労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成30年(不)第33号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年5月11日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合員2名に対し合意や協議もなく一方的に辞令を発令して不当な配置転換を行ったこと、会社事務所のカメラを増設・移設し組合員らの行動を監視したこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、会社に対し、いずれも労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、文書の交付を命じた。 
命令主文 
被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。

 年 月 日
組合
 執行委員長 A1 様

会社
 代表取締役 B
 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第 7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為をいたしません。
(1)当社が、貴組合員A2氏に対し、平成30年5月31日付けで本社営業課長の任を解き、同年6月1日付けで運転職を命じたこと(1号及び3号該当)。
(2)当社が、貴組合員A3氏に対し、平成30年4月1日付けで経理担当事務を解き、同日付けで一般事務担当を命じたこと(1号及び3号該当)。
(3)当社が、平成30年6月9日、会社事務所内においてカメラ1台を増設し、カメラ1台を移設したこと、並びに、会社事務所外においてカメラ4台を増設したこと(3号該当)。
(4)当社が、平成30年6月9日、会社事務所内においてカメラ1台を増設し、カメラ1台を移設したこと(1号該当)。 
判断の要旨  1 争点1(会社が、A2組合員に対し、平成30年5月31日付けで本社営業課長の任を解き、同年6月1日付けで運転職を命じたことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに組合に対する支配介入に当たるか。)
 A2組合員に対する配転命令には、合理的な理由があったとはいえず、配転当時、会社と組合との間の労使関係が対立関係にあったことからすると、A2組合員に対する配転命令は、会社の組合嫌悪意思によるものとみざるを得ない。したがって、A2組合員に対する配転命令は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるといわざるを得ず、また、これにより、組合員の組合活動を萎縮させ、組合の弱体化を図ったものといわざるを得ない。
 以上のとおりであるから、会社が、A2組合員に対し、平成30年5月31日付けで本社営業課長の任を解き、同年6月1日付けで運転職を命じたことは、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。
2 争点2(会社が、A3組合員に対し、平成30年4月1日付けで経理担当事務を解き、同日付けで一般事務担当を命じたことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに組合に対する支配介入に当たるか。)
 A3組合員に対する配転命令には、合理的な理由があったとはいえず、配転当時、会社と組合との間の労使関係が対立関係にあったことからすると、A3組合員に対する配転命令は、会社の組合嫌悪意思によるものとみざるを得ない。
 以上のとおりであるから、会社が、A3組合員に対し、平成30年4月1日付けで経理担当事務を解き、同日付けで一般事務担当を命じたことは、組合員であるが故の不利益取扱いであり、また、これにより、組合員の組合活動を萎縮させ、組合の弱体化を図ったものであって、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。
3 争点3-1(会社が、平成30年6月9日、会社事務所内においてカメラ1台を増設し、カメラ1台を移設したこと、並びに、会社事務所外においてカメラ4台を増設したことは、組合に対する支配介入に当たるか。)
ア カメラの移設・増設が、防犯目的であったかについて疑問があるところ、労使が対立していた中で、会社は、組合員が可能な限りカメラに映らないよう配慮をすることなく、組合や組合員に対し、事前に何ら説明をせずに、会社事務所内のカメラを1台移設し、会社事務所内外合わせて計5台ものカメラを一度に増設したのであるから、かかるカメラの移設・増設は、組合や組合員に、組合員を監視するものとの懸念を抱かせるようなものであったといえ、よって、組合活動を萎縮させるものといえる。
イ ところで、会社は、会社が設置したカメラには、組合員のみならず非組合員等も映る旨主張するが、机全体が撮影範囲に入っている常務は平成30年6月には2階で勤務するようになっている。また、社員C1は夜勤であり、執行役員は月に一回か二回程度の出社である上、その机は、いずれもその一部が撮影範囲となっているにとどまっている。加えて、社員C2の机に至っては、全く撮影範囲から外れたままであることからすると、組合員を監視するものではないかとの組合や組合員の懸念を払拭できるものではなく、上記判断を左右するものではない。
ウ 以上のとおりであるから、会社が、平成30年6月9日、会社事務所内においてカメラを1台増設し、カメラを1台移設したこと、並びに、会社事務所外においてカメラを4台増設したことは、組合活動を萎縮させ、ひいては組合を弱体化させるものであるから、組合に対する支配介入であり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
4 争点3-2(会社が、平成30年6月9日、会社事務所内においてカメラ1台を増設し、カメラ1台を移設したことは、A3組合員及びA4組合員に対する不利益取扱いに当たるか。)
ア カメラの移設・増設が防犯目的であるかにっいて疑間が残るところ、組合と会社が対立関係にある中で、会社は、A3組合員とA4組合員の座席をわざわざ隣り合わせにした上で、他の従業員に比して、長時間かつ広範囲にわたって撮影できる位置にカメラを設置したのであるから、かかる会社の対応は、A3組合員及びA4組合員のみをことさら監視するものとみざるを得ず、両組合員が組合員であるが故に行われたものとみざるを得ない。
イ 以上のとおりであるから、平成30年6月9日に、会社が会社事務所内においてカメラを1台増設し、カメラを1台移設したことは、A3組合員及びA4組合員が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるといわざるを得ず、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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