労働委員会命令データベース

(この命令は、労組法に基づく和解の認定により失効しています。)

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成30年(不)第4号 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  令和2年2月18日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   A2は、法人との雇用契約に基づき、常勤の事務員として、法人の 事務所において勤務していたが、平成28年5月30日付けで法人を退職したこととされ、6月1日以降は、C1会社の従業員と して取り扱われ、引き続き法人の事務所において勤務した。
 A2は、29年7月から、体調不良を理由として、出勤しなくなった。8月、A2は、職場でパワーハラスメントを受けたなど として、組合に相談し、後日、組合に加入した。
 組合は、10月11日付文書により、法人に対し、A2の有給休暇期間中の賃金の支払や同人の復職等を議題として団体交渉を 申し入れたが、法人は、何ら回答しなかった。
 10月20日、組合は、法人に電話で団体交渉を申し入れたが、法人の代表者であるBは、「(健康)保険証を確認してくださ い。」などと述べて通話を終了した。
 組合は、11月6日付文書により、法人に対し、改めて団体交渉を申し入れたが、法人は、何ら回答しなかった。
 本件は、組合が11月6日付けで申し入れた団体交渉に法人が応じなかったことが正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否 かが争われた事案である。
 東京都労働委員会は、法人に対し、正当な理由のない団交拒否に当たるとして、誠実な団交応諾とともに、文書の交付を命じ た。  
命令主文 
1 被申立人法人は、申立人組合が平成29年11月6日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 被申立人法人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。

年 月 日
組合
執行委員長 A1殿

法人
社員 B
 当法人が、貴組合から平成29年11月6日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、東京都労 働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 被申立人法人は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨  (争点)組合が平成29年11月6日付けで申し入れた団体交渉に法 人が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かについて
ア 法人がA2の使用者に当たらないとの法人の主張について
 法人は、組合が29年11月6日付けで申し入れた団体交渉に応じていない。このことについて、法人は、A2の使用者はC1 会社であり、法人は使用者に当たらないから、団体交渉に応じなかったことには正当な理由があると主張する。
 確かに、28年6月1日以降、A2の給与はC1会社が支払い、健康保険及び厚生年金保険関係手続並びに中小企業退職金共済 制度関係手続においても、同人は同社に雇用される者として取り扱われている。
 しかし、C1会社は、Bが自らの弁護士業務及び税理士業務に関連する事務作業等を一括して外部委託する形式とするために設 立した会社である。また、A2は、C1会社の従業員として取り扱われるようになった以降も、引き続き法人の事務所において、 Bの業務指示により、税理士業務に関連する補助業務のみならず法人の弁護士の業務に関連する補助業務にも従事していた。な お、12月29日以降、C1会社の代表取締役はC2に代わったが、C2は、Bの母であり、法人においては事務員として勤務し ていたものであるし、また、C1会社の業務はBの弁護士業務及び税理士業務に関連する業務であるから、実質的には、法人の代 表者及びC1会社の取締役を兼ねるBが引き続きC1会社を運営していることが明らかである。
 以上からすると、法人とC1会社とは、形式的には別法人であっても、事実上一体として、A2を使用して法人の業務及びBの 税理士業務等を行い、法人の代表者及びC1会社の取締役を兼ねるBが、A2の労働条件を支配し決定していたとみるのが相当で ある。
 したがって、法人は、A2の労働条件に係る団体交渉に応ずべき立場にあったというべきであり、同人の使用者はC1会社であ るから法人には団体交渉応諾義務がないなどという法人の主張は、到底採用することができないから、法人が使用者でないことを 理由として団体交渉に応じなかったことに正当な理由は認められない。
イ その他の法人の主張にっいて
 法人は、本件手続において、組合が、A2の転籍は無効であると主張しつつ、A2がC1会社の従業員であることを前提とする 要求を行っていて、その主張が一貫せず、また、A2の利益にも合致していないことも、団体交渉に応じない正当な理由であると 主張する。
 また、法人は、本件手続において、組合の執行委員であるA3が、弁護士事務所の事務職員でありながら、事件の内容に立ち入 る交渉を行おうとしており、弁護士法で禁止される非弁提携又は非弁行為である可能性が高く、法人がこの交渉に応ずること自体 が弁護士法及び弁護士職務基本規程上の問題になると解釈せざるを得なかったから、団体交渉を拒絶したとも主張する。
 しかし、A2及び組合が、A2と法人との雇用関係の存在を主張しつつも、A2が当面の生活を維持するために、C1会社を事 業主として傷病手当金の支給申請を行うこと自体は理解できるし、また、A3は、本件については、法律事務所の事務職員として ではなく、労働組合の交渉担当者としてA2の労働条件に関わる団体交渉を求めているのであるから、法人の主張は、いずれも採 用することができない。
ウ 以上のとおり、法人は、A2の労働条件に係る団体交渉に応ずべき立場にあったにもかかわらず、組合が29年11月6日付 けで申し入れた団体交渉に応じておらず、法人が主張する団体交渉拒否の理由は、いずれも正当な理由とは認められないのである から、法人の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。  
掲載文献   

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