の求める
資料を提示しなかったものであるといえ、一連の団交における会社の対応は、不誠実であったといえる。
したがって、会社が、30.2.5.団交において平成30年2月末日までに提示することを合意した、A3組合員及びA4組
合員の未払賃金について再計算をした資料を、同日までに組合に対し提示しなかったことは、不誠実団交に当たるといえ、労働組
合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
4
平成30年3月1日、会社が、A2分会長の口座に、団交において協議中であった未払賃金を振り込んだことは、不誠実団交に当たるとともに、組合に対する支配介入に当たる
か。(争点4)
会社が、30.2.5団交で約していたにもかかわらず、約束の期限内に組合に資料を送付していなかった対応は、不適切で
あったといわざるを得ないものの、30.3.1振込みそのものは、会社が自認している部分について、違法状態を解消するため
に支払ったものであるといえ、その後も会社は、A2分会長の未払賃金について引き続き協議に応じていることから、不当労働行
為であったとまではいえず、この点に係る申立ては棄却する。
5
平成30年2月28日、会社が、A5組合員に対し、30.2.27雇用契約終了通知書を交付したことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか。(争点5)
ア A5組合員は、期間の定めのある準社員であり、会社は、A5組合員に対し、平成30年2月28日に30.2.28雇止め
通知を行っているところ、組合が、会社に対し、A5組合員に係る30.3.1組合加入通知書を提出したのは、それより後の同
年3月1日であり、加えて、会社は、C労組の毎月の組合費徴収名簿を通じて、A5組合員が、同29年11月以降、C労組を脱
退するまでは、C労組に加入していたと認識していたと推認されることを併せ考えると、30.2.27雇用契約終了通知書作成
の時点で、会社が、A5組合員が組合の組合員でもあると認識していたとみることまではできない。
イ 以上のことからすると、平成30年2月28日、会社が、A5組合員に対し、30.2,27雇用契約終了通知書を交付した
ことは、組合員であるが故の不利益取扱いであるとはいえず、その余を判断するまでもなく、この点に係る組合の申立ては棄却す
る。 |
掲載文献 |
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